あなたが俺の番ですか?

ミルクルミ

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理由⑧

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「一応、礼を言っとく。琥陽の嫉妬を引き出してくれて、ありがとう」
「こちらこそ、楽しい見世物とツンデレ姿をありがとな」

 ふっと笑う頼一の頭をがしりと掴みそうになって、けれどここが多くの視線のある場所だと思いなおし、拳を握りしめるだけにとどめる。
 呼ばれたので注文を取り、ペンを走らせている時クスリと漏れる息に顔を上げれば、「すみません」と客に謝られた。

「さっきの、後から来た子が本命ですよね? 隠してるようですけど、結構顔に出てますよ」

 そう指摘されるほど、琥陽の嫉妬姿は堪えたみたいだ。
 見なかったことにしてください、と指を鼻に当てると、颯珠は気を引き締めるため短く息を吐いた。






 学園祭一日目は午前、二日目は午後の担当だ。ペア同士は同じ時間に組まれているため、当然琥陽と颯珠は二日間とも同じシフトで入る事になっていた。
 頼一が教室を出るまで気が抜けなかったが、さっきので満足したのかわりかしあっさりと教室を出て行き、その後は騒動もなく注文を取っては届けてを繰り返し。

「琥陽。手、繋ごっか」
「な、なんで!?」
「何でって……その方が外れにくいでしょ?」
「あ、あぁ……そう、だね」

 リボンをただ巻いただけではすぐに取れてしまう。なので振動を少なくするためそう提案しただけなのに、取り乱す琥陽が面白くて颯珠は頬へと手を伸ばした。

「何を想像したの?」
「……何も! ほら、繋ぐんでしょ!?」

 制服に戻り、犬耳も付けずいつもの姿に戻った琥陽が手を差し出す。
 こっち、と手招き外の非常階段へ出ると、壁に背を付け琥陽の手にしっかりと指を絡めた。

「緊張してる?」
「……颯ちゃんもでしょ?」
「そうだね。それ以上の事もしたのに、おかしいね」

 ワイシャツの上から琥陽の心臓に手を当て、早い鼓動を直接感じる。

「あの日、ごめんね。琥陽の気持ちも考えず、めちゃくちゃにして」
「……変な言い方しないで。それに……嫌じゃ、なかったし」
「何? やっとオレの事、好きになってくれたの?」

 服の上をなぞり、首筋に手を当てる。
 一瞬退こうとした足をすんでの所で止めた琥陽は、覚悟を決めたようにごくりと喉を鳴らし、颯珠の手を掴むとその手にすり寄った。

「うん。俺、颯ちゃんの事が好きだよ」
「……っ」

 まさか頷かれると思わなかった颯珠は、目を見開き琥陽を見つめたまま固まる。
 けれども琥陽の瞳の中に悲しそうな色を見つけ、『なんだ』と瞳を揺らした。
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