あなたが俺の番ですか?

ミルクルミ

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変化②

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「そもそも、ヒートは本能により起こり、そこから放出されるフェロモンも本能です。オメガとアルファのフェロモンの相性によっても影響される度合いが異なり、相性が良ければ良い程出会いがしらのヒートに惑わされ、番になる事もあります。ですがその場合、多くはその後互いを知る事で心を通じ合わせ、きちんとした番になっています」

 何度もされた説明をまた聞かされ、琥陽はコクリと頷いた。
 フェロモンという本能に惑わされ番になるほど相性の良い相手は、ひと目会った瞬間フェロモンが反応し、理性が働き始めると恋心が芽生える。
 普通そこに抵抗なんてなくて、そのままゴールインする事が多い。
 なので、目が覚めた時番った相手がいなくなっていて、記憶すら曖昧で、証拠も何も残っていない琥陽は特殊だった。

「あまり事例がないのではっきりとは言えませんが……心が通っていない場合は、いわば仮契約状態です。普通の番契約とは違うので、通常より弱い契約となります。その仮契約の上に本当の番契約をすれば……」
「――番が、入れ替わる?」

 呆然と、先生の言葉に続ける。
 自分に対して嘘はつけない。
 あの時、すでに琥陽は颯珠の事が好きになっていて、颯珠も言葉と態度でいつも気持ちを伝えてくれていた。
 そんな二人が、身体を繋げたあの日。
 心を通じ合わせた二人が、番うようにまぐわったならば。
 好き同士、アルファとオメガで、その行為をしたならば。
 先生の言うように――番相手が入れ替わる事も、あるのかもしれない。

「あくまで可能性の話です。確定ではないので、信じ込まないでください」
「それって……番かどうかを確かめる方法って、あるんですか?」
「そうですね。貴方のフェロモンは今、番相手にしか効かなくなっています。なのでフェロモンが相手に効くかどうかを確かめる事、これが確実でしょう」

 顎に手をやり頷く先生に、なるほどと視線を下にし考え込む。
 もしそれが本当なら、琥陽は颯珠への気持ちを認められて、最初から互いが本当の相手だったように接することができるかもしれない。
 颯珠への気持ちを、堂々と口にできるかもしれない。

 ――なんて。

 そんな浮かれた妄想を、琥陽は否定の言葉でねじ消した。

(都合の良い、話だよね)

 先生の話を聞いて混乱していた頭が冷静さを取り戻し、夢物語への思考が弾ける。
 番じゃないから好きになれない、けれど番になったら好きになる。
 そんなの、番か否かを第一優先にし、颯珠を振り回しているだけだ。
 いや――実際、琥陽は番か否かで颯珠の事を振ったのだ。
 今更『番らしいから』とその手を取ったところで颯珠に誠実ではないし、颯珠の事を軽く扱ってしまう。
 関係性をはっきりとさせたからこそ、今の雰囲気を乱してはいけない。
 気軽に番かどうかなんて、確かめてはならない。
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