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第19話
しおりを挟む「私、少し思ったことがあるんですけど……この動けないくらい酷い状態で家に放置されたら……普通に危険ではないですかね?」
「……そんなに体重いのか?」
「はい……たぶん、まともにトイレにもいけない状況です。いや、頑張れば行けると思いますが、たぶん悲鳴をあげながらになります。……オムツとか履かせて欲しいくらいです。あっ、もしかして追加料金かかりますかね?」
「いらん」
「無料でそこまでやってくれるんですか!?」
「そもそもしないんだよバカ!」
何のプレイと勘違いしてんだこいつは。
ただ、確かに彼女のいう通り、この状況で一人家に置いておいても満足に休めない可能性があるよな。
……そうなると、次の迷宮に行く日も遅れてしまうかもしれない。
そもそも、今日の分の成長を体に還元するためにしっかりと食事もしないといけないしな……。
「それなら、誰か知り合いはいないのか? そこに泊めてもらうとか」
「まあ、友人はいますよ? 一緒に新人冒険者として研修を受けた、ルーナさん、モールさん、レンさんたちですかね。ほら、ゴーストイーターのときに助けてもらった子たちです」
「ああ、そうか……それなら、その子たちに泊めてもらったらどうだ?」
「いえ……。もう、皆は友人であり、ライバルですから。私のせいで、みなさんの冒険者生活に何か不利益があったらいけません」
そこは、真面目なんだな。
ときには助け合いも大事ではあるが、まあ確かに毎回のように頼っていたらダメだ。
「そこで……私から名案があるのですが提案してもよろしいですか?」
「なんだ?」
嫌な予感がしたが、聞くしかないだろう。
「ショウさんの家に泊めてもらうというのは可能ですか?」
「いや、それは……まずくないか?」
「ショウさんが狼になってしまうから、ですか?」
「違うわボケ」
「私、今だと無抵抗で何もできませんから……きゃっ! もう、ダメですよそんなところ……!」
勝手に一人妄想で盛り上がっている彼女との専属契約を破棄しようかという考えが一瞬浮かぶ。
……いやまあ、違うなら別に問題ないっちゃ問題ないんだよな。
何もしないなら、ただの泊まりだ。ここが日本だと法的にまずいが異世界ではすでに彼女は成人済みだし。
アイフィがマジであまり動けないというのなら、彼女の体のケアを考えるとその支援をするというのがギルド職員としては正しい。
実際、専属契約を結んだ後で一緒に暮らすということもあるのは知っている。
……ただ、それはあくまで同性の場合ではないだろうか。
今回は性別が違うしなぁ。
うんうんと考えていると、アイフィが耳元で囁いてくる。
「お願いします。本気で動けなくて苦しいんです私。今なら、お触りもオッケーですよ?」
「……はあ、分かった」
「おっ、どこ触りますか?」
「許可した理由はそれじゃねぇ。本気で動けないなら、一人にするわけにはいかないからな」
俺はため息をつきながら、自宅へと向かって歩き出した。
アイフィとともに自宅へと入ったところで、俺は彼女を浴室まで運んだ。
「ひとまず、シャワー浴びてこい」
「体……洗ってくれますか?」
「そのくらいはできるだろ? 自分でやってこい」
アイフィを浴室へと放り込んだ。
さすがに彼女も多少は動けるようだからな。
……とりあえず、アイフィには俺のベッドを使ってもらうとして、洗濯乾燥機にシーツなどを放り込む。
……まだ夕方だし、寝るまでには何とかなるだろう。
それと、俺が寝る場所を確保するため、近くの店でマットレスでも買ってこよう。
レールゴルには日本の店も入っているからな。
「アイフィ、ちょっと俺買い物行ってくるけど……着替えは大丈夫か?」
「あっ、ゴムはないのでお願いします」
「よし、何もいらないな」
「もう……着替えは大丈夫です。ちゃんとアイテムボックスにしまってありますから。あっ、でもカレシャツとか憧れがあったので、何かパーカーとかでいいんでないですか?」
「着替えあるなら自分の使え」
「えー!」と不満の声が上がったが、俺はそれを無視しておいた。
最低限の生活用品をアイテムボックスにしまっておくのは冒険者にとっては基本だ。
恐らく、アイフィも何日か分の食事や着替えなどは用意しているのだろう。
とりあえず俺は店に行って、マットレスを買ってくる。
これをリビングにでも敷いておけば、ひとまず俺もソファで寝る必要はないだろう。
アイテムボックスにそれをしまったあと、俺はスーパーにも足を運び、食材を買い込む。
今日はカレーにしよう。というか、俺が作れる料理がカレーと鍋くらいだ。いつもはその二つを交互に作っていき、飽きてきたら外食か弁当で済ませるという感じだったからな。
部屋に戻ると、アイフィがソファで横になっていた。
何とか、そこまで移動したようだ。
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