捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太

文字の大きさ
4 / 32

第4話


「何をふざけたことを抜かしているんだ! スラム出身のおまえとこのオレが結婚してやると言っているんだ!」

 なぜ未だに上から目線な態度がとれるのか、私は本当に疑問だった。

「聖女と王子の立場……確か、どちらも別に上下の差はなかったはずですが?」
「何が言いたい?」
「命令に従う必要はない、ということです」

 私はきっぱりというと、ケルズ王子は顔を真っ赤にした。
 ああ、その顔が見られただけでも、これまで必死にいじめに耐え抜いた意味があったというものだ。

 そうして、ケルズ王子は、怒鳴ってきた。

「ふざけるなよ! この国では、聖女と王子が結婚する、そういう習わしになっているんだぞ!?」
「それはそちらの国の都合でしょう? 私は国に見捨てられた立場の人間ですから」

 もう一度きっぱりという。周囲は私と王子のやり取りにただただ驚いている様子だった。

「ふ、ふざけるなよ……っ! 貴様――あまり舐めた口を利くというのなら、強引に従わせてもいいんだぞ!?」
「それが出来るのでしょうか?」

 ケルズ王子は、どうやら私のその問いかけが不満だったみたい。
 彼はどんと、地面を蹴りつけると、護衛としていた騎士が前にでてきた。
 近衛騎士だ。彼らは兜までかぶっているせいで、何を考えているかはわからないけど……その立ち振る舞いから私の力を舐めているのが良くわかる。

「謝るのなら今のうちだぞ?」
「いえ、そのようなつもりはありませんわ。どうぞ、かかってきてください」

 私が軽く息を吐くと、近衛騎士たちはかちんと来たようで、飛びかかってきた。

「スラム出身の猿が――!」
「我ら貴族の血を持った騎士に勝てると思うなよ!」

 私はそこで、『スロウ』の魔法を発動した。
 途端、近衛騎士たちの動きが緩やかなものになる。とてもじゃないけど、私に攻撃を当てるなんて不可能なほどに遅くなっている。

 別に……こんなことしなくても何とかなりそうなんだけどね。
 『ガードアップ』を使えば、剣に斬られることもなさそうだし、そもそも普通に動くだけでもたぶん近衛騎士たちより今の私のほうが早いからね。

「き、貴様! 何をした!」
「聖女のみが使える時間魔法を使わせていただきました。どうでしたか?」
「ふざけるなよ貴様……ッ!! おい、騎士共! こいつを捕らえろ!」

 聖女の儀式は一転、神の間が慌ただしくなる。騎士たちがぞろぞろと入口から侵入してきたが、私はそのすべてに『スロウ』の魔法を使用し、その動きに制限をかけた。

「なっ!」

 誰もこちらには来れない。私はそのまま、すたすたとゲイル王子の前へと歩いていった。



感想 148

あなたにおすすめの小説

聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。

青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。 婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。 王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?

志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」  第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。 「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」 「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」 「そうですわ、お姉様」  王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。 「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」  私だけが知っている妹の秘密。  それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。