17 / 63
17
しおりを挟む「まあ、仮面つけてても特に邪魔じゃないしな。このままやっててもいいだろうさ。最悪現実の顔を変えれば問題ないしな」
「いやいや、変顔で過ごすにも限度あるよー」
変顔しなくても変身魔法があるからいくらでも誤魔化せるんだが、それは伏せておこう。
「そうなんだっ。兄貴、これ職業なに? 戦士?」
「いや、【暗殺者】だ」
「……え? それってもしかして隠し職業!? どうやって手に入れたの!?」
「最初のチュートリアルあっただろ? あれで出てくる盗賊50人全部倒したら、【暗殺者】と【剣闘士】が出てきたんだよ」
俺は該当の場所が映っている動画を見せると、舞は食いいるように見ていた。
「え? ええええええ!?」
「どうした舞? ゴキブリでも出たか!?」
「その名前出さないで!」
「ご、ごめん……」
舞が本気で嫌がったので、俺はしゅんとする。
もともと、この部屋汚かったので、例のGの存在もあり得る話だったし。
「……えっとね、兄貴。チュートリアルめちゃくちゃ難しくてね……今の最高記録が十人くらいの盗賊討伐、なんだよね……」
「つまり、俺が更新しちゃって驚いた、と?」
「そういうことだよ!」
「お兄ちゃん、凄い?」
「凄すぎるよ兄貴!」
きらきらとした目を向けてくる舞に、俺は胸を張る。
「ていうか、まだ発見されてない隠し職業をもうこんなに明かしてるなんて……!」
「そ、そうか?」
「こ、これ兄貴あんまり人に話さないほうがいいよ! この情報、高く売れるかもだから!」
「情報を売る?」
「うん……ていうか、兄貴も配信とかやるのもありじゃない!? こんなに色々情報持ってて、しかも強いしかっこいいし、イケボだし、兄貴絶対人気出るよ!」
「かっこいい以降は舞の色眼鏡入ってないか?」
だとしても、褒められてとてもお兄ちゃんは大満足だけど。
「いやいや、兄貴かっこいいから! あっ、まだまだ色々聞きたいけど、そろそろ配信再開しないと……またあとでね兄貴!」
「おう、了解だ。あっ、舞ってどんな武器使ってるんだ? 魔物がドロップしたら共有しようかと思ってたんだけど」
「え? 斧だよ!」
「え? まじで? それならオークの斧あるからあげよっか?」
まさか、舞にこんなすぐに貢げるなんて。
案の定、彼女は満面の笑顔だ。
「ほんと!? ちょうだい! あっ、でもお金そんなに持ってないんだけど……」
「いやいや。兄妹でアイテムの共有くらい別にいいって。これって、ゲーム内でアイテムを送ったりできるのか?」
「フレンド同士なら大丈夫だよ。とりあえずフレンドコード送っておくから……あーっと、兄貴ごめん! また細かいことはあとでね!」
舞が両手を合わせてぺこりと頭を下げる。彼女のリスナーたちも待っているだろうからあまり引き留めてはいけないだろう。
舞は斧を使っていることが分かっただけ十分だ。
俺も、自分のVRマシンで横になり、再び『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界へとログインした。
ログインした場所は、最後に俺がいた場所だ。
少しして、キリキリマイからフレンド登録の申請が来ました、とメッセージが画面に出てきた。
『兄貴! これあたしのアカウント! 登録お願いね!』
そんな舞のメッセージがついていた。自分の名前くらいは書いてくれないと分からないじゃないか……と舞のドジな部分を可愛いと思っていた俺は、ひとまずオークの斧を彼女に送りつけた。
このゲームの装備品は、職業、レベル、ステータスのどれかをあるいは複数を参考にして装備可能かが決まる。
例えば、レベル関係なく【暗殺者】なら装備可能とか、職業関係なくレベルだけ満たしていればいいとか、職業とステータスが一定の数値を満たしていないとダメ、とか色々だ。
モンキーナイフは敏捷値が一定以上で誰でも装備可能だ。
たぶん、条件が厳しいものほど、性能も上がるんだろう。
オークの斧は筋力が満たしていないといけないので、まだまだ舞には早いのかもしれないが、いずれは使うときもくるだろう。
『これ、言ってたやつ』
『なにこれ!? え!?』
『倒したオークがドロップした斧だ。要求筋力多いのと俺の職業だと装備不可だからな』
『オークって……レベルいくつだった?』
『20だ。村の人たちと協力してぶっ倒した』
『とりあえず、いい短剣手に入ったらあたしからあげるからね! 配信始まるから、またあとで! ありがとう大好き兄貴!』
大好き、兄貴……大好き、兄貴……。
何度も舞の声で脳内再生していった。
……このゲームを始めて良かった。
61
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる