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1~10
命の有り難み
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生きる希望が湧いてきた。
このギフト、【ためて・放つ】の使い方をもっと深く理解すれば更に多くのことができるかもしれない。
「まずはもっと理解しなきゃ……。この数値の意味を……」
目の前に浮かび上がっている半透明の板には、たった今僕に起こった変化を裏付けるように数値が変化していた。
――――――
【セージ・タブリンス】 LV25/40 次のレベルまで54540
魔素ストック 468896
・ストックしているもの
カウンターダメージ 5/100
☆基本攻撃力 10/100
☆魔力値 2/100
☆治癒力 0/100
――――――
LVっていうのはレベルのことか。それで、レベルアップっていうのは魔素を吸収して強くなる現象のことに違いない。
「そういえば本で読んだことがあるぞ……」
このルインハルド王国の初代国王は、自身の強さをレベルという概念で表したと言われている。
多分神託の儀式が終わって本格的に騎士としての訓練を開始すれば習うことだったかもしれないが、僕は家にあった本から先に学んでいた。
「でもこんな半透明のボードが出てくるなんて聞いたことがない。これもギフトの特別な力なのかな……」
レベルが強さの値だと仮定して、25レベルってどのくらいの強さなんだろう。
「この40ってのはさっき上がった数値だよな。ということはレベルは40までしか上がらないってこと……いや、初回ボーナスがどうのこうのって言ってたから……」
ということは、なんらかの条件をクリアすることで限界の数値も上がるってこと?
恐らくは魔素ストックを消費することで可能になるのか。
「そういえば、怪我の治りも早い……。前に体験した治癒魔法よりずっと早く治ってるぞ」
考えられるのはこの【治癒力 0/100】だろう。
「そうだ。レベルアップする前はこの数値が100/100だった気がする」
レベルアップと謎の治癒現象のおかげで体には気力が漲っている。
マハルに突き刺された傷痕も綺麗に消え去っていたし、体は問題無く動くようになった。
グゥウウウウ……
「うっ……お腹空いたな。そういえば昨日は晩ご飯も食べずに追い出されたんだった」
いつもと違う強烈な空腹感に襲われてお腹が激しく鳴る。これは生命維持のための本能かな。
「あ、そういえば……」
先ほど倒したデビルグリズリーの事を思い出す。
「魔物の肉って高額で取引される高級食材だ」
毎日の食事はそれなりにお金の掛かっていたものを食べてきた。嫡男のマハルとは差を付けられていたが、それでも普通の平民よりはずっと良いものを食べてきている。
その中でデビルグリズリーの肉はかなりの高級食材だった筈だ。
「魔石と……やっぱり肉がドロップしてる」
死体が完全に消滅し、光と共に現われたドロップアイテム。
それは魔物の肉体を構成しているといわれる魔石と、デビルグリズリーの肉であった。
「それにしてもドロップする肉はちゃんと植物の葉に包まれてるのが不思議だよな」
魔物には2種類ある。死んだ後に死体が残るタイプと、消滅して魔石とドロップアイテムに変化するタイプだ。
今の所両者の違いは内包している魔素の量で決まるという学説が有力だが、詳しいところは分かっていないらしい。
「どうだっていいか。解体するのも無理だしね」
世の中には討伐した魔物を解体する職業もある。
そんな専門職のような知識も経験もないので、葉っぱに包まれた状態でドロップするのはありがたい。
「血を見るのはなるべく避けたいし」
戦っていく以上血を見るのは避けられない。でもなるべくならグロテスクなものは見たくないのが本心だ。
「生で食べるのはやめた方がいいよね……」
野生魔物の生肉を処理せず食べるとお腹を壊すと聞いたことがある。
「よし、火魔法で焼いてみるか」
持っていたショートソードで塊の一部を切り落とし、弱めの火魔法で焼いてみる。というか、僕は攻撃魔法とも言えないレベルの火魔法しか使えないのだけど……。
だからこうして野営時の焚き木に着火する係や食事の準備をするときの火を付ける係をさせられていた。
川辺には薪にするような植物は落ちていない。このまま直接火で炙るしかなさそうだ。
「慎重に慎重に……くぅう、香ばしい。調味料がないのが残念だけど」
焼いたお肉っていうのは空腹にダイレクトな刺激をもたらして食欲をそそる。
良い感じにこんがりと焼き上がったお肉を恐る恐る口に運び、思い切って噛み締めた。
「はぐっ……んんぐんぐ……んんっ美味ぁあああいっ!」
口の中に生命力そのものが溢れ来るような肉汁の旨味が広がり、鼻の奥に突き抜ける野性味の強い香りが食欲を加速させた。
「屋敷で食べていたステーキとは全然違うけど、なんだろう。命の力強さを感じる旨味だ」
死にかけギリギリだった事も関係したんだろうけど、体の中身が生きる喜びに溢れてくる気がする。
「なんの調理もしてないのにこんなに美味しいなんて。生きててよかった」
あまりの美味しさに次々と切って焼いて切って焼いてを繰り返して口に運ぶ。
体の中身が喜びに満たされて、生きる気力が湧き上がってきた。
美味しい。食事がこんなに美味しいと感じたのは初めてだ。
「ふぅ……よーし、気力十分。出口を探そう」
1人で食べるには中々の量だった熊肉だけど、お腹が空いていたのでペロリと平らげることができてしまった。
特に肝が最高に美味だった。肉類でも肝は薬の材料にも使われる高級食材だって聞いたことがある。
本当に美味しかった。
「そうだ、魔石を」
デビルグリズリーの魔石はそこそこ貴重だ。町に行けば売ってお金にできる。
それにしてもよく倒せたな僕。
討伐隊を組んで綿密に作戦を立てても苦戦は必至だって屋敷の騎士から聞いたことがある。
『魔石を取得しました。魔素ストックに変換しますか? 変換量15000』
「え?」
魔石を手に持った瞬間、脳内に再び声がした。この声もまた謎が多いけど、それよりも気になる事がある。
「魔素ストックに変換? つまり魔石を経験値に変換できる……?」
そういえば今の魔素ストックは468896。これってかなりの数値じゃないだろうか。
「よく思い出せ。最初はどのくらいの数字だった?」
レベルアップに意識を注ぐ前、一瞬だけ見た魔素ストックの数字は確か65万くらいはあったはず。
レベルの数値は14だった。そこから25まで上げて現在の46万だ。
ということは、40まで上げてもまだ余るんじゃないかな。
25レベルがどのくらいの強さか分からない。だけど上がってからの体の充実感を考えると、この数値は高いほど僕自身の強さに繋がるのは間違いない。
「試してみるか……レベルアップに魔素ストックを使用して……って、どうすればいいんだ?」
どうするのか分からなかったが、心の中でそうしたいと念じた瞬間、例の声が語り始めた。
『魔素ストックを使ってレベルの上昇が可能です。限界レベルは40。必要な経験値を【放ち】ますか?』
これって小刻みに放つことはできないのかな? 一気に限界まで上げちゃうと早く無くなってしまう。
魔素ストックには他にも使い道があるかもしれないし、無計画に使い切ってしまうのは不安が残る。
「1レベル上昇分だけ【放つ】」
勘に頼ってそのように口にしてみる。すると僕の思った通り脳内の声が答えてくれた。
『1レベル上昇に必要なストックを消費し、レベルを26にアップしました』
――――
LV25→LV26
魔素ストック 468896→414356
――――
「うっ、結構ごっそり減ったな。多分レベル上げに必要な魔素量も段々上がっていくんだろうし、乱発はしない方がいいな……あれ?」
そこで自分の妙な変化に気が付いた。
「これは……食べた胃の中がスッキリしてる」
先ほど満腹になるまで食べて感じていたお腹の中のズッシリ感が消え失せ、丁度良い感じに体調が整った。
「食べ過ぎて胃もたれしてた感じがしなくなった。レベルアップって、もしかして体調も改善される……」
ぞわぞわとした昂揚感が全身を駆け抜けていくのが分かる。
「もしかして、レベルアップは体力が回復するんじゃ?」
考えてみれば、マハルにやられた傷も治ってたのは無意識に魔素によるレベルアップをしたからなのかもしれない。治癒力の数値との因果関係はまだ分からないけど。
でないとあれだけの大怪我をしたまま崖から落下して、一晩中冷たい水にさらされても生きていた理由が説明つかない。
「ひょっとしたら、これはもの凄いアドバンテージかもしれないぞ」
戦いの最中に体力と怪我が全快できるってもの凄いことだ。
剣を何度も振っていれば腕が疲れる。攻撃を避けたり立ち回っていると体力を消耗する。
任意のタイミングでそれを無しにできて、更に一段階上の強さにできる能力だとしたら、とんでもない奥の手にできるかもしれない。
「ゴクッ……やってみるか」
ひょっとしたらという疑問を放置はしたくない。
僕は恐る恐る自分の腕をショートソードで傷つけてみる。
「ッ……。よし、これで1レベル分魔素ストックを【放つ】」
『1レベルに必要なストックを消費しレベルを27にアップします』
――――
【セージ・タブリンス】LV27
魔素ストック 414356→352495
――――
するとたった今付けたばかりの斬り傷がスゥと消えていく。
「凄い。やっぱり怪我が治ってる」
レベルアップはいざという時の切り札になる。
となると……魔石は変換しておくか、それともとっておくか。
「まだ数値に余裕はあるし、とりあえず変換せずに持っておくか」
限界まで上げておく方が不安は少ないけど、魔素のストックがなくなるのは別の意味で不安だ。
よし、眺めていても分かることは少ない。
「とにかく森を出る手段を探しながら自分の力を検証しなくちゃ」
まだ死にたくない。それに……。
「ミレイユ……シャミー、レイシス、アーリア」
僕のことを案じてくれたミレイユ。
お調子者で元気印のシャミー。
清楚な癒やし系のレイシス。
いつも冷静沈着なアーリア。
皆僕によくしてくれた大切な仲間達。
彼女達にもう一度会ってお礼を言うまで、死ぬわけにはいかなくなった。
今すぐ戻ってもいい事はないだろう。
「そうだ……冒険者になって社会的地位を手に入れれば……」
上位の冒険者には爵位や勲章が与えられることがある。
アルファやオメガとまではいかなくても、それらはそれなりの貴族と同等の影響力を持つようになると言われている。
タブリンス家は王国で数少ないオメガ貴族だ。つまり国王様の次に権力を持っている人だ。
生半可な立場では門前払いが関の山だろう。
「よし、僕の目標は決まったぞ」
冒険者になる。そして、もう一度ミレイユ達に会うんだ。
ガサッ……
「ッ……」
さあ出発だ、と立ち上がったところで奇妙な気配を感じる。
辺りを見回すと、木が生い茂っている森の入り口付近にいくつかの影が見えた。
「あれは……ゴブリンか」
小さな体に大きめの頭。長く大きな耳が見える。
正確な数は分からないけど、一匹や二匹じゃない。少なくとも5匹以上はいそうだ。
魔の森に生息しているゴブリンは、たしかグリーンゴブリンだったはず。
ゴブリンはブルー、グリーン、レッド、ブラックの順番に強くなっていく。
ゴブリンはずる賢くて卑怯な手段を平気で使う。人質を取ることもあるらしい。
まともに戦おうとすればなぶり殺しにされるだろう。
熊の肉焼きの匂いに釣られてやってきたのかもしれない。
僕の手が自然と力を込め、握り絞めた剣の柄がギュッと音を鳴らした。
「え?」
――――
魔素ストック 352495→352207
カウンターダメージ 5/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆基本攻撃力 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆魔力値 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆治癒力 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
――――
突然自分の中に起こった変化に気が付く。無意識に戦いへの心構えをした瞬間、ボードに表示された数字が驚くべき変化を表した。
僕の脳裏には、それらの現象を目の前の魔物で試すべきだという思考が加速度的に浮かび上がっていた。
このギフト、【ためて・放つ】の使い方をもっと深く理解すれば更に多くのことができるかもしれない。
「まずはもっと理解しなきゃ……。この数値の意味を……」
目の前に浮かび上がっている半透明の板には、たった今僕に起こった変化を裏付けるように数値が変化していた。
――――――
【セージ・タブリンス】 LV25/40 次のレベルまで54540
魔素ストック 468896
・ストックしているもの
カウンターダメージ 5/100
☆基本攻撃力 10/100
☆魔力値 2/100
☆治癒力 0/100
――――――
LVっていうのはレベルのことか。それで、レベルアップっていうのは魔素を吸収して強くなる現象のことに違いない。
「そういえば本で読んだことがあるぞ……」
このルインハルド王国の初代国王は、自身の強さをレベルという概念で表したと言われている。
多分神託の儀式が終わって本格的に騎士としての訓練を開始すれば習うことだったかもしれないが、僕は家にあった本から先に学んでいた。
「でもこんな半透明のボードが出てくるなんて聞いたことがない。これもギフトの特別な力なのかな……」
レベルが強さの値だと仮定して、25レベルってどのくらいの強さなんだろう。
「この40ってのはさっき上がった数値だよな。ということはレベルは40までしか上がらないってこと……いや、初回ボーナスがどうのこうのって言ってたから……」
ということは、なんらかの条件をクリアすることで限界の数値も上がるってこと?
恐らくは魔素ストックを消費することで可能になるのか。
「そういえば、怪我の治りも早い……。前に体験した治癒魔法よりずっと早く治ってるぞ」
考えられるのはこの【治癒力 0/100】だろう。
「そうだ。レベルアップする前はこの数値が100/100だった気がする」
レベルアップと謎の治癒現象のおかげで体には気力が漲っている。
マハルに突き刺された傷痕も綺麗に消え去っていたし、体は問題無く動くようになった。
グゥウウウウ……
「うっ……お腹空いたな。そういえば昨日は晩ご飯も食べずに追い出されたんだった」
いつもと違う強烈な空腹感に襲われてお腹が激しく鳴る。これは生命維持のための本能かな。
「あ、そういえば……」
先ほど倒したデビルグリズリーの事を思い出す。
「魔物の肉って高額で取引される高級食材だ」
毎日の食事はそれなりにお金の掛かっていたものを食べてきた。嫡男のマハルとは差を付けられていたが、それでも普通の平民よりはずっと良いものを食べてきている。
その中でデビルグリズリーの肉はかなりの高級食材だった筈だ。
「魔石と……やっぱり肉がドロップしてる」
死体が完全に消滅し、光と共に現われたドロップアイテム。
それは魔物の肉体を構成しているといわれる魔石と、デビルグリズリーの肉であった。
「それにしてもドロップする肉はちゃんと植物の葉に包まれてるのが不思議だよな」
魔物には2種類ある。死んだ後に死体が残るタイプと、消滅して魔石とドロップアイテムに変化するタイプだ。
今の所両者の違いは内包している魔素の量で決まるという学説が有力だが、詳しいところは分かっていないらしい。
「どうだっていいか。解体するのも無理だしね」
世の中には討伐した魔物を解体する職業もある。
そんな専門職のような知識も経験もないので、葉っぱに包まれた状態でドロップするのはありがたい。
「血を見るのはなるべく避けたいし」
戦っていく以上血を見るのは避けられない。でもなるべくならグロテスクなものは見たくないのが本心だ。
「生で食べるのはやめた方がいいよね……」
野生魔物の生肉を処理せず食べるとお腹を壊すと聞いたことがある。
「よし、火魔法で焼いてみるか」
持っていたショートソードで塊の一部を切り落とし、弱めの火魔法で焼いてみる。というか、僕は攻撃魔法とも言えないレベルの火魔法しか使えないのだけど……。
だからこうして野営時の焚き木に着火する係や食事の準備をするときの火を付ける係をさせられていた。
川辺には薪にするような植物は落ちていない。このまま直接火で炙るしかなさそうだ。
「慎重に慎重に……くぅう、香ばしい。調味料がないのが残念だけど」
焼いたお肉っていうのは空腹にダイレクトな刺激をもたらして食欲をそそる。
良い感じにこんがりと焼き上がったお肉を恐る恐る口に運び、思い切って噛み締めた。
「はぐっ……んんぐんぐ……んんっ美味ぁあああいっ!」
口の中に生命力そのものが溢れ来るような肉汁の旨味が広がり、鼻の奥に突き抜ける野性味の強い香りが食欲を加速させた。
「屋敷で食べていたステーキとは全然違うけど、なんだろう。命の力強さを感じる旨味だ」
死にかけギリギリだった事も関係したんだろうけど、体の中身が生きる喜びに溢れてくる気がする。
「なんの調理もしてないのにこんなに美味しいなんて。生きててよかった」
あまりの美味しさに次々と切って焼いて切って焼いてを繰り返して口に運ぶ。
体の中身が喜びに満たされて、生きる気力が湧き上がってきた。
美味しい。食事がこんなに美味しいと感じたのは初めてだ。
「ふぅ……よーし、気力十分。出口を探そう」
1人で食べるには中々の量だった熊肉だけど、お腹が空いていたのでペロリと平らげることができてしまった。
特に肝が最高に美味だった。肉類でも肝は薬の材料にも使われる高級食材だって聞いたことがある。
本当に美味しかった。
「そうだ、魔石を」
デビルグリズリーの魔石はそこそこ貴重だ。町に行けば売ってお金にできる。
それにしてもよく倒せたな僕。
討伐隊を組んで綿密に作戦を立てても苦戦は必至だって屋敷の騎士から聞いたことがある。
『魔石を取得しました。魔素ストックに変換しますか? 変換量15000』
「え?」
魔石を手に持った瞬間、脳内に再び声がした。この声もまた謎が多いけど、それよりも気になる事がある。
「魔素ストックに変換? つまり魔石を経験値に変換できる……?」
そういえば今の魔素ストックは468896。これってかなりの数値じゃないだろうか。
「よく思い出せ。最初はどのくらいの数字だった?」
レベルアップに意識を注ぐ前、一瞬だけ見た魔素ストックの数字は確か65万くらいはあったはず。
レベルの数値は14だった。そこから25まで上げて現在の46万だ。
ということは、40まで上げてもまだ余るんじゃないかな。
25レベルがどのくらいの強さか分からない。だけど上がってからの体の充実感を考えると、この数値は高いほど僕自身の強さに繋がるのは間違いない。
「試してみるか……レベルアップに魔素ストックを使用して……って、どうすればいいんだ?」
どうするのか分からなかったが、心の中でそうしたいと念じた瞬間、例の声が語り始めた。
『魔素ストックを使ってレベルの上昇が可能です。限界レベルは40。必要な経験値を【放ち】ますか?』
これって小刻みに放つことはできないのかな? 一気に限界まで上げちゃうと早く無くなってしまう。
魔素ストックには他にも使い道があるかもしれないし、無計画に使い切ってしまうのは不安が残る。
「1レベル上昇分だけ【放つ】」
勘に頼ってそのように口にしてみる。すると僕の思った通り脳内の声が答えてくれた。
『1レベル上昇に必要なストックを消費し、レベルを26にアップしました』
――――
LV25→LV26
魔素ストック 468896→414356
――――
「うっ、結構ごっそり減ったな。多分レベル上げに必要な魔素量も段々上がっていくんだろうし、乱発はしない方がいいな……あれ?」
そこで自分の妙な変化に気が付いた。
「これは……食べた胃の中がスッキリしてる」
先ほど満腹になるまで食べて感じていたお腹の中のズッシリ感が消え失せ、丁度良い感じに体調が整った。
「食べ過ぎて胃もたれしてた感じがしなくなった。レベルアップって、もしかして体調も改善される……」
ぞわぞわとした昂揚感が全身を駆け抜けていくのが分かる。
「もしかして、レベルアップは体力が回復するんじゃ?」
考えてみれば、マハルにやられた傷も治ってたのは無意識に魔素によるレベルアップをしたからなのかもしれない。治癒力の数値との因果関係はまだ分からないけど。
でないとあれだけの大怪我をしたまま崖から落下して、一晩中冷たい水にさらされても生きていた理由が説明つかない。
「ひょっとしたら、これはもの凄いアドバンテージかもしれないぞ」
戦いの最中に体力と怪我が全快できるってもの凄いことだ。
剣を何度も振っていれば腕が疲れる。攻撃を避けたり立ち回っていると体力を消耗する。
任意のタイミングでそれを無しにできて、更に一段階上の強さにできる能力だとしたら、とんでもない奥の手にできるかもしれない。
「ゴクッ……やってみるか」
ひょっとしたらという疑問を放置はしたくない。
僕は恐る恐る自分の腕をショートソードで傷つけてみる。
「ッ……。よし、これで1レベル分魔素ストックを【放つ】」
『1レベルに必要なストックを消費しレベルを27にアップします』
――――
【セージ・タブリンス】LV27
魔素ストック 414356→352495
――――
するとたった今付けたばかりの斬り傷がスゥと消えていく。
「凄い。やっぱり怪我が治ってる」
レベルアップはいざという時の切り札になる。
となると……魔石は変換しておくか、それともとっておくか。
「まだ数値に余裕はあるし、とりあえず変換せずに持っておくか」
限界まで上げておく方が不安は少ないけど、魔素のストックがなくなるのは別の意味で不安だ。
よし、眺めていても分かることは少ない。
「とにかく森を出る手段を探しながら自分の力を検証しなくちゃ」
まだ死にたくない。それに……。
「ミレイユ……シャミー、レイシス、アーリア」
僕のことを案じてくれたミレイユ。
お調子者で元気印のシャミー。
清楚な癒やし系のレイシス。
いつも冷静沈着なアーリア。
皆僕によくしてくれた大切な仲間達。
彼女達にもう一度会ってお礼を言うまで、死ぬわけにはいかなくなった。
今すぐ戻ってもいい事はないだろう。
「そうだ……冒険者になって社会的地位を手に入れれば……」
上位の冒険者には爵位や勲章が与えられることがある。
アルファやオメガとまではいかなくても、それらはそれなりの貴族と同等の影響力を持つようになると言われている。
タブリンス家は王国で数少ないオメガ貴族だ。つまり国王様の次に権力を持っている人だ。
生半可な立場では門前払いが関の山だろう。
「よし、僕の目標は決まったぞ」
冒険者になる。そして、もう一度ミレイユ達に会うんだ。
ガサッ……
「ッ……」
さあ出発だ、と立ち上がったところで奇妙な気配を感じる。
辺りを見回すと、木が生い茂っている森の入り口付近にいくつかの影が見えた。
「あれは……ゴブリンか」
小さな体に大きめの頭。長く大きな耳が見える。
正確な数は分からないけど、一匹や二匹じゃない。少なくとも5匹以上はいそうだ。
魔の森に生息しているゴブリンは、たしかグリーンゴブリンだったはず。
ゴブリンはブルー、グリーン、レッド、ブラックの順番に強くなっていく。
ゴブリンはずる賢くて卑怯な手段を平気で使う。人質を取ることもあるらしい。
まともに戦おうとすればなぶり殺しにされるだろう。
熊の肉焼きの匂いに釣られてやってきたのかもしれない。
僕の手が自然と力を込め、握り絞めた剣の柄がギュッと音を鳴らした。
「え?」
――――
魔素ストック 352495→352207
カウンターダメージ 5/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆基本攻撃力 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆魔力値 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆治癒力 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
――――
突然自分の中に起こった変化に気が付く。無意識に戦いへの心構えをした瞬間、ボードに表示された数字が驚くべき変化を表した。
僕の脳裏には、それらの現象を目の前の魔物で試すべきだという思考が加速度的に浮かび上がっていた。
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なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
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