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新しき仲間
しおりを挟む「……休息も取れましたし、準備も整いました。そろそろ再び迷宮へ挑みましょうか」
セレスが落ち着きを取り戻した声で言った。まだ不安げではあるけれど、その瞳には強い意志が宿っている。
ギルドからの依頼は未だ進行中だ。僕らは報告を済ませつつ、追加の補給を受け、再びダンジョン攻略を続けることを決めた。
「セレス、大丈夫? 無理はしないでね」
リンカが肩に手を置いて微笑む。
「はい……わたくしも、皆さまのお役に立ちたいのです」
「ん……セレス、守る。だから安心」
ルミナスが素っ気なくも真剣に呟いた。ぶっきらぼうに見えるけど、ルミナスも仲間思いで優しい女の子だな。
◇◇◇
僕たちはさらに奥の階層へと足を踏み入れた。
空気はひどく澱んでおり、さっきまでのゾンビやスケルトンの群れとは比べものにならないほどの瘴気が漂っている。壁の紫苔はまるで血管のように脈動し、不気味な低音が洞窟全体に響いていた。
「……ここまで雰囲気が違うと、さすがに嫌な予感しかしないわね」
リンカが低く呟き、双剣を構える。
「ん……敵、強い。ルミナス、感じる」
ルミナスの魔力感知が、奥から大きな存在を捉えていた。
その時だった。洞窟の天井に浮かぶように、炎の紋章が一瞬だけ揺らめく。
そして低く、嘲るような声が響いた。
「フン……人間ごときがここまで踏み込むとはな。だが無駄だ。すべては我らの礎に過ぎん」
声だけ。姿は見えない。けれども、僕の背筋に氷のような悪寒が走った。
リンカも耳を立てて険しい表情を浮かべ、ルミナスは小さく震えながら呟く。
「……強い。見えないのに、圧……すごい」
声はそれ以上名乗らず、ただ炎の紋章を残して消え去った。
不意にセレスが両手を組み、蒼白な顔で震える声を漏らした。
「い、今のは……。この瘴気……やはり、わたくしを囚えた連中と同じです……」
「セレス、何か知ってるのか?」
「……彼らは、恐らく“ベアストリア教団”の尖兵。表では神を称え人々を導く顔をしていながら、裏では大きな闇と繋がっている……。わたくしも……その贄として……」
その瞬間、すべての点が繋がった気がした。
囚われの理由。敵の異様な執念。そして、さっきの声。――この迷宮の背後に、僕たちの知らない巨大な存在が潜んでいる。
けれど、セレスの怯えた瞳に映った僕らの姿は、きっとその不安を少しでも和らげる光になるはずだ。
「大丈夫だ、セレス。僕たちがいる限り、絶対に君を贄にはさせない」
「セージ様……」
「ん……守る。ルミナスも」
「わたしも、セージ君に賛成よ。ここまで来たんだもの。黒幕がなんであろうと、私たちの敵なら倒すだけ」
闇の中に、再び静寂が戻る。
だが、もう引き返す道はない。僕たちはセレスと共に、さらに深く――黒幕の待つ迷宮の奥へと足を踏み出した。
◇◇◇
僕たちが辿り着いたのは、広大な円形の広間だった。
黒い霧が渦を巻き、中央にアンデッドの騎士団が控えている。背丈二倍はある巨大なリッチが、呪符を掲げて不気味に笑った。
「侵入者共……貴様らの命、聖女と共に供物として捧げてやろう……」
その瞬間、骸骨騎士たちが一斉に突撃してくる。
十体、二十体――いや、それ以上。
「数が多いわ!」
「ん……でも、やる。セージ、いっしょ」
僕は剣を構え、息を吐き出す。
「――【重ね斬り】!」
一閃が十重に分かれ、先頭の骸骨兵をまとめて粉砕した。
だが、奥のリッチが呪文を唱える。
「グォォ……《カース・クラウド》!」
黒い瘴気が広間を覆い、体の芯まで冷えるような呪いが押し寄せた。
思わず膝が揺らぎそうになる――。
「――大丈夫です! どうか下がってください!」
セレスが前に出て、胸に輝く紋章を掲げた。
「《ホーリー・シェル》!」
淡い光の膜が僕たちを包み込み、呪詛を押し返していく。
【聖属性付与】【呪い耐性強化】が効いている。
セレスと繋がってアンデッドモンスターと格段に戦いやすくなった。
剣を握り直すと、刀身に淡い聖光が宿る。今まで浄化の強化でしか扱えなかった光が、常時纏えるようになっている。
「よし、やってやる!」
リッチが目を光らせ、別の呪符を投げつける。
「貴様ら……その娘を守るか? ならば共に滅べ!」
骸骨騎士が一斉に突撃してきた。
「リンカ!」
「任せて! 《ホーリー・アロー》!」
光矢が骸骨兵の胸を貫き、次々と崩れ落ちる。
「ルミナス!」
「了解……《フレイム・ストーム》!」
赤い竜巻が広間を吹き荒れ、黒い霧を一掃した。
そして僕は聖光を纏った剣を振り下ろす。
「――【シャイニング・チャージ】!」
巨大な光の斬撃が奔流となり、リッチを呑み込む。
「ガアァァァァァ――ッ!」
黒い霧が弾け、リッチは断末魔を上げながら消滅した。
残されたのは一つの魔石。
天の声が響く。
『魔石を取得しました。魔素ストックに変換しますか? 変換値は120万』
……やっぱり、今回もすごい数字だな。
僕は心の中で頷き、変換を了承した。
力が体に流れ込む感覚と同時に、仲間たちが肩で息をして振り返る。
「セージ君……今の光、すごかった」
「ん……剣、綺麗だった。聖女の力……繋がった」
ルミナスがセレスをちらりと見て、言葉を続ける。
「セレス……役立った。ルミナス、感謝」
セレスは驚いたように目を見開き、やがて小さく微笑んだ。
「わたくしなど……本当に役に立てましたの……?」
「もちろん。君のおかげで助かったんだ」
僕は力強く答える。
「これからも一緒に、な」
「はい! ありがとうございます!」
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