地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

文字の大きさ
61 / 137
61~70

魔将、あらわる

しおりを挟む
 僕たちは、ダータルカーンの街を出発した。
 ギルドからの正式な依頼を受け、今回の目的地はあの「囁く迷宮」のさらに奥。セレスを捕まえていた連中の拠点は潰したが、調査の結果、その先に“もっと深い領域”があると判明したのだ。

「セージ君、気を引き締めていきましょう。今回の依頼は、教団の本格的な動きを探るものだから」
「ん……油断しない」
「わたくしも……皆様のお力になれるよう、努めます」

 リンカは凛とした声で、ルミナスは短く、セレスは不安を抱えながらも真剣な瞳で。
 それぞれが自分の役割を理解し、歩を進めていた。

 入口からしばらく進んだ頃、湿った空気に混じって、不吉な気配が広がってきた。
「……来るわよ」
 リンカの耳がぴくりと動いた瞬間、闇の中からスケルトンとゾンビの群れが現れた。

「数、多い……」
「だけど、大丈夫。僕たちで突破する!」

 リンカが矢を放ち、ルミナスが《ファイア・バレット》を連射してゾンビを焼き払う。
 僕は剣を握りしめ、浄化の光を纏わせてスケルトンを一閃した。

「――ライト・セイバー!」
 白光が骨を砕き、暗闇を裂いていく。

「わたくしも……《ホーリー・シールド》!」
 セレスが光の防壁を展開し、後方から仲間を守ってくれる。淡い光が仲間たちを包み込み、呪詛の力をかき消していくのが分かった。

「セレス……ありがと!」
「いえ……! これが、わたくしにできることですから」

 しばらくして、アンデッドの群れは完全に沈黙した。灰と魔石だけが、床に残される。


 休息をとりながら、僕らはさらに奥へ進んだ。
 ここは以前セレスが囚われていた場所よりもずっと奥。壁には古代の文字が刻まれ、紫の苔の光が揺らめいている。

「……空気が、重い」
「ん……嫌な気配。強いの、いる」
「セージ君、気をつけて。ここからが本番かもしれないわ」

 全員の表情が引き締まる。

 やがて、広間のような場所に辿り着いた。天井は高く、岩壁のあちこちから赤い光が漏れ出している。
 その中央に――炎の渦が生まれた。

「な、なんだ……⁉」
「これは……ただの魔物じゃない!」

 灼熱の風が吹き荒れ、視界が揺らぐ。
 やがて現れたのは、黒鉄の鎧を纏い、燃え盛るマントを背負った巨躯の男。

「フハハハッ……人間ども、ここまで来るとは見事だ。だが、ここで灰と化せ」

 大剣を振り上げると、火柱が広間を走った。

 僕たちは、一瞬で理解した。ここから先は、今までの戦いとは桁が違う。

「そうか、こいつが……」
「分かるわ。今までの奴らとは、明らかに違う」

「熱いのに、寒気がする」

「なんて恐ろしい……」


 熱気が空間を満たし、肌を焼くような熱風が押し寄せてきた。
 爆ぜる炎と共に現れたのは、黒鉄の鎧に全身を覆われ、燃え盛るマントを背負った巨躯の男――間違いなく、こいつが炎の魔将イグニスだろう。

「ふんっ」

 大剣を振るうたびに火柱が走り、床石が溶けていく。圧倒的な存在感に、思わず息が詰まった。

「セージ君、来るわ!」
「ん……大きい。強い」

 リンカとルミナスが同時に身構える。次の瞬間、イグニスの炎の奔流が押し寄せてきた。


 炎の刃が空間を切り裂く。僕は即座に剣を構え、衝撃を受け止めた。
「うおおおおっ……!」
 重すぎる。力任せに押し潰すような一撃だ。普通の冒険者なら一瞬で灰になる。

「《ホーリー・シールド》!」
 セレスが光の盾を展開し、迫り来る炎を遮った。眩しい光が僕らを包み、熱気を和らげてくれる。
「ありがとう、セレス!」

「セージ君、隙を狙うわ!」
 リンカが矢を番え、疾風のように放つ。だが、イグニスは鎧の肩で受け流し、炎の反撃を浴びせてきた。

「……っ、炎が強すぎる。押し切れない!」
「ルミナス、炎で消す……《ファイア・ランス》!」

 ルミナスの炎の槍が火柱を貫く。しかし、すぐにかき消され、逆に熱気に押し返されてしまう。
「セージ……炎、炎じゃ、勝てない」
 額に汗を滲ませながら、必死に声を上げるルミナス。たぶん同じ属性同士だと、純粋に威力が高い方が勝つんだろう。

 その瞬間、あの女声が脳裏に響いた。

――――――――――――――――――

――『フィーリングリンクで新たな属性適性・氷属性魔法を習得可能です。習得には魔素ストック300,000を消費します。消費しますか?』

――――――――――――――――――

 ……来た。いつも僕らを助けてくれる謎の声。
 迷う理由はなかった。
(やれ! ルミナスに力を!)

「……来た。冷たい……力」
 ルミナスの周囲に白い霧が立ちこめ、炎とは正反対の冷気が生まれた。
「《アイス・ランス》!」

 鋭い氷槍が無数に生成され、炎の奔流を貫いて消し去る。灼熱の空気が一瞬にして冷気に変わり、僕らの頬を撫でた。

「なにっ……!? 我が炎を凍らせるだと!?」
 イグニスの声が揺らいだ。

「さらに……縛る。《フロスト・バインド》!」
 氷の鎖がイグニスの足元から絡みつき、一瞬その巨体を拘束する。


「今だ、全員で!」
「了解!」
「ん……任された!」

 セレスが再び《ホーリー・シールド》を展開し、炎への耐性を強化。
 リンカが双剣を閃かせ、装甲の隙間を斬り裂く。
 僕は渾身の力を込めて叫ぶ。

「破魔斬光陣ッ!」
 光の大斬撃がイグニスを包み込み、ルミナスの炎と氷が同時に炸裂した。

「ぐおおおおおおおおっ……!」
 爆風が巻き起こり、洞窟全体が震える。

 煙の中から現れたイグニスの鎧はひび割れ、赤熱の瞳が怒りに揺れていた。
「人間ごときに……ここまで追い詰められるとはな。だが所詮は未熟。次に会う時、真の地獄を見せてやろう」

 そう言い残し、炎の渦に包まれて消え去った。


「……追い払った、のよね」
リンカが息をつきながら言う。
「ん……でも、完全に勝ってない」
ルミナスが冷静に呟く。
「あれが炎の魔将・イグニス。なんて凄まじい……」

 ルミナスの新しい力――氷魔法が仲間に加わった。
 でも、イグニスはまだ本気を出していなかった気がする。

 ツインヘッド・ダークドラゴンすら一撃で葬った僕の力に加えて、リンカ、ルミナス、セレスの力を合わせてもギリギリだった。

 これまでの相手とは桁違いだ。
 次の戦いは、もっと苛烈なものになる。

 そろそろ今のレベルではキツくなってきた。魔素ストックを解放する時期がきたのかもしれない。

 しかし、今までの経験上、拮抗した戦いをするほどに強い力に目覚める傾向にある。

 もしも限界値の100レベルで太刀打ちできない相手が現われた時のために、この選択肢はギリギリまでとっておきたい。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

社畜だった俺、最弱のダンジョンマスターに転生したので、冒険者を癒やす喫茶店ダンジョンを経営します

☆ほしい
ファンタジー
過労死した俺が目を覚ますと、そこは異世界のダンジョンコアの前だった。 どうやら俺は、ダンジョンマスターとして転生したらしい。 だが、与えられた俺のダンジョンは最低ランクのF級。魔力を生み出す力は弱く、生み出せる魔物もスライムやゴブリンといった最弱クラスばかり。これでは、冒険者を呼び込んで魔力を得るなんて夢のまた夢だ。 絶望する俺だったが、ダンジョンの創造機能を使えば、内装を自由にデザインできることに気づく。 「……そうだ、喫茶店を開こう」 前世で叶えられなかった夢。俺は戦闘を放棄し、ダンジョンの入り口に木造の喫茶店『やすらぎの隠れ家』を作り上げた。メニューは、前世の知識を活かしたコーヒーと手作りケーキだけ。 ところが、そのコーヒーには異常なまでの疲労回復効果が、ケーキには一時的な能力向上効果が付与されていることが判明。噂を聞きつけた訳ありの冒険者たちが、俺のダンジョンに癒やしを求めて集い始めるのだった。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...