地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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結集・七魔将

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 ――そこは世界の裏側に口を開けた、地獄そのものの広間であった。
 床は黒曜石の板で敷き詰められ、地中から噴き上がるマグマの赤い光が血管のように脈動している。

 壁には無数の骨と黒鉄が組み込まれ、蠢く影が呻き声を上げながら這い回っていた。

 天井からは数えきれぬほどの鎖が垂れ下がり、鎖の先には悲鳴をあげる亡者の魂が吊るされている。彼らの叫びは悲痛にして、同時に魔将たちの糧でもあった。

 その中央に据えられたのは――黒鉄と巨獣の骨で組み上げられた円卓。

 表面には魔界語の刻印がびっしりと走り、血で描かれた紋章が禍々しい光を放っていた。

 燭台の代わりに、円卓の周囲では燃え盛る炎が柱のように立ち昇り、広間を揺らめく光で照らす。

 そこに座すは七つの影。
 彼らこそ、世界を恐怖で塗り潰す最悪の存在――《七魔将》であった。


 燃え盛るマントを翻し、イグニスは最初に口を開いた。

「……ふん、尖兵どもが敗れたか」

 その声は炎の爆ぜる音のようでありながら、不思議と明瞭に広間を震わせた。

 赤黒い髪はまるで炎の柱のように逆立ち、瞳は溶鉱炉の奥底に潜む鉄塊のように赤熱している。

 巨体を覆う黒鉄の鎧は常に熱を帯し、彼が座る椅子すらじりじりと焦げていた。

「だが――奴ら、思ったより骨がある」

 イグニスは口元に不敵な笑みを刻む。その笑みは業火の喜びそのもの。

「面白い。燃やし甲斐がある……」



 隣に座る氷の女が、涼やかな声で応じた。

「失敗は失敗。言い訳は不要ですわ、イグニス」

 セレーネの衣装は氷の結晶で編まれたドレス。白銀の肌は冷気を帯び、彼女が吐息を漏らすだけで周囲の空気が凍りつく。

 結晶の瞳は美しさと残酷さを併せ持ち、見つめられるだけで心臓を握り潰される錯覚を覚えるだろう。

「ですが……ふふ。あなたが焚きつけた人間ごときが尖兵を退けるなんて、実に滑稽。けれど……愉快でもありますわね」




 銀髪を揺らす女が、懐中時計を弄びながら冷ややかに吐き捨てた。

「時間を浪費するのは嫌いだわ。尖兵程度で遅れを取る……先が思いやられる」

 アルジーナのドレスは漆黒のタイト、首からは古めかしい懐中時計が下がり、針が異常な速さで回転している。

「……まあ、“ためる”なんて無駄な行為に頼る者など、私が相手すれば一瞬で沈むけれど」

 彼女の笑みは冷酷で、秒針の音が広間全体の鼓動と同調するかのようだった。



「ガハハ!」

 場を震わせる爆音の笑い声。
 牛頭巨人ベロクが四本の腕を広げ、腹部に口を開いた。そこからは腐敗した唾液が垂れ落ち、床を焼き溶かす。

「面白れえじゃねえか。奴らが力を溜めりゃ溜めるほど……喰いでがある! 全部、俺の腹で吸い尽くしてやるわ!」

 その豪快な声に、魂を吊るした鎖が共鳴し、悲鳴がさらに高まった。




「……妙だ」

 痩せ細った老人のような姿。だが体中には無数の眼が生え、すべてが異なる方向を見ている。

「未来視を覗いたが……セージとか言ったか。あの少年の行く末が霞んでおる」

 ヴァルナの声は風に紛れる囁きのようだが、一度耳に入れば離れない。

「仲間との絆……それが我が視界を乱しておるのか。実に厄介……いや、実に興味深い」



「群れを率いるのは私の役目」

 赤黒い羽根を広げ、ラミエルが艶やかに囁いた。
 彼女の翼には血の文様が脈動し、羽ばたくだけで血の霧が舞う。

「彼らがどれほど強くとも、軍勢の前には塵に等しい」

 彼女の紅い唇が妖艶に歪む。

「……それとも、愛する町ごと焼き払った方が楽しいかしら?」



 円卓の一角、鎖を引きずりながら巨体が沈黙を破った。

「……言葉は不要」

 石膚の巨人、ダゴン。十数メートルの体は鎧のような岩で覆われ、片目は仮面に隠されている。

「破壊が全てだ。次に出るのは……俺だ」

 低い声が地鳴りのように響き、広間がわずかに揺れる。





 七人は好き勝手に言葉を吐き、嘲り、挑発する。だがその混沌をまとめ上げるかのように、イグニスが立ち上がった。


「よかろう」

 燃え盛るマントが広間を紅蓮に染め上げる。炎の揺らめきが石壁の古い瘴気を炙り出し、空気は重く、息をするたびに喉を焼くようだ。遠くで鎖がきしむ音が反響し、石床に落ちた煤の匂いが金と血の混ざった冷たい臭気と溶け合う。燭台の光さえ、彼らの前では弱々しく、影が巨大な牙となって這い回るように伸びていた。

「奴らは俺が焚きつけた火種で燃え上がった因果だ。……次は本格的に潰す」

 溶鉱炉のような瞳が、まだ見ぬ敵を睨み据える。視線の先にあるのは名も無き民衆の喉笛であり、やがてその喉は踏みにじられて音を上げる運命しか見えない。声には揺るがぬ確信と、他者を踏み台にする冷徹な悦楽が混じっていた。

「ベアストリア教団の枠など取るに足らん。我ら《七魔将》の名を、人類すべてに刻みつける時が来たのだ」

 その言葉を合図に、広間は禍々しい笑い声で満ち溢れた。笑いはやがて連鎖し、木霊のように増幅していく。炎と氷と血と闇が混ざり合い、地獄の円卓に響き渡る――七魔将の狂宴が、今、幕を開けた。
 その場にあるのは威圧の磐石であり、抵抗の芽を摘むために設えられた宴である。誰かが小さく囁けば、周囲の笑いは刃に変わるだろう。外の世界で芽吹く希望の灯が、その場で一つ一つ潰される様を、彼らは冷ややかに楽しんでいるのだ。




――――――――――――――――――

※七魔将データ※
1. 《烈火の魔将》イグニス
容姿:黒鉄の鎧に燃え盛るマント。赤黒い髪、溶鉱炉のような瞳。

2. 《氷刃の魔将》セレーネ
容姿:氷のドレス、白銀の肌、結晶の瞳。冷気を纏った美女。

3. 《瞬撃の魔将》アルジーナ
容姿:銀髪、黒のタイトドレス。懐中時計の首飾りを携える。

4. 《大食の魔将》ベロク
容姿:牛頭の巨体、四本腕、腹部に大口。常に涎を垂らしている。

5. 《千眼の魔将》ヴァルナ
容姿:痩せ細った老人。全身に無数の眼が浮かぶ異形。

6. 《血翼の魔将》ラミエル
容姿:黒翼を持つ妖艶な美女。赤黒い羽根に血の模様。

7. 《奈落の魔将》ダゴン
容姿:十数メートルの石膚巨人。半面仮面を被り、鎖を引きずる。
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