地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

文字の大きさ
64 / 150
61~70

純白の黒い噂

しおりを挟む
 ある日のこと、夜の酒場でこんな噂話が飛び交っていた。

「……おい、聞いたか?」
 木製のジョッキを傾ける冒険者が、隣に座る仲間に声を潜めた。

「何をだ?」

「王都の地下牢にいたはずの、あの『純白の剣』の三人が――消えたらしい」

 仲間が思わず息を呑む。
「ああ、聞いた聞いた……牢から逃げたってな。あいつら、リンカを売った裏切り者だろう」

 リンカが純白の剣の元メンバーだという事は既に周知の事実となっている。
 未だに銀狐族であることは知られていないものの、仲間に裏切られてセージに救われた一連の流れは、一つの美談として広まっていた。

「違ぇんだよ。牢の中から、忽然と姿が消えたって話だ。看守は殺されたそうだ」

 酒場のざわめきが一瞬やむ。
 誰もが眉をひそめ、重苦しい空気が広がった。

「……教団か」
 ぽつりと呟く声がした。だが、その言葉を口にした冒険者はすぐに口を噤み、周囲を気にするように目を泳がせる。





 その数日後、同じ酒場ではこんな話がされていた。

「なあ、知ってるか?」
「王都から黒い馬車を見たって。真夜中に、荷馬車も馬も影みたいに黒かったってさ」
「行き先は……こっちの方向だって?」

「縁起でもねえな」
「ったく、教団絡みじゃねえといいんだが……」

 広場のあちこちで、不吉な噂が囁かれていた。



 砂塵を巻き上げて進む三つの影。
 鎧に身を包んだハーカルが先頭に立ち、背後には盾を構えるベガルト、虚ろな瞳のシェリル。

 彼らの纏う気配は、かつて冒険者だった頃の面影を完全に失っていた。
 ――ただの「教団の尖兵」。
 町を破壊するための兵器に過ぎなかった。


「なんだか最近、冒険者が妙に減ってない?」
「依頼を受けても戻ってこない者もいるって……」
「まさか、町まで巻き込まれるんじゃ……」

 広場の人々が小声で噂を交わす。
 市場の喧騒は、どこか落ち着かない。
 冒険者達も、妙に神経を尖らせていた。


 ◇◇◇

 僕らはトトルムさんから緊急の呼び出しを受けていた。
 この頃ダータルカーン周辺で出没する奇妙な一団いるという噂が流れていたのだ。

「――以上が、町に流れている噂です」
 トトルムさんが報告を締めくくると、重苦しい沈黙が室内を支配した。

 王都の牢獄から忽然と姿を消した「純白の剣」の三人。
 それがただの失踪でなく、闇に連れ去られた末に「尖兵」と化した――そんな不穏な情報が、冒険者達の間で囁かれていた。

「……彼らは、間違いなくこちらに向かっています」
 トトルムさんの声は硬い。

「このダータルカーンを標的にする理由は不明です。教団の影が関わっている可能性は高いでしょう」

 リンカが拳を握る。
「やっぱり……あの三人なのね。ハーカル達が……」
 声が震えた。幼馴染みだった過去を思えば、無理もない。

「リンカ……」

 僕はそっと肩に手を置いた。

「今は感情より現実だ。もし本当に尖兵として現れるなら……僕らが立ちはだかるしかない」

 ルミナスは頷き、低く呟く。
「セージ、戦う。ルミナス、手加減しない」

 セレスは唇を噛みしめ、両手を胸に当てていた。
「わたくし……彼らを直接知っているわけではありません。けれど、教団に利用され、人としての心を失っているのなら……救いは、剣の先にしかないのですね」

「正式に依頼を出しましょう。ギルドとしても放置はできません。尖兵の襲来は町にとって重大な脅威となるでしょう。討伐か、せめて足止めをする必要がある」

 受付嬢も不安げに口を開く。
「もし戦うことになるなら、セージさん達の力が必要です。……正直、他の冒険者じゃ太刀打ちできません」

 室内に視線が集まる。
 僕は深く息を吐き、静かに頷いた。

 元の純白の剣の力であれば大した事はない。だが、教団や闇ギルドが関わっている以上、普通の状態ではないはずだ。

「受けます。仲間と一緒に」

 リンカが決意を示す。
「ええ、やりましょう」
 ルミナスは炎を指先に揺らす。
「ルミナス、燃やす。敵、消す」
 セレスも強い眼差しを向け、胸に手を添えた。
「わたくしも……癒しの力で、皆さまを支えます」

 トトルムさんが地図を広げる。
「奴らが来るとすれば、北の街道でしょう。ギルド長、迎撃の準備を整えておきなさい」
「分かりました。報酬に関しては」
「惜しみなく出せ」

「はい。ではすぐに通達を」

「僕らもすぐに準備します」
 僕は短く答えた。

「よろしくお願いします。噂が本当であれば、元の彼らとは比べものにならない強さとなっているでしょう」

 外では、夜風が窓を叩く。
 嵐の前の静けさのように、町全体が不気味に沈黙していた。

 その時、突如としてギルド職員が僕らが会議をしている室長室へと乱入してくる。

「何事だっ。会議中だぞ」

 ギルド長が怒鳴る事にもひるまず、青ざめた男性職員が全身に汗を掻きながら驚愕の事実を口にする。

「大変ですっ! 北の街道から突如としてモンスター軍団が出現ッ! 数が多すぎて全体数が分からないほどだと報告がっ」

「な、なんだとっ!」

「現在ダータルカーン全ての冒険者ギルドに国家よりの緊急討伐招集が掛けられています」

「なんと言うことだ。こうなっては仕方が無い。ギルド長、他のギルドと連携して全ての冒険者に武器や防具の貸し出しも無償で行なってよい。ネコババする者も出てくるだろうが、責任は問わぬと伝えろ」

「わ、分かりました」

「こうなっては四の五の言ってはおられん。ダータルカーンにある全てのギルドに連絡を入れて協力を仰げ。商会で扱う鍛冶屋を総動員して武器を調達するんだ。途轍もなくイヤな予感がする」


 トトルムさんの見たことがないほどの厳しい口調と険しい顔に僕らの気も引き締まる。

「セージさん、こうなってはあなた方に頼るより他はありません。どうか、このダータルカーンをお守りください」

「ええ、分かってます。僕らにとっても因縁の相手です。死力を尽くします」

 敵勢が街に到達するまではあとひと晩あるとのことだ。

 僕らは急いで戦いの準備をすることにした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

処理中です...