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第1章 鬱ゲー転生で即決断
第4話「放課後デートと、現われ始めた悪」
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「今日は……帰りに寄り道しない?」
真白が小さな声で問いかけてきた。
さっき、神崎玲央とすれ違ったばかり。
その直後だからか、真白の横顔はわずかに強張っていた。
唇を噛んで、不安を押し隠そうとしているようにも見える。
(……やっぱり、あの男の存在が怖いんだろうな)
原作ゲームで、真白は何度も追い詰められた。
きっと彼女自身も本能的に察している――神崎玲央は近づけば危険だ、と。
けれど、そんな不安の奥にある瞳は、俺を真っ直ぐに見ていた。
そこにはただ怯えだけじゃなく、確かに“甘え”と“期待”が宿っている。
――「隣にいてくれるよね?」と、無言で訴えているように。
俺は迷わず答えた。
「もちろん。どこ行く?」
真白の表情がほんの少しだけ和らぐ。
「……駅前のクレープ屋さん」
「いいね。奢るよ」
「えっ、ほ、本当に? じゃあ……一番高いやつにしちゃおうかな」
冗談めかして笑った真白の顔から、硬さが溶けていく。
その笑顔を見た瞬間、胸の奥に強い決意が芽生えた。
(不安を抱かせるくらいなら、俺が全部払拭する。
甘えたいときは、どんなときでも受け止める。
期待してくれるなら、その期待に必ず応えてみせる)
俺は心の中で、静かにそう誓った。
なんでだろうか。俺はこんなに勇気のある男だったのだろうか。
真白を守るって心に誓う度に、後から後から勇ましい気持ちが溢れてくるようだ。
駅前の並木道。
放課後の学生たちで賑わう中、俺と真白は並んでクレープを頬張る。
「ん……やっぱりチョコとバナナは最強だね」
「俺はイチゴと生クリーム派」
「わ、甘党だ」
笑い合うそのひとときが、胸の奥をじんわりと満たしていく。
(……これだ。俺がずっと欲しかったものは)
画面の向こうで眺めるしかなかった青春。
テキストウィンドウの中でしか笑わなかったヒロイン。
そこに手を伸ばしても届かず、ただ切なくコントローラーを握りしめるしかなかった俺。
けれど今は違う。
真白は、確かに俺の隣にいて、同じクレープを頬張りながら笑っている。
その笑顔はCGでも立ち絵でもない。温度と息づかいを持った、本物の笑顔だ。
(ゲームの中で何度も求めてやまなかった現実が――今ここにある)
胸が熱くなり、視界がにじむ。
これ以上に幸せな時間があるだろうか。
「ねえ」
ふと真白が声を潜める。
「こうして歩いてると……ほんとに恋人同士なんだなって思う」
「……俺も。毎日が夢みたいだ」
まだ数日なのに、そう思えて仕方ない。
その言葉に、真白の耳まで赤く染まった。
恥ずかしそうに俯きながらも、そっと俺の手を探してくる。
握り返した瞬間――彼女の微笑みが、柔らかく俺を包み込んだ。
(……守りたい。絶対に、この日常を)
胸の奥に、強い想いが込み上げる。
彼女が笑ってくれるなら、俺はなんだってできる。
前世で逃げてばかりだった俺とはもう違う。
だが――頭の片隅に、どうしても消えない影があった。
(神崎玲央……)
ゲームの中で幾度となく味わった、あの強制イベント。
無理やり腕を掴まれ、泣きながら抗う真白。
それでもシナリオは進行し、選択肢もなく、ただ「NTRイベント」が淡々と流れていく。
――俺は画面越しに見ていることしかできなかった。
どれだけコントローラーを握りしめても、テキストを飛ばすことしかできない。
「やめろ」と叫んでも届かない。
あのときの胸を抉られるような悔しさと無力感は、今でも生々しく残っている。
本当はこうして、手を伸ばしたかった。
涙を拭いてやりたかった。
「俺が守る」と叫んで、彼女を抱きしめたかった。
それが敵わない現実に打ちのめされ、ただ画面の前で悔しさに唇を噛むしかなかった。
――だからこそ、今度は違う。
今はもう、俺の手は届く。
真白は隣にいて、俺の手を強く握り返してくれる。
なら、もう二度と後悔なんてさせはしない。
「……真白」
「ん?」
「これからも、ずっと一緒に帰ろうな」
「……うん」
真白は少し驚いたように瞬きをしてから、笑顔を浮かべて頷いた。
その笑顔を守ると誓いながら、俺は彼女の手を強く握った。
昼休み。
教室のざわめきは、どこか昨日までとは違っていた。
「ねぇねぇ、結城ってやっぱ彼氏持ちだったんだ~!」
「ショックだわ……高嶺の花だと思ってたのに!」
「いやむしろお似合いだろ。二人とも美男美女だしな」
真白が席を立ち、弁当箱を手に俺の机の隣に座ると――
女子たちの黄色い歓声が一気に高まった。
「ちょっ、真白ちゃん! 堂々と隣でお昼!?」
「なにそれ公開ラブラブじゃん!」
「キャーーーー!」
男子の方からは呻き声が上がる。
「ぐぅ……俺のアイドルが……」
「くそ、目の前でいちゃつかれるの辛すぎる……」
俺は居心地の悪さに身を縮めたが、真白は自然体で弁当を広げ、
「はい、これ。卵焼き作りすぎちゃったから」
と俺の箸にそっと一切れを乗せてくる。
「お、おい真白……!」
「だって彼氏でしょ? これくらい普通だよ」
にこりと微笑む。
芸術品のように整ったその笑顔に、教室中の空気が一瞬止まり、次の瞬間爆発した。
「ぎゃーーーー! 今の見た!?」
「尊い! 眼福!!」
「うらやま死する!!」
(……やばい。ここ、もはや昼ドラの撮影現場か?)
そんなドタバタに巻き込まれていると――
「おーおー、相変わらず賑やかだな」
背後から軽い声が響いた。
振り返ると、廊下から神崎玲央が入ってくる。
制服を着崩し、余裕の笑顔を浮かべながら手を振る仕草。
「神崎先輩!」
「今日もかっけぇ~!」
女子たちが一斉に声を上げる。
男子ですら「まぁ確かにイケメンだよな……」と小声で呟くほど。
玲央は人気者らしく、自然に人垣をかき分けて教室に入ってきた。
そして――俺と真白を見つけると、にやりと笑う。
「やぁ、真白ちゃん。お昼一緒に食べよっかと思ったけど……もう“相手”がいたか」
軽口に混じる、妙な圧。
クラスメイトたちはただ「おちゃらけた先輩」と受け取って笑っているが、
俺だけは違う。
その視線の奥に潜む黒さを、ゲームで嫌というほど思い知らされていた。
(また来やがったな……神崎玲央)
真白が一瞬、手を止めて視線を伏せる。
俺はその手をそっと握り返し、毅然とした声で答えた。
「すみません、先輩。真白は、俺と一緒にいるんで」
一瞬、玲央の目が細められる。
けれどすぐに爽やかな笑みに戻り、肩をすくめて見せた。
「へぇ……いいじゃんいいじゃん。青春ってやつだな」
軽やかな声色。
だが俺の背筋には、冷たい汗が伝っていた。
「でさー、真白ちゃん」
神崎玲央は、当然のように俺たちの隣に椅子を引き寄せた。
制服を着崩し、余裕の笑みを浮かべる仕草は“人気者の先輩”そのもの。
クラスの女子たちは「きゃー、神崎先輩!」と目を輝かせ、男子ですら羨望混じりに彼を見ていた。
「真白ちゃんってさ、後輩の中でも評判いいんだよ。可愛いし、気配りできるし」
「……そ、そうなんですか?」
真白は困ったように笑って、視線を逸らす。
玲央はその一瞬の隙を見逃さない。
軽い調子を保ちながらも、じわりと距離を詰める。
外から見ればただの世間話。
けれど――俺にはわかる。
(……こいつは狙ってる。真白だけじゃない、“俺を試す”つもりだ)
「今度さ、ちょっと一緒に――」
「ダメです」
俺は食い気味に遮った。
「……お?」
玲央の口角がわずかに上がる。
クラスの空気は一瞬止まり、すぐにざわめきで満ちた。
「うわー、主人公やるな!」
「彼氏の宣言きたぞ!」
「惚気爆弾落ちたー!」
黄色い歓声と男子の呻きが飛び交う中、俺ははっきりと続ける。
「真白は、俺の彼女です。放課後も、休日も、全部一緒に過ごす予定で埋まってますから」
「……っ!」
真白の頬が一気に赤く染まり、俯いたまま袖をぎゅっと握る。
「……うん。私、彼女だから」
教室中が一層騒がしくなった。
だが俺の視線は、ただ一人の男に向いていた。
玲央。
彼は笑っていた。
爽やかで、人懐っこく、誰もが惹かれる“人気者の顔”で。
だがその視線だけは違った。
俺にだけ向けられる――蛇が獲物を値踏みするような、冷たく湿った光。
(うわ……気持ち悪ぃ……)
皮膚を這うような悪寒。
あの視線を受け止められるのは、きっと俺だけだ。
クラスの誰も、彼の裏の顔になど気づきはしない。
「そっか。まぁ、そういうことなら――お幸せに?」
玲央は肩をすくめ、軽口を投げて席を立った。
その背中を見送るクラスメイトたちは「やっぱいい人だなぁ」なんて笑っている。
……だが俺にはわかる。
さっき俺に向けられた視線は、「これで終わりじゃない」と言っていた。
(やっぱり、こいつは敵だ。絶対に油断できない)
真白の手を握る力を強めながら、俺は心の中で改めて誓った。
――絶対に、この日常を守り抜く。
真白が小さな声で問いかけてきた。
さっき、神崎玲央とすれ違ったばかり。
その直後だからか、真白の横顔はわずかに強張っていた。
唇を噛んで、不安を押し隠そうとしているようにも見える。
(……やっぱり、あの男の存在が怖いんだろうな)
原作ゲームで、真白は何度も追い詰められた。
きっと彼女自身も本能的に察している――神崎玲央は近づけば危険だ、と。
けれど、そんな不安の奥にある瞳は、俺を真っ直ぐに見ていた。
そこにはただ怯えだけじゃなく、確かに“甘え”と“期待”が宿っている。
――「隣にいてくれるよね?」と、無言で訴えているように。
俺は迷わず答えた。
「もちろん。どこ行く?」
真白の表情がほんの少しだけ和らぐ。
「……駅前のクレープ屋さん」
「いいね。奢るよ」
「えっ、ほ、本当に? じゃあ……一番高いやつにしちゃおうかな」
冗談めかして笑った真白の顔から、硬さが溶けていく。
その笑顔を見た瞬間、胸の奥に強い決意が芽生えた。
(不安を抱かせるくらいなら、俺が全部払拭する。
甘えたいときは、どんなときでも受け止める。
期待してくれるなら、その期待に必ず応えてみせる)
俺は心の中で、静かにそう誓った。
なんでだろうか。俺はこんなに勇気のある男だったのだろうか。
真白を守るって心に誓う度に、後から後から勇ましい気持ちが溢れてくるようだ。
駅前の並木道。
放課後の学生たちで賑わう中、俺と真白は並んでクレープを頬張る。
「ん……やっぱりチョコとバナナは最強だね」
「俺はイチゴと生クリーム派」
「わ、甘党だ」
笑い合うそのひとときが、胸の奥をじんわりと満たしていく。
(……これだ。俺がずっと欲しかったものは)
画面の向こうで眺めるしかなかった青春。
テキストウィンドウの中でしか笑わなかったヒロイン。
そこに手を伸ばしても届かず、ただ切なくコントローラーを握りしめるしかなかった俺。
けれど今は違う。
真白は、確かに俺の隣にいて、同じクレープを頬張りながら笑っている。
その笑顔はCGでも立ち絵でもない。温度と息づかいを持った、本物の笑顔だ。
(ゲームの中で何度も求めてやまなかった現実が――今ここにある)
胸が熱くなり、視界がにじむ。
これ以上に幸せな時間があるだろうか。
「ねえ」
ふと真白が声を潜める。
「こうして歩いてると……ほんとに恋人同士なんだなって思う」
「……俺も。毎日が夢みたいだ」
まだ数日なのに、そう思えて仕方ない。
その言葉に、真白の耳まで赤く染まった。
恥ずかしそうに俯きながらも、そっと俺の手を探してくる。
握り返した瞬間――彼女の微笑みが、柔らかく俺を包み込んだ。
(……守りたい。絶対に、この日常を)
胸の奥に、強い想いが込み上げる。
彼女が笑ってくれるなら、俺はなんだってできる。
前世で逃げてばかりだった俺とはもう違う。
だが――頭の片隅に、どうしても消えない影があった。
(神崎玲央……)
ゲームの中で幾度となく味わった、あの強制イベント。
無理やり腕を掴まれ、泣きながら抗う真白。
それでもシナリオは進行し、選択肢もなく、ただ「NTRイベント」が淡々と流れていく。
――俺は画面越しに見ていることしかできなかった。
どれだけコントローラーを握りしめても、テキストを飛ばすことしかできない。
「やめろ」と叫んでも届かない。
あのときの胸を抉られるような悔しさと無力感は、今でも生々しく残っている。
本当はこうして、手を伸ばしたかった。
涙を拭いてやりたかった。
「俺が守る」と叫んで、彼女を抱きしめたかった。
それが敵わない現実に打ちのめされ、ただ画面の前で悔しさに唇を噛むしかなかった。
――だからこそ、今度は違う。
今はもう、俺の手は届く。
真白は隣にいて、俺の手を強く握り返してくれる。
なら、もう二度と後悔なんてさせはしない。
「……真白」
「ん?」
「これからも、ずっと一緒に帰ろうな」
「……うん」
真白は少し驚いたように瞬きをしてから、笑顔を浮かべて頷いた。
その笑顔を守ると誓いながら、俺は彼女の手を強く握った。
昼休み。
教室のざわめきは、どこか昨日までとは違っていた。
「ねぇねぇ、結城ってやっぱ彼氏持ちだったんだ~!」
「ショックだわ……高嶺の花だと思ってたのに!」
「いやむしろお似合いだろ。二人とも美男美女だしな」
真白が席を立ち、弁当箱を手に俺の机の隣に座ると――
女子たちの黄色い歓声が一気に高まった。
「ちょっ、真白ちゃん! 堂々と隣でお昼!?」
「なにそれ公開ラブラブじゃん!」
「キャーーーー!」
男子の方からは呻き声が上がる。
「ぐぅ……俺のアイドルが……」
「くそ、目の前でいちゃつかれるの辛すぎる……」
俺は居心地の悪さに身を縮めたが、真白は自然体で弁当を広げ、
「はい、これ。卵焼き作りすぎちゃったから」
と俺の箸にそっと一切れを乗せてくる。
「お、おい真白……!」
「だって彼氏でしょ? これくらい普通だよ」
にこりと微笑む。
芸術品のように整ったその笑顔に、教室中の空気が一瞬止まり、次の瞬間爆発した。
「ぎゃーーーー! 今の見た!?」
「尊い! 眼福!!」
「うらやま死する!!」
(……やばい。ここ、もはや昼ドラの撮影現場か?)
そんなドタバタに巻き込まれていると――
「おーおー、相変わらず賑やかだな」
背後から軽い声が響いた。
振り返ると、廊下から神崎玲央が入ってくる。
制服を着崩し、余裕の笑顔を浮かべながら手を振る仕草。
「神崎先輩!」
「今日もかっけぇ~!」
女子たちが一斉に声を上げる。
男子ですら「まぁ確かにイケメンだよな……」と小声で呟くほど。
玲央は人気者らしく、自然に人垣をかき分けて教室に入ってきた。
そして――俺と真白を見つけると、にやりと笑う。
「やぁ、真白ちゃん。お昼一緒に食べよっかと思ったけど……もう“相手”がいたか」
軽口に混じる、妙な圧。
クラスメイトたちはただ「おちゃらけた先輩」と受け取って笑っているが、
俺だけは違う。
その視線の奥に潜む黒さを、ゲームで嫌というほど思い知らされていた。
(また来やがったな……神崎玲央)
真白が一瞬、手を止めて視線を伏せる。
俺はその手をそっと握り返し、毅然とした声で答えた。
「すみません、先輩。真白は、俺と一緒にいるんで」
一瞬、玲央の目が細められる。
けれどすぐに爽やかな笑みに戻り、肩をすくめて見せた。
「へぇ……いいじゃんいいじゃん。青春ってやつだな」
軽やかな声色。
だが俺の背筋には、冷たい汗が伝っていた。
「でさー、真白ちゃん」
神崎玲央は、当然のように俺たちの隣に椅子を引き寄せた。
制服を着崩し、余裕の笑みを浮かべる仕草は“人気者の先輩”そのもの。
クラスの女子たちは「きゃー、神崎先輩!」と目を輝かせ、男子ですら羨望混じりに彼を見ていた。
「真白ちゃんってさ、後輩の中でも評判いいんだよ。可愛いし、気配りできるし」
「……そ、そうなんですか?」
真白は困ったように笑って、視線を逸らす。
玲央はその一瞬の隙を見逃さない。
軽い調子を保ちながらも、じわりと距離を詰める。
外から見ればただの世間話。
けれど――俺にはわかる。
(……こいつは狙ってる。真白だけじゃない、“俺を試す”つもりだ)
「今度さ、ちょっと一緒に――」
「ダメです」
俺は食い気味に遮った。
「……お?」
玲央の口角がわずかに上がる。
クラスの空気は一瞬止まり、すぐにざわめきで満ちた。
「うわー、主人公やるな!」
「彼氏の宣言きたぞ!」
「惚気爆弾落ちたー!」
黄色い歓声と男子の呻きが飛び交う中、俺ははっきりと続ける。
「真白は、俺の彼女です。放課後も、休日も、全部一緒に過ごす予定で埋まってますから」
「……っ!」
真白の頬が一気に赤く染まり、俯いたまま袖をぎゅっと握る。
「……うん。私、彼女だから」
教室中が一層騒がしくなった。
だが俺の視線は、ただ一人の男に向いていた。
玲央。
彼は笑っていた。
爽やかで、人懐っこく、誰もが惹かれる“人気者の顔”で。
だがその視線だけは違った。
俺にだけ向けられる――蛇が獲物を値踏みするような、冷たく湿った光。
(うわ……気持ち悪ぃ……)
皮膚を這うような悪寒。
あの視線を受け止められるのは、きっと俺だけだ。
クラスの誰も、彼の裏の顔になど気づきはしない。
「そっか。まぁ、そういうことなら――お幸せに?」
玲央は肩をすくめ、軽口を投げて席を立った。
その背中を見送るクラスメイトたちは「やっぱいい人だなぁ」なんて笑っている。
……だが俺にはわかる。
さっき俺に向けられた視線は、「これで終わりじゃない」と言っていた。
(やっぱり、こいつは敵だ。絶対に油断できない)
真白の手を握る力を強めながら、俺は心の中で改めて誓った。
――絶対に、この日常を守り抜く。
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