前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第1章 鬱ゲー転生で即決断

第10話「偶然という名の罠」

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 校門を離れて数分。
 喧騒から切り離された夜道は驚くほど静かで、街灯のオレンジ色だけが二人の影を伸ばしていた。
 遠くでは花火のような歓声がまだ響いているが、ここにはもう俺と真白しかいない。

「今日は……本当にありがとう」
 真白が歩幅を合わせ、少しだけ俺に寄り添った。
「ずっと隣にいてくれて、安心できた」

「当然だろ。……彼氏なんだから」
 軽口を叩いたつもりだったが、自分でも声が震えていたのに気づく。

「……ふふっ。そうだね」
 真白は微笑み、黒髪を風になびかせた。
 その笑顔に、胸の奥の重さが少しだけ和らぐ。

 道端の自販機の明かりが彼女の横顔を照らし、頬に淡い光を落とす。
 その光景に見惚れながら、ふと口をついた。

「……もし将来も、こんなふうに隣を歩いていられたらいいな」
「えっ……」
 真白の足取りが一瞬止まり、顔が真っ赤になる。
「な、なにそれ……! 急に言うから、心臓止まるかと思った」

 慌てる仕草が可愛くて、思わず笑ってしまう。
 だが同時に、胸の奥で鋭い感情が疼いた。

(……この温もりを、あいつに触れさせるわけにはいかない。
 クラフェスで見せた蛇みたいな目……思い出すだけで、腹の底が煮え立つ)

 俺は歩きながら、彼女の手を自然に握った。
 真白は驚きつつも、拒むことなく指を絡め返してくれる。
 その小さなぬくもりに、守りたい気持ちがさらに強くなった。

 ……ただ。

 角を曲がった先、街灯の影の中に立つ人影が一瞬見えた気がした。
 すぐに消えたが、ぞくりと背筋が冷える。
 真白は気づかず、嬉しそうに俺の手を握ったまま歩いている。

(気のせい、じゃないよな……)

 甘い時間の裏で、確かに何かが動き出している。
 祭りの余韻が残る夜道に、別の足音が忍び寄っていた。

 商店街のアーケードを抜けると、祭りの提灯がまだいくつも灯っていた。
 屋台は片付けられ始めていたが、漂う甘い匂いや笑い声は、クラフェスの余韻を思わせた。

「なんだか……まだ祭りが続いてるみたいだね」
 真白が笑い、手を繋いだまま俺を見上げる。
 街灯の下で、その瞳は柔らかく輝いていた。

「そうだな。……でも、もう少し静かなほうがいいかも」
「え?」
「二人だけで、ゆっくり話したいから」

 言ってから、顔が熱くなるのを感じた。
 真白は驚いたように瞬きをし、すぐに頬を染めて笑った。
「……わたしも」

 その言葉だけで胸が満たされる。
 この瞬間がずっと続けば――そう願った。

 だが。

「おー、偶然だな」
 軽やかな声が背後から響いた。

 振り向けば、神崎玲央が片手をポケットに突っ込み、街灯に照らされて立っていた。
 制服の上着を無造作に羽織り、相変わらずの爽やかな笑みを浮かべている。

「二人で帰りか? クラフェスお疲れさん」
「……先輩」
 真白の声がわずかに強張る。

(……出やがったな。偶然なんて、絶対嘘だろ)

 胸の奥に苛立ちが走る。
 人通りのある街中、外面だけは“頼れる先輩”を演じているから、誰も疑いはしない。
 けれど俺にはわかる。
 ――あの蛇の視線。
 さっき校舎で見た、冷たく粘つく光が今も俺を値踏みしている。

「真白ちゃん、今日は本当に頑張ったな。クラスの子からも評判聞いたよ」
 玲央は何気ない調子で言い、真白に一歩近づいた。
 周囲の通行人にはただの労いにしか見えない。
 だが俺の心臓はどくどくと早鐘を打ち始める。

(……鬱陶しい。
 なぜわざわざ、二人の時間に割り込んでくる)

 俺は真白の肩を抱くようにして、一歩前に出た。
「ありがとうございます。でも今日は俺と真白で帰りますので」

 玲央は一瞬だけ目を細め、すぐににやりと笑った。
「おー、仲いいな。じゃ、邪魔はしないさ」

 口調は軽い。
 だがその視線は――「次はもっと深く踏み込む」と告げているように思えた。

 真白の手の温もりを確かめながら、俺は唇を噛みしめる。
(……どこまででもついてくる気か。いいだろう。絶対に守り抜いてやる)

 人混みの喧騒の中、甘い余韻と冷たい影が、確かに交錯していた。


◇◇◇

 クラフェスの翌朝、教室はまだ熱気の余韻に包まれていた。
 机を寄せ合い、スマホで撮った写真を見せ合ったり、感想を語り合ったり。
「真白ちゃん、昨日ほんと可愛かった!」
「看板娘サマサマだな!」
 あちこちから飛ぶ声に、真白は恥ずかしそうに笑っていた。

(……わかってたことだけど、やっぱり真白は特別なんだ)

 そんな雰囲気に包まれていたとき。

「おはよう」
 低い声が背後から響いた。
 神崎玲央が教室に現れた。
 片手をポケットに突っ込み、いつもの爽やかな笑みを浮かべて。

「昨日はお疲れ。お前らのクラス、すごかったな」
 玲央が入ってきただけで、教室がざわめく。
「先輩!」「また来てくれたんですか!」
 クラスの空気が一気に明るくなる。

 玲央はにこやかに応じながら、真白の席の前で立ち止まった。
「真白ちゃん、昨日の接客ほんと評判よかったぞ。
 後夜祭で声かけられなかったから……これ、LINE交換しとこうか」

「えっ……」
 真白の瞳が揺れる。
 断りたい。でも、相手は先輩。みんなの視線もある。
 彼女の優しさと気弱さが、簡単に背中を押せなくしている。

(……やっぱり来やがったか。こうやって“自然に”距離を詰めようとしてる)

 俺は立ち上がり、笑顔を貼りつけて玲央の前に割り込んだ。
「すみません、真白のスケジュールは俺が把握してるんで。
 何かあれば、俺に言ってもらえれば十分です」

 教室の空気が一瞬止まる。
 玲央は一拍だけ黙り、そして軽く肩をすくめて笑った。
「はは、またまた。……独占欲強いな、彼氏くん」

「そういうわけじゃありませんよ。
 ただ――真白を困らせるようなことは、遠慮してください」

 玲央の目が細められる。
 周囲には爽やかな笑みにしか見えないが、俺には粘つく光がはっきりと映った。

「……なるほど。大事にしてるんだな」
 玲央は低く呟き、笑顔のまま踵を返した。

 クラスのざわめきが再び戻り、何事もなかったかのように教室が賑わう。
 だが俺の心臓はまだ早鐘を打っていた。

(……これからは、もっと露骨に仕掛けてくる。
 気を抜いた瞬間に――必ず狙ってくるはずだ)

 隣で不安げに俺の袖をつまむ真白の手を、俺は強く握り返した。

 ◇◇◇

 放課後の昇降口。
 一日の喧騒が落ち着き、生徒たちが次々に靴を履き替えていく。
 窓から差し込む夕陽が赤く床を染め、空気はどこかしんみりしていた。

「……お待たせ」
 真白が靴を履き替えて俺の隣に立つ。
 黒髪が夕焼けを受けて光り、ほんのり赤く染まっている。

「よし、帰ろうか」
 俺がそう言った瞬間だった。

「――あれ、奇遇だな」
 昇降口の柱に寄りかかっていたのは、神崎玲央だった。
 ポケットに手を突っ込み、まるで自然な流れのように笑みを浮かべる。

「真白ちゃん、一緒に帰らないか? 昨日も疲れてただろ。途中まで送ってやるよ」

「え……」
 真白の瞳が揺れる。
 断りたい。けれど相手は先輩。しかも周囲にはまだ人がいる。
 彼女の優しさと気弱さが、声を詰まらせていた。

(……やっぱり。わざわざ“偶然”を装って待っていやがったか)

 胸の奥で怒りが弾ける。
 俺は自然を装って一歩前に出た。

「すみません、先輩。今日は俺と真白で一緒に帰る予定なんで」
「おや、またガードが固いなぁ」
 玲央は笑うが、瞳の奥が一瞬だけ細められる。

「心配いりません。俺がついてますから」

 短く返した言葉に、真白が小さく息を呑む。
 玲央は一拍置いて肩をすくめ、爽やかに笑った。
「そうか。なら邪魔はしないさ」

 そう言い残し、足音を軽く響かせて去っていく。

 昇降口を出たあと、真白が小さな声で呟いた。
「……断れなかった。あんなふうに言われると、どうしても……」
 声が震えていた。

「大丈夫だ」
 俺は彼女の手を握った。
「俺が隣にいる限り、絶対に好きにさせない」

 真白は驚いたように瞬きをし、やがて安堵したように微笑んだ。
 その笑顔に、胸の奥の怒りが静かに熱へと変わっていく。

(……でも、これで終わるはずがない。
 次はもっと大胆に――仕掛けてくる)

 夕焼けに染まる道を並んで歩きながら、俺は強く唇を噛みしめた。
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