前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第1章 鬱ゲー転生で即決断

第11話「休日への誘い」

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 金曜の放課後、教室は週末の解放感でざわめいていた。
「ボウリング行こうぜ!」
「カラオケどう?」
「遊園地もいいな!」
 クラフェスをやりきった後のテンションは高く、笑い声が絶えない。

 その賑わいの中で――

「そうだ、真白ちゃん」
 背後からかけられた声に、空気がすっと変わった。
 神崎玲央。
 ポケットに片手を突っ込み、教室のドア枠にもたれながら微笑んでいた。

「休日、よかったら一緒に出かけないか? 買い物ついでに美味い店も知ってるし」
「えっ……」
 真白の瞳が揺れる。
 周囲の女子が「きゃー!」「真白ちゃんいいな!」と囃し立てる。

 玲央はにこやかに続けた。
「もちろんグループでもいいんだ。安心して楽しめるようにさ」

(……いや、絶対に狙ってる。わざわざ真白を名指しする時点で、下心丸出しだろ)

 胸の奥が煮え立つ。周りの奴らも彼氏持ちに堂々と声かけしてくる男を変に思わないのだろうか。
 だが俺は息を整え、笑顔を貼り付けて立ち上がった。

「いいですね。真白と一緒なら俺も行きますよ」

 一瞬、玲央の目が細められる。
 すぐに爽やかな笑みに戻るが、その奥で粘つく光が確かに閃いた。

「おー、彼氏くんも来るか。……なら賑やかでいいな」

「はい。真白を楽しませたいですから」
 俺は自然を装いつつも、視線で牽制を返す。

 真白は戸惑いながらも、俺の袖を小さくつまんだ。
 その仕草に、わずかに安堵が滲んでいる。

 周囲のクラスメイトは「じゃあみんなで行こう!」「楽しみだな!」と盛り上がり、空気は再び賑やかに戻っていった。
 だが俺と玲央の間だけは、互いの意志を探り合う火花が静かに散っていた。

(……ついに休日まで踏み込んできやがったか。
 いいだろう。どこまでも、俺が真白を守り抜く)

 ◇◇◇

 休日の朝。
 駅前には制服を脱いだクラスメイトたちが集まっていた。
「おー、みんな意外とオシャレだな!」
「いやいや、普段からちゃんと見てよ!」
 笑い声と軽口が飛び交い、空気はクラフェスの続きを思わせるほど賑やかだった。

「おはよう」
 俺の隣に立った真白は、淡い水色のワンピースにカーディガンを羽織っていた。
 黒髪が陽の光を受けて揺れ、その姿は思わず息を呑むほど眩しかった。

「……似合ってる。すごく」
 思わず口にした言葉に、真白は顔を赤らめて俯いた。
「そ、そんなに見ないで……」
 その仕草にクラスメイトが「おー!」「イチャイチャ禁止!」と盛り上がり、駅前は一層騒がしくなる。

(……こういう時間が、ずっと続けばいいのに)

 遊びは映画館から始まり、その後はショッピングモールへ。
 昼食のフードコートも、みんなで笑いながら机を囲んだ。
 真白がソフトドリンクを持ってきてくれただけで、俺の胸は満たされる。
 何でもない一瞬一瞬が、かけがえのない思い出になっていくようだった。

 だが。

「真白ちゃん、荷物多くないか? 俺が持ってやるよ」
 隣に座っていた玲央が、さりげなく手を伸ばした。
 周囲の友人たちは「さすが先輩!」と盛り上がる。

「えっ……でも」
 真白は戸惑い、視線を落とす。

(……出たな。こういう“小さな好意”を積み重ねて、自然に入り込もうって魂胆か)

 俺は間を置かずに立ち上がり、真白の手からバッグを受け取った。
「ありがとな、真白。これくらい俺が持つから」

「あ、うん……!」
 真白は安心したように笑い、玲央の手は宙に浮いたまま引っ込む。

 その一瞬、玲央の目が細まり、冷たい光が閃いた。
 だが次の瞬間には爽やかな笑顔に戻り、「彼氏くん、マメだな」と軽く笑った。

(……ふざけるな。俺が隣にいる限り、一歩も踏み込ませない)

 周囲は何事もなかったかのように笑い合い、休日の楽しさに包まれていた。
 けれど俺だけは、その裏で確実に忍び寄るストーカー野郎の気配を感じていた。


 ◇◇◇

 夕暮れのショッピングモール。
 遊び疲れたクラスメイトたちがベンチに腰かけ、ジュースを飲みながら笑い合っていた。
 休日の一日は賑やかで、楽しくて、あっという間に過ぎていく。

 真白は紙コップを両手で持ちながら、少しだけ疲れた表情を見せていた。
 けれどその横顔は穏やかで、微笑むたびに俺の胸を温かくする。

(……やっぱり、こうして隣にいてくれるだけで幸せだ)

 そんな時間を壊すように、玲央が歩み寄ってきた。
 ポケットに片手を突っ込み、相変わらずの爽やか笑顔。
 だが俺の目には、その笑みがどす黒い欲望の影にしか見えなかった。

「なぁ真白ちゃん、ちょっとこの後寄り道しない? 人混みも落ち着いてきたしさ」
「え……」
 真白の肩がわずかに震える。

 周囲の友人たちは「おー先輩ノリいい!」と笑っている。
 けれど俺には聞こえた――玲央の声の底にある、粘ついた下心が。

(……出たよ、このクソ野郎。人目がある場所で“軽い誘い”を装えば、真白が断れないって知ってやがる。ほんと腐ってる)

 真白は戸惑い、返事を詰まらせた。
 彼女の優しさが、いつだってこういう場面で仇になる。

 俺は迷わず立ち上がった。
「すみません先輩。今日はこれで解散です。真白は俺と一緒に帰りますから」

 玲央の目が細められる。
 だがすぐに爽やかな笑みに戻り、肩をすくめた。
「はは、相変わらずガード固いな。……まぁ、彼氏くんに任せるよ」

 軽口にしか聞こえない。
 だが俺は見逃さない――視線の奥に潜む、蛇のような光を。

(クズめ……笑ってごまかしても、もう正体はバレてんだよ。っていうか周りもいい加減気付け)

 玲央が去ると、真白は小さく息をついた。
「……ごめん。わたし、断れなくて」
「いいんだ。俺がいるから」
 俺は彼女の手を握り、安心させるように微笑んだ。

 夕暮れの街にネオンが灯り始める。
 その光は眩しくも、俺の胸には確かな影を映していた。

(……玲央は、これで終わるはずがない。
 次はもっと強引に――踏み込んでくる)

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