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第1章 鬱ゲー転生で即決断
第13話「矛盾の芽」
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翌日の教室。
いつもの雑談に混じって、玲央の名前がぽつりぽつりと上がり始めていた。
「神崎先輩ってやっぱ優しいよな。昨日も結城さんのこと手伝ってただろ」
「いや、でもなんか強引じゃなかった? 結城、困ってたっぽいし」
同じ場面を見ていたはずなのに、評価は二つに割れていた。
――「優しい」と「強引」の矛盾。
(……出たな。これが玲央のやり口だ。表面だけ取り繕って、都合よく解釈させる)
普通に考えれば単なるDQNだろうに……。あれが尊敬されたり人気を集めたりするのは、やはりここがゲームの世界だからなのか。
俺が机でノートを閉じると、隣の席から声がした。
「ね、昨日のこと……まだ気にしてる?」
振り向くと、そこには白石紗和がいた。
明るい栗色のセミロングに、ぱっちりした目元。
クラスでも朗らかで面倒見がよく、男女ともに話しやすい存在。だけど本当は引っ込み思案でかなり無理をして普段を過ごしている。
ゲームだとそのギャップが人気のヒロインの1人だ。
真白と俺の関係を最初に茶化してきた張本人でもある。
けれど昨日、準備室前でスマホを構えていた彼女は、普段の軽さを一切見せていなかった。
「ちゃんと撮ったんだよ。あんまり綺麗な写真じゃないけど……」
紗和は小声で囁きながら、スマホの画面を俺に見せた。
そこには、壁際に立つ真白と、その前に覆い被さる玲央の姿。
角度も距離も悪いが――“距離感のおかしさ”だけは十分に伝わる。
「ありがとな、紗和」
「別に。……あたし、ああいうの嫌いなの。女の子困らせるのを“優しさ”だなんて言い張る人」
普段なら軽口を叩く彼女が、珍しく真剣な眼差しをしていた。
(……こいつ、意外と芯が強い)
ゲームだとこんな場面はなかったはず。俺が行動した事によって何かが変わっているのだろうか。
そのとき、後ろの席から笑い声が上がった。
「見たかこれ? 神崎先輩のグルチャ!」
スマホを覗き込む数人がざわめいている。
画面にはキャプチャ――
『押せばいけるタイプだろ、あの子』
『マジ、真白ちゃんチョロいかもなw』
日付は昨日。送り主は――神崎玲央。
「え、最悪……」
「“優しい”とか言ってたのに、裏でこんなこと……」
空気がざわりと揺れる。
(……やっぱりだ。狡猾なクズ。自分の本性が透けてきたな)
俺は紗和と視線を交わした。
彼女は口を結び、短く頷く。
「証拠はまだ足りない。でも……崩れるのも、時間の問題かもね」
窓から差し込む陽光の中、教室の空気はじわじわと変わり始めていた。
爽やかに笑う玲央の背中に――疑念という影が差し込み始める。
いいぞ、変わってきた。ゲームの世界の呪縛が綻びつつある。
予感が確信に変わってきている。
◇◇◇
放課後の教室。
帰り支度をする生徒たちの声が遠ざかり、窓から差し込む夕陽が机の上を赤く染めていた。
俺は真白と一緒にノートを片付けていたが、背後から呼ぶ声に振り返った。
「ちょっと、いい?」
白石紗和だった。
彼女はいつもの明るい笑顔ではなく、真剣な眼差しで俺と真白を見ていた。
「……相談、聞いてほしいって子がいるの」
連れて行かれたのは中庭のベンチ。
冷え始めた風に、木の葉がさらさらと鳴っている。
紗和の隣には、緊張で表情を硬くした一年生の女子が座っていた。
肩までの黒髪に、小さな体躯。名札には「佐伯」とある。
「た、大したことじゃないんですけど……」
佐伯は視線を泳がせ、言葉を詰まらせた。
「神崎先輩に、前にちょっと……」
「ちょっと?」
俺が促すと、彼女は勇気を振り絞るように小さく頷いた。
「掃除のあとに呼び止められて……“偉いな”って褒められて……それから、“俺と二人で甘いものでも食べに行かない?”って」
真白の手が小さく震えた。
俺はすぐにその手を握り、安心させるように軽く指を絡める。
(……やっぱりだ。狙いは“断れなさそうな子”)
「そのとき、どうした?」
「……断れなくて、笑ってごまかしました。でも、それから毎日ちょっとずつ声をかけられて……本当に困って……」
佐伯の声が震える。
その横で、紗和が小さく息を吐いた。
「……これで二人目だよ。あたしに打ち明けてくれた子」
「二人目?」
「うん。ほかの子も“似たようなことがあった”って。やっぱり、結城だけじゃない」
真白の大きな瞳が揺れる。
その表情は、俺が何度もゲームの画面で見た“恐怖と諦めの涙”に重なった。
(……あの時は、何度ボタンを押しても救えなかった。主人公の鈍さと愚かさ、弱さ、そして意気地のなさをただ見せつけられるだけで。
でも今は違う。俺はこの現実で――真白を絶対に守れる)
「佐伯さん」
俺は真っ直ぐに声をかけた。
「話してくれてありがとう。大丈夫、もう一人で抱えなくていい。……俺たちが必ず止めるから」
佐伯は驚いたように顔を上げ、それから安堵の色を浮かべた。
「……はい」
その横で真白が小さく呟いた。
「……怖かったよね」
彼女の声は、佐伯と過去の自分自身に向けているようだった。
夕陽が沈み、空が紫に変わっていく。
中庭に吹き込む風は冷たかったが、真白の手の温もりは確かにそこにあった。
(これで確信した。玲央は“偶然”じゃなく、明確な手口で女子を狙っている。
薄皮を剥いでいけば――必ず奴の正体は白日の下に晒される)
やっとだ。ゲームの流れから明らかに外れ始めている。
木々の影が長く伸びる中、俺は心の奥で拳を握った。
次はもっと決定的な一歩を踏み出す。
いつもの雑談に混じって、玲央の名前がぽつりぽつりと上がり始めていた。
「神崎先輩ってやっぱ優しいよな。昨日も結城さんのこと手伝ってただろ」
「いや、でもなんか強引じゃなかった? 結城、困ってたっぽいし」
同じ場面を見ていたはずなのに、評価は二つに割れていた。
――「優しい」と「強引」の矛盾。
(……出たな。これが玲央のやり口だ。表面だけ取り繕って、都合よく解釈させる)
普通に考えれば単なるDQNだろうに……。あれが尊敬されたり人気を集めたりするのは、やはりここがゲームの世界だからなのか。
俺が机でノートを閉じると、隣の席から声がした。
「ね、昨日のこと……まだ気にしてる?」
振り向くと、そこには白石紗和がいた。
明るい栗色のセミロングに、ぱっちりした目元。
クラスでも朗らかで面倒見がよく、男女ともに話しやすい存在。だけど本当は引っ込み思案でかなり無理をして普段を過ごしている。
ゲームだとそのギャップが人気のヒロインの1人だ。
真白と俺の関係を最初に茶化してきた張本人でもある。
けれど昨日、準備室前でスマホを構えていた彼女は、普段の軽さを一切見せていなかった。
「ちゃんと撮ったんだよ。あんまり綺麗な写真じゃないけど……」
紗和は小声で囁きながら、スマホの画面を俺に見せた。
そこには、壁際に立つ真白と、その前に覆い被さる玲央の姿。
角度も距離も悪いが――“距離感のおかしさ”だけは十分に伝わる。
「ありがとな、紗和」
「別に。……あたし、ああいうの嫌いなの。女の子困らせるのを“優しさ”だなんて言い張る人」
普段なら軽口を叩く彼女が、珍しく真剣な眼差しをしていた。
(……こいつ、意外と芯が強い)
ゲームだとこんな場面はなかったはず。俺が行動した事によって何かが変わっているのだろうか。
そのとき、後ろの席から笑い声が上がった。
「見たかこれ? 神崎先輩のグルチャ!」
スマホを覗き込む数人がざわめいている。
画面にはキャプチャ――
『押せばいけるタイプだろ、あの子』
『マジ、真白ちゃんチョロいかもなw』
日付は昨日。送り主は――神崎玲央。
「え、最悪……」
「“優しい”とか言ってたのに、裏でこんなこと……」
空気がざわりと揺れる。
(……やっぱりだ。狡猾なクズ。自分の本性が透けてきたな)
俺は紗和と視線を交わした。
彼女は口を結び、短く頷く。
「証拠はまだ足りない。でも……崩れるのも、時間の問題かもね」
窓から差し込む陽光の中、教室の空気はじわじわと変わり始めていた。
爽やかに笑う玲央の背中に――疑念という影が差し込み始める。
いいぞ、変わってきた。ゲームの世界の呪縛が綻びつつある。
予感が確信に変わってきている。
◇◇◇
放課後の教室。
帰り支度をする生徒たちの声が遠ざかり、窓から差し込む夕陽が机の上を赤く染めていた。
俺は真白と一緒にノートを片付けていたが、背後から呼ぶ声に振り返った。
「ちょっと、いい?」
白石紗和だった。
彼女はいつもの明るい笑顔ではなく、真剣な眼差しで俺と真白を見ていた。
「……相談、聞いてほしいって子がいるの」
連れて行かれたのは中庭のベンチ。
冷え始めた風に、木の葉がさらさらと鳴っている。
紗和の隣には、緊張で表情を硬くした一年生の女子が座っていた。
肩までの黒髪に、小さな体躯。名札には「佐伯」とある。
「た、大したことじゃないんですけど……」
佐伯は視線を泳がせ、言葉を詰まらせた。
「神崎先輩に、前にちょっと……」
「ちょっと?」
俺が促すと、彼女は勇気を振り絞るように小さく頷いた。
「掃除のあとに呼び止められて……“偉いな”って褒められて……それから、“俺と二人で甘いものでも食べに行かない?”って」
真白の手が小さく震えた。
俺はすぐにその手を握り、安心させるように軽く指を絡める。
(……やっぱりだ。狙いは“断れなさそうな子”)
「そのとき、どうした?」
「……断れなくて、笑ってごまかしました。でも、それから毎日ちょっとずつ声をかけられて……本当に困って……」
佐伯の声が震える。
その横で、紗和が小さく息を吐いた。
「……これで二人目だよ。あたしに打ち明けてくれた子」
「二人目?」
「うん。ほかの子も“似たようなことがあった”って。やっぱり、結城だけじゃない」
真白の大きな瞳が揺れる。
その表情は、俺が何度もゲームの画面で見た“恐怖と諦めの涙”に重なった。
(……あの時は、何度ボタンを押しても救えなかった。主人公の鈍さと愚かさ、弱さ、そして意気地のなさをただ見せつけられるだけで。
でも今は違う。俺はこの現実で――真白を絶対に守れる)
「佐伯さん」
俺は真っ直ぐに声をかけた。
「話してくれてありがとう。大丈夫、もう一人で抱えなくていい。……俺たちが必ず止めるから」
佐伯は驚いたように顔を上げ、それから安堵の色を浮かべた。
「……はい」
その横で真白が小さく呟いた。
「……怖かったよね」
彼女の声は、佐伯と過去の自分自身に向けているようだった。
夕陽が沈み、空が紫に変わっていく。
中庭に吹き込む風は冷たかったが、真白の手の温もりは確かにそこにあった。
(これで確信した。玲央は“偶然”じゃなく、明確な手口で女子を狙っている。
薄皮を剥いでいけば――必ず奴の正体は白日の下に晒される)
やっとだ。ゲームの流れから明らかに外れ始めている。
木々の影が長く伸びる中、俺は心の奥で拳を握った。
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