前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第1章　鬱ゲー転生で即決断

第14話「綻びは連鎖し、悪は白日の下に晒される」

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　昼休みの教室。
　弁当を広げる声や、スマホを覗き込む笑い声が混じり合う中、またしても神崎玲央の声が響いた。

「おいおい、みんな。アイツ、独占欲強すぎじゃね？」

　机に肘をつきながら、軽い口調で笑う。こいつ上級生のくせに下級生の教室の机に堂々と座るなよ。友達いないのか？

「結城さんがちょっと誰かと話しただけで、すぐ割り込んでくるんだよ。束縛系彼氏ってやつ？」

「え、そうなの？」
「でも……この前も“真白ちゃん楽しそうじゃなかった”って聞いたよ？」
　男子と女子の声が混ざり、微妙なざわめきが広がる。

（……出たな。今度は俺を悪者に仕立てて、自分を正当化するつもりか）

　真白は弁当箱を持つ手をぎゅっと強ばらせていた。
　俯いた顔は笑顔を作ろうとしているのに、瞳の奥は不安に揺れている。

　俺が声をかけようとしたそのとき――

「ねえ、これ……見た？」
　廊下側の机に集まっていた女子の一人がスマホを掲げた。

　そこには、グループチャットのスクリーンショット。
　送り主の名前は――神崎玲央。

『押せばいけるタイプだろ、あの子』
『チョロいかもな、真白ちゃんｗ』

　一瞬で空気が凍った。
　次の瞬間、低いざわめきが波紋のように広がっていく。

「……なにこれ、最低じゃん」
「結城さんにあんなこと言ってたの？」

「裏でこんなこと書いてたのかよ……」

「ち、違う！　冗談で言っただけだ！」
　玲央が慌てて笑みを取り繕う。
「ノリだろ、ノリ！　真に受けるなって」

　だがその笑顔は、もう誰の心にも届かなかった。
　女子たちは一斉に眉をひそめ、男子たちも「冗談にしてはキモい」と冷たい視線を送る。

（……ほら見ろ。矛盾だらけだ。
　“優しい先輩”だと持ち上げる声と、“最低だ”と突き放す声が同時に生まれる。
　綻びはもう隠せない）

　真白は唇を噛みしめ、震える声で俺の袖を引いた。
「……わたし、本当に怖い」
「大丈夫」
　俺は即座に答え、彼女の手を包み込む。
「もう周りも気づき始めてる。玲央の仮面は長くはもたない」

　窓の外では、春の陽射しが白く照っていた。
　その光の下で、教室の空気は少しずつ変わり始める。
　玲央の人気と評判に、確実にヒビが入っていく音が聞こえるようだった。

（次は……決定的な証言だ。俺が手を下さなくても、奴の過去の被害は必ず浮かび上がる）

　◇◇◇

　昼休みの中庭は、いつものように明るい笑い声で満ちていた。
　春の陽射しがベンチや芝生を照らし、クラスメイトたちが思い思いに弁当を広げている。

　その中心に――神崎玲央がいた。
　爽やかな笑顔。だが、俺にはもうその仮面の下が透けて見えていた。

「結城さん、ちょっと散歩しない？　ほら、弁当も食べ終わっただろ」
　軽い口調。だが声の奥に潜むねっとりとした響き。

「え……」
　真白の瞳が揺れる。
　断りたい。でも言えない。いつもの彼女の優しさが、また足を縛る。

（ふざけるな。まだ懲りずに近づくつもりか）

　俺は立ち上がり、真白の前に出た。
「……真白は行かない。ここで俺と食べる」

　玲央の笑みがわずかに硬直した。
「はは、またかよ。独占欲、すごいなあ彼氏くん。
　そんなに縛り付けて、結城さんがかわいそうじゃない？」

「かわいそう？」
　俺は眉をひそめる。
「困らせてるのはどっちだ。――お前だろ」

　一瞬、ざわりと空気が揺れた。
　周りのクラスメイトたちが顔を見合わせる。

　そのとき、震える声が割って入った。
「……わ、わたしも……」

　一年の佐伯だった。
　彼女は真白の横に立ち、小さな声で言った。
「わたしも、神崎先輩に……無理やり誘われたこと、あります」

「え……？」
「掃除のあとに呼び止められて……甘いもの食べに行こうって。断れなくて……怖かった」

　教室中が一気に静まり返る。
　そこに別の声が続いた。

「……私も」
　顔を赤くした二年の女子が、手を震わせながら立ち上がる。
「“押せば落ちるタイプだろ”って……他の子の前で言われて……ずっと嫌だった」

「俺も聞いたことある！」
　男子が声を上げる。
「神崎先輩、裏で“結城はチョロい”って言ってただろ！」

「違う！　そ、それは冗談で――」
　玲央の笑顔が崩れる。
　だが、そこに紗和が立ち上がった。
「……冗談、ね」
　彼女はスマホを掲げた。

「これ、どう説明するの？」

　画面には、玲央が送ったとされるチャットログ。

『押せばいける』
『真白ちゃんチョロい』
『余裕、余裕』

　日付は昨日。確かな証拠。

「――っ！」
　玲央の顔から血の気が引いた。

「最低」
「結城さんをバカにしてたんだな」
「真白ちゃん、かわいそうに……」

　次々に声が上がる。
　女子たちは眉をひそめ、男子たちは失望の眼差しを向ける。
　その場の空気は完全に反転していた。

「ち、違うんだ！　本当に俺は――」
「もういい」
　俺は一歩前に出て、真白を後ろに庇った。
「お前の言葉は、もう誰にも届かない」

　真白が俺の袖を握る。
　震えながらも、その瞳は俺を信じていた。
　俺は彼女の手を強く握り返し、周囲を見渡した。

（ようやく……仮面が剥がれた。
　俺が何度も画面越しに見せられた、悔しさと無力感。
　それを現実で繰り返すわけにはいかなかった）

　怒りと安堵が胸の奥で入り混じる。
　玲央の爽やかさはもう消え失せ、残っているのは取り繕う暇もない醜悪な素顔だけだった。

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