前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

文字の大きさ
16 / 101
番外編

第16話「神崎玲央・没落記」

しおりを挟む
「昨日のことなんて、ただの誤解だ」
 そう自分に言い聞かせながら、神崎玲央は“いつもの笑顔”を作り、昇降口をくぐった。

 女子のグループに向かって「おはよー」と明るく声をかける。
 だが、返ってきたのは一瞬の視線と、すぐに逸らされる冷たい横顔。
 そこにあったのは憧れでも好意でもなく――露骨な嫌悪だった。

(……え? 何だよこれ。冗談だろ? 昨日の件なんてもう笑い話になってるはずだろ?)

 廊下を歩けば、背後で囁きが飛ぶ。
「……あれが神崎?」
「裏であんなこと言ってたんでしょ」
「真白ちゃん“チョロい”とか……最低」

 必死に聞こえないふりをするが、胸の奥でざらついた不安が広がっていく。

 教室のドアを開けた瞬間、談笑の声がぴたりと止まった。
 全員が一斉にこちらを見て、次の瞬間、何事もなかったように逸らす。

「よっ、みんな。昨日は悪かったな、ちょっと言葉が過ぎて――」
 軽口は空気に吸い込まれるだけ。返事はなく、ただの“空気”のように無視された。

 机の上にいつも置かれていた「一緒に食べよ!」のメモもない。
(ちょっとした行き違いだ……俺はまだ人気者だ……!)
 心の中で必死に繰り返しても、耳に入るのはくすくすとした嘲笑だけだった。

(おかしいだろ……昨日まで、俺の周りには人が集まってたのに)


「……」
座った俺の机の上には、いつものように「一緒に食べよ!」というメモも置かれていない。
昼休みの誘いも、部活の相談もない。


(ちょっとした行き違いだ……そうだ、ちょっとした……。俺はまだ人気者なんだ……!)


必死に心の中で繰り返す。
だが、クラスの隅でクスクスと笑う声が耳に刺さる。



「見た? 神崎、顔ひきつってた」
「キャーキャー言ってたの、マジで恥ずかしい」
「結局、中身はクズだったんだ」

 拳を握りしめた。爪が掌に食い込むほどに。
 だがどうにもならない。
“爽やか先輩”の仮面は、音もなく崩れ始めていた。


 昼休み、空気は決定的に変わった。
 女子の一人が立ち上がり、震える声で口を開いた。

「ねえ……私も神崎先輩に、変なこと言われたことある」


教室の中央で、女子が声を上げた。
小柄な後輩――昨日、中庭で震えていた佐伯。
彼女は勇気を振り絞ったように顔を上げる。


「掃除のあとに呼び止められて……“押せば落ちるタイプだろ?”って……すごく怖かった」


 教室にざわめきが広がる。
 玲央は慌てて立ち上がり、「違う! 冗談だ!」と声を張る。
 だが、その瞬間、別の声が重なった。

「私も。前に“結城さんと比べてどう?”って聞かれて、本当に嫌だった」
「“チョロい子は余裕”って神崎が笑ってたの、俺も聞いたぞ」

 冷ややかな視線が玲央に突き刺さる。
「ち、違う! 俺はそんなつもりじゃ――」
 必死に否定しても返ってくるのは嘲笑だけ。

「うわ、言い訳だせえ」
「裏ではクズとか……最悪」
「今まで持ち上げて損したな」

 笑いが広がる。眉をひそめる女子、軽蔑の目を向ける男子。
 その全てが玲央の存在を否定する。

 昼休み、弁当を広げると、隣の席は誰も座らない。
 近づこうとした男子は「罰ゲームだろ」と笑われ、慌てて逃げた。
 後輩女子さえ顔をしかめて「最低」と吐き捨てた。

(なんでだ……今まで俺に憧れてただろ? 笑顔を向けてただろ? 全部……全部、アイツらのせいだ!)

 心の中で逆恨みを募らせても、現実は残酷だ。
 教室の真ん中に座っているのに、玲央だけが“誰もいない空間”に取り残されていた。


 翌朝、校門をくぐった瞬間、空気の違いを肌で感じた。
 視線が刺さり、囁きが刃になる。昨日までのちやほやは、冷たい計算へと変わっていた。

 ロッカーを開けると、折り畳まれたメモの山。
 中には女子たちの証言の断片や保存されたスクショ。匿名の書き込みがびっしりと詰め込まれている。

 昼休み、食堂の特等席は空いているのに誰も座らない。
 向かいで女子たちがスマホを見せ合い、口の端を歪めて笑う。

 午後の廊下では細い声が連鎖する。
「昨日のチャット、保存してたよね?」
「学校に出す準備できてる」

 夕方、教室の黒板にはコピー用紙が貼られていた。
「神崎玲央 行動ログ(抜粋)」――日付と証言が整然と並ぶ。

「被害に遭った子たちが、あなたの“ノリ”で傷ついてる。データは全部学校に渡すよ」
 紗和の冷たい声が胸を抉る。

 部活は活動停止。学校は調査委員会を立ち上げ、保護者へ連絡。
 SNSでは「#もう通わないで」とタグが広がり、玲央の評判は“公式に”崩壊していった。

 夜、鏡に映る自分は、かつての“爽やか先輩”を必死に真似ているが、笑うたびに仮面の端から黒い染みが広がるようだった。

(俺は被害者だ。誤解だ。全部、あいつらが……!)

 頭の中で同じ言葉を繰り返すが、誰も耳を貸さない。
 被害者ぶるほど孤独は深まり、孤独は怒りを肥大化させていく。

 翌朝、教室の窓から見えたのは、祝福されながら笑う主人公と真白。
 そこに自分の姿はなく、あるのは喪失感だけ。

(覚えておけ。いつか、必ず……)

 震える拳を握りしめ、吐き出した誓いは、誰にも届かない呪いのように宙を漂った。
 そして――その炎は、自分自身を蝕むだけのものへと変わっていった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。

Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。 女の子に間違われる地味男子――白雲凪。 俺に与えられた役目はひとつ。 彼女を、学校へ連れて行くこと。 騒動になれば退学。 体育祭までに通わせられなくても退学。 成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。 距離は近い。 でも、心は遠い。 甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。 それでも―― 俺は彼女の手を引く。 退学リミット付き登校ミッションから始まる、 国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...