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第2章 体育祭の思い出作り
第20話「二人三脚の相手は誰?」
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リレーの順番が決まって盛り上がったあと、次は二人三脚の話題になった。
黒板に大きく「二人三脚」と書かれるやいなや、男子がすかさず声を上げる。
「おい! これはもう決まりだろ!」
「新堂と結城! この二人以外考えられねぇ!」
「カップル二人三脚とか反則級!」
わっと歓声と笑いが広がった。
俺は思わず机に突っ伏したくなった。
「おいおい、勝手に決めんな! もっと公平に……」
「公平もなにも、空気読めって! お前ら以外に誰がいるんだよ!」
「そうそう! 真白ちゃんが新堂と組んで走る姿、絶対映えるって!」
「映えとかいらねぇだろ……」
俺は頭を抱えたが、隣の真白を見ると――彼女は頬を真っ赤に染めて、視線をそらしていた。
「ま、真白……?」
「……わ、私でよければ……」
その声はか細く、けれど確かに俺に届いた。
(……あ、これは断れねぇやつだ)
クラス中が「きたーー!」と盛り上がる。拍手や口笛まで飛び交って、完全に決定事項の空気になっていた。
「よっ、リア充リーダー! 二人三脚でさらに見せつけてくれよ!」
「真白ちゃん、ずるいなー!」
「お似合いお似合い!」
俺は思わず悪態をつく。
(お前ら……初日には祝福してたくせに、今は冷やかす側かよ。ほんといい加減な奴らだ)
だけど――袖をそっと引かれる感触に、心臓が跳ねた。
見ると真白が小さな声で囁いてくる。
「……蒼真くん。私、楽しみかも」
その一言に、全部どうでもよくなった。
顔が熱くなり、苦笑いでごまかすしかない。
「そ、そうか。じゃあ……全力でやるしかねぇな」
「うん、一緒に頑張ろうね」
机の下で、彼女の指先がほんの少しだけ俺の手に触れた。
偶然か、それとも――。
分からないけれど、胸の奥が甘くとろけていくような感覚に包まれた。
「はい決まり! 二人三脚は新堂と結城!」
担任が黒板に名前を書き込み、教室は再び大きな歓声に包まれた。
(……クソ、幸せすぎてニヤけ止まんねぇ……)
俺は深く息を吐きながらも、心のどこかでにやけそうになるのを必死で抑えていた。
◇◇◇
放課後のグラウンド。
部活生たちが散っていく中、俺と真白は二人で残っていた。
足元のアスファルトに夕陽が長い影を落とし、風に乗って草の匂いが漂ってくる。
「じゃあ……始めよっか、特訓」
真白が照れくさそうに笑い、手に持った布切れを掲げた。
リボンのように見えるそれは――二人三脚用の足を結ぶ紐だ。
「なぁ……これ、本当にここでやる必要ある?」
「だって、蒼真くん。私、走るの得意だけど……二人三脚は一人じゃできないよ?」
「そりゃそうだけど……」
言いながら俺は内心で焦っていた。
なにせ、真白とぴったり身体をくっつけて走るんだ。練習だとしても、絶対に距離感がおかしくなる。
「ほら、早く足出して。蒼真くん、逃げないで」
「わ、わかってるよ」
言われるがままに片足を寄せると、真白が膝を折ってしゃがみ込み、器用に紐を結び始めた。
そのとき――ふわりと甘いシャンプーの香りが鼻をかすめ、心臓が跳ね上がった。
(ち、近い……! 顔、めっちゃ近い!)
「……きゅっ」
真白が結び目を引いて、足首同士が固定された。
わずかな布一枚なのに、不思議と心まで繋がれたような感覚になる。
「ふふっ、逃げられないね。蒼真くん」
「お、おい……そういうこと言うな」
頬が熱くなる。
真白は楽しそうに微笑みながら、俺の腕にそっと自分の腕を絡めてきた。
「じゃあ……歩幅合わせてみよう。せーの……いち、にっ……いち、にっ」
ぎこちなく歩き始める。
最初はお互いに足が合わず、何度もつまづきそうになった。
そのたびに真白が「きゃっ!」と俺の胸に飛び込んできて、俺は慌てて支える羽目になる。
「ご、ごめんね!」
「いや、大丈夫……っていうか、ちょっと意図的に転んでないか?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!」
耳まで真っ赤にしながら否定する真白。
……だが、この柔らかさと温もりを何度も味わえるなら、正直どっちでもいい気がしてきた。
「もう一回! 今度は合わせるから!」
「お、おう」
息を合わせ、再び「いち、にっ」と声を揃える。
次第にリズムが合ってきて、少しずつ走れるようになった。
「すごい……蒼真くんとなら、本当にうまくいくかも」
「……そりゃ、俺たちだしな」
気づけば、夕陽に染まるグラウンドを二人で駆け抜けていた。
影が重なり合い、笑い声が風に溶けていく。
足を結ぶ紐は外せばすぐにほどけるはずなのに――今は、ずっとこのままでもいいとすら思えてしまった。
◇◇◇
【side真白】
紐を結ぶ手が、少し震えていた。
いつもより蒼真くんの足が近くにあって、布越しにでも体温が伝わってくる。
リボンをきゅっと引き締めるたびに、自分の鼓動の音が耳の奥で大きく響いた。
(わ、私……こんなに緊張してる……)
「ふふっ、逃げられないね。蒼真くん」
思わず口にしてしまった。
本当は冗談のつもりだったのに、声が甘く震えてしまう。
顔を上げると、蒼真くんが赤くなっていて――その表情を見た瞬間、胸がいっぱいになった。
(あぁ……本当に、私の隣にいてくれるんだね)
歩き始めると、足が合わずに何度もつまずいた。
そのたびに身体が彼にぶつかり、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「ご、ごめんね!」
謝りながらも、本当は心のどこかで――少しだけ、この距離を嬉しく思っていた。
彼の腕の中に収まる安心感。
どれだけ転んでも、蒼真くんなら受け止めてくれる。そんな確信。
(だめだな、私……。蒼真くんがいると、つい甘えちゃう)
やり直した二人三脚は、今度は驚くほど息が合った。
「いち、にっ」と声を合わせるたびに、心まで一緒に跳ねているような気がする。
「すごい……蒼真くんとなら、本当にうまくいくかも」
そう言ったのは本心だった。
運動が得意だからじゃない。
ただ、彼と一緒なら――どんなことでも乗り越えられると信じられるから。
(体育祭の思い出は、全部蒼真くんと一緒に刻みたい……)
夕陽に染まるグラウンドを駆け抜けながら、私は心の中でそっと願った。
黒板に大きく「二人三脚」と書かれるやいなや、男子がすかさず声を上げる。
「おい! これはもう決まりだろ!」
「新堂と結城! この二人以外考えられねぇ!」
「カップル二人三脚とか反則級!」
わっと歓声と笑いが広がった。
俺は思わず机に突っ伏したくなった。
「おいおい、勝手に決めんな! もっと公平に……」
「公平もなにも、空気読めって! お前ら以外に誰がいるんだよ!」
「そうそう! 真白ちゃんが新堂と組んで走る姿、絶対映えるって!」
「映えとかいらねぇだろ……」
俺は頭を抱えたが、隣の真白を見ると――彼女は頬を真っ赤に染めて、視線をそらしていた。
「ま、真白……?」
「……わ、私でよければ……」
その声はか細く、けれど確かに俺に届いた。
(……あ、これは断れねぇやつだ)
クラス中が「きたーー!」と盛り上がる。拍手や口笛まで飛び交って、完全に決定事項の空気になっていた。
「よっ、リア充リーダー! 二人三脚でさらに見せつけてくれよ!」
「真白ちゃん、ずるいなー!」
「お似合いお似合い!」
俺は思わず悪態をつく。
(お前ら……初日には祝福してたくせに、今は冷やかす側かよ。ほんといい加減な奴らだ)
だけど――袖をそっと引かれる感触に、心臓が跳ねた。
見ると真白が小さな声で囁いてくる。
「……蒼真くん。私、楽しみかも」
その一言に、全部どうでもよくなった。
顔が熱くなり、苦笑いでごまかすしかない。
「そ、そうか。じゃあ……全力でやるしかねぇな」
「うん、一緒に頑張ろうね」
机の下で、彼女の指先がほんの少しだけ俺の手に触れた。
偶然か、それとも――。
分からないけれど、胸の奥が甘くとろけていくような感覚に包まれた。
「はい決まり! 二人三脚は新堂と結城!」
担任が黒板に名前を書き込み、教室は再び大きな歓声に包まれた。
(……クソ、幸せすぎてニヤけ止まんねぇ……)
俺は深く息を吐きながらも、心のどこかでにやけそうになるのを必死で抑えていた。
◇◇◇
放課後のグラウンド。
部活生たちが散っていく中、俺と真白は二人で残っていた。
足元のアスファルトに夕陽が長い影を落とし、風に乗って草の匂いが漂ってくる。
「じゃあ……始めよっか、特訓」
真白が照れくさそうに笑い、手に持った布切れを掲げた。
リボンのように見えるそれは――二人三脚用の足を結ぶ紐だ。
「なぁ……これ、本当にここでやる必要ある?」
「だって、蒼真くん。私、走るの得意だけど……二人三脚は一人じゃできないよ?」
「そりゃそうだけど……」
言いながら俺は内心で焦っていた。
なにせ、真白とぴったり身体をくっつけて走るんだ。練習だとしても、絶対に距離感がおかしくなる。
「ほら、早く足出して。蒼真くん、逃げないで」
「わ、わかってるよ」
言われるがままに片足を寄せると、真白が膝を折ってしゃがみ込み、器用に紐を結び始めた。
そのとき――ふわりと甘いシャンプーの香りが鼻をかすめ、心臓が跳ね上がった。
(ち、近い……! 顔、めっちゃ近い!)
「……きゅっ」
真白が結び目を引いて、足首同士が固定された。
わずかな布一枚なのに、不思議と心まで繋がれたような感覚になる。
「ふふっ、逃げられないね。蒼真くん」
「お、おい……そういうこと言うな」
頬が熱くなる。
真白は楽しそうに微笑みながら、俺の腕にそっと自分の腕を絡めてきた。
「じゃあ……歩幅合わせてみよう。せーの……いち、にっ……いち、にっ」
ぎこちなく歩き始める。
最初はお互いに足が合わず、何度もつまづきそうになった。
そのたびに真白が「きゃっ!」と俺の胸に飛び込んできて、俺は慌てて支える羽目になる。
「ご、ごめんね!」
「いや、大丈夫……っていうか、ちょっと意図的に転んでないか?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!」
耳まで真っ赤にしながら否定する真白。
……だが、この柔らかさと温もりを何度も味わえるなら、正直どっちでもいい気がしてきた。
「もう一回! 今度は合わせるから!」
「お、おう」
息を合わせ、再び「いち、にっ」と声を揃える。
次第にリズムが合ってきて、少しずつ走れるようになった。
「すごい……蒼真くんとなら、本当にうまくいくかも」
「……そりゃ、俺たちだしな」
気づけば、夕陽に染まるグラウンドを二人で駆け抜けていた。
影が重なり合い、笑い声が風に溶けていく。
足を結ぶ紐は外せばすぐにほどけるはずなのに――今は、ずっとこのままでもいいとすら思えてしまった。
◇◇◇
【side真白】
紐を結ぶ手が、少し震えていた。
いつもより蒼真くんの足が近くにあって、布越しにでも体温が伝わってくる。
リボンをきゅっと引き締めるたびに、自分の鼓動の音が耳の奥で大きく響いた。
(わ、私……こんなに緊張してる……)
「ふふっ、逃げられないね。蒼真くん」
思わず口にしてしまった。
本当は冗談のつもりだったのに、声が甘く震えてしまう。
顔を上げると、蒼真くんが赤くなっていて――その表情を見た瞬間、胸がいっぱいになった。
(あぁ……本当に、私の隣にいてくれるんだね)
歩き始めると、足が合わずに何度もつまずいた。
そのたびに身体が彼にぶつかり、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「ご、ごめんね!」
謝りながらも、本当は心のどこかで――少しだけ、この距離を嬉しく思っていた。
彼の腕の中に収まる安心感。
どれだけ転んでも、蒼真くんなら受け止めてくれる。そんな確信。
(だめだな、私……。蒼真くんがいると、つい甘えちゃう)
やり直した二人三脚は、今度は驚くほど息が合った。
「いち、にっ」と声を合わせるたびに、心まで一緒に跳ねているような気がする。
「すごい……蒼真くんとなら、本当にうまくいくかも」
そう言ったのは本心だった。
運動が得意だからじゃない。
ただ、彼と一緒なら――どんなことでも乗り越えられると信じられるから。
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