前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第2章 体育祭の思い出作り

第22話「応援団リーダーの采配」

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 放課後の教室。黒板の前に立った応援団係の男子が声を張り上げた。

「よし! 応援合戦の中心、赤組応援団リーダーを決めるぞ!」

 途端に教室の空気がざわめく。
 体育祭の応援合戦は、クラスの団結を示す象徴。リーダーを務めれば目立つこと間違いなしだ。

「誰がいいかなぁ」
「声がでかいのは田中だろ」
「いやいや、盛り上げ役は……新堂!」

 最後の一声に、教室の視線が一斉にこちらへ集まった。

「はぁ!? ちょっと待てよ!」
 思わず立ち上がる俺。

「いや、お前しかいないだろ」
「騎馬戦もリレーも中心だし、みんなを引っ張る役にピッタリ!」
「真白ちゃんの彼氏だしな!」

「関係ねぇだろ最後の!」

 ツッコミを入れる間にも、教室は「新堂で決まり!」と盛り上がっていく。
 女子たちも「蒼真くんなら安心してついていけるよ」と笑顔を向けてきて、逃げ道は完全に塞がれていた。

(……マジかよ。俺、転生前は文化祭実行委員すら逃げてたのに)

 胸の奥に苦笑が浮かぶ。だが同時に、不思議と悪い気はしなかった。
 みんなの期待が、少しだけ心地いい。

「蒼真くん、きっと上手くできるよ」
 隣から小さく声がかかる。真白だ。
 その真っ直ぐな瞳を見た瞬間、背中を押された気がした。

「……わかった。やるよ」
 観念してそう告げると、教室が「おおーっ!」と拍手と歓声に包まれた。

「やった! じゃあ、新堂リーダーでいこう!」

 その瞬間――視線の隅で、白石紗和の姿が見えた。
 彼女は控えめに拍手をしながら、じっとこちらを見ている。
 真白のように無邪気に笑うのではなく、どこか揺れる瞳で。

(……白石。やっぱり、お前の視線は他の子たちと違う)

 けれど今は、その感情に踏み込む余裕はなかった。
 俺はリーダーとしてクラスを引っ張る役を引き受けたのだ。

「よし、まずは声出しからだ! 応援団は勢いが大事だからな!」
 男子が叫ぶ。俺もそれに倣って声を張り上げた。

「赤組、勝つぞーっ!!」
「おおおおおっ!!」

 教室全体が揺れるほどの大歓声。
 その真ん中で、俺はみんなの熱気を正面から受け止めていた。


◇◇◇

 翌日の放課後、体育館に集められた赤組の応援団。
 リーダーになった俺は、壇上に立たされていた。

「じゃあ、新堂! まずは掛け声を!」
「お、おう……」

 急かされるように前に出て、思い切り声を張り上げる。

「赤組――勝つぞぉおお!!」

 ……シーン。

 体育館に響き渡った俺の声。だが、返ってきたのは一瞬の沈黙だった。
 次の瞬間、「あははっ!」と爆笑が巻き起こる。

「声はいいけど、顔が真っ赤!」
「リーダーなのに緊張しすぎだろ!」

「う、うるせぇ!」
 耳まで熱くなるのを感じながら、必死に叫び続ける。

「お、お前らも声出せ! 赤組――!」
「勝つぞぉおお!!」

 今度は大きな声が体育館に響き渡った。
 爆笑と歓声の入り混じった空気に、胸の奥が少しだけ熱くなる。

(……案外、悪くないかもしれないな)

 続いては振り付けの練習。
 手拍子やステップ、簡単なダンスを取り入れるらしい。
 お手本として前に立たされたのは――女子代表の結城真白と白石紗和だった。

「いち、にっ、さん、しっ!」
 真白が掛け声を上げながら軽やかにステップを踏む。
 その姿はまるで舞台のヒロインのようで、見惚れてしまう。

「こ、こう……かな?」
 一方の紗和は動きがぎこちなく、スカートの裾を押さえながら必死についていく。
 だが、その不器用さが逆に可愛らしくて、思わず笑みがこぼれた。

「ふふ、蒼真くん、笑ってる」
 真白がくすりと笑ってこちらを見る。
「じゃあ、次は一緒にやってみようか」

「ま、待って! 私も……!」
 紗和が慌てて声を上げる。
「で、でも……笑わないでね」

「大丈夫だって。俺も完璧じゃねぇし」

 そう言って真白と紗和、二人に挟まれて並ぶことになった俺。
 右には楽しそうに笑う真白。左には必死で動きを覚えようとする紗和。
 両側から視線を浴びて、胸がざわつく。

「……いち、にっ、さん、しっ!」
 三人の声が重なった瞬間、体育館に拍手が起こった。

「やっぱリーダーだな、新堂!」
「華があるぞ、三人並ぶと!」

 歓声に包まれながら、俺は汗を拭った。
 真白の笑顔と、紗和の必死な横顔。どちらもまぶしくて、心の奥に熱を残したまま――応援練習の初日は幕を閉じた。

◇◇◇

 体育祭の準備は、日に日に熱を帯びていった。
 リレーの練習、騎馬戦の作戦会議、応援合戦の衣装合わせ。
 どの時間も、クラス全員が声を張り上げ、笑顔を交わしていた。

「赤組、勝つぞー!」
「おーっ!!」

 拳を突き上げる声が体育館に響く。
 その中心に立つのは、やっぱり俺――新堂蒼真。
 リーダーとして名前を呼ばれるたびに、胸が少しだけ誇らしくなる。

(……転生する前の俺なら、こんな中心に立つなんて想像できなかった)

 だが今は違う。
 真白が隣にいてくれる。
 その存在が、背中を押し続けてくれていた。

「蒼真くん、声がかれてるよ」
 休憩中、真白がスポーツドリンクを差し出してくれる。
 汗ばんだ手に冷たいペットボトルが心地よい。

「ありがとな」
「ふふっ、リーダーは大変だね。でも、すごく楽しそう」
「まぁな。みんなが頑張ってるから、俺もやる気出る」

 そんな会話をしていると、横からひょいと顔を出したのは白石紗和。

「……あの、蒼真くん」
「ん?」
「今日のステップ、もう一回教えてくれる? 私、まだぎこちなくて……」

「あぁ、いいよ。あとで一緒にやろう」
「ありがとう……」

 彼女の小さな笑顔に、真白が一瞬だけ視線を落としたのを見逃さなかった。
 けれど、すぐにいつもの微笑みに戻り、隣で静かに寄り添ってくれる。

(……真白は、全部わかってるんだろうな)

 そんな日々が続き、クラスの団結は確実に強まっていた。
 笑い合う声、声援、そして未来への期待。
 だが――その熱気の裏で、俺の胸には小さな棘のような不安が刺さっていた。

(……ゲームじゃ、この辺りから“崩壊イベント”が始まったんだよな)

 騎馬戦での怪我、応援団での不和、そして――真白が狙われる兆し。
 あの鬱ゲーは、笑顔の裏に必ず影を落としてきた。

 今は、確かに幸せだ。
 けれど、油断すればまた――。

「蒼真くん?」
 真白の声に我に返る。
 目を向けると、彼女が心配そうに覗き込んでいた。

「大丈夫。ちょっと考え事してただけだ」
「……ならいいけど」

 柔らかな笑みを浮かべる真白を見て、胸の奥で決意を新たにする。

(絶対に繰り返させない。俺が全部守る)

 歓声が響く体育館の片隅で、俺は誰にも気づかれないように拳を握りしめた。

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