前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第2章 体育祭の思い出作り

第23話「勝利への作戦会議」

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 グラウンドに夕陽が差し込み、砂埃が赤く染まる。
 男子たちが列を作り、騎馬戦の特訓が始まっていた。

「よっしゃー! 新堂、上に乗れ!」
「今度は旗取りの練習だ!」

 仲間に肩を支えられ、俺は高く持ち上げられる。
 目の前には敵役のチームが待ち構えていて、額の汗を拭いながら互いに睨み合った。

「いくぞっ!」
 掛け声とともに突進。
 肩の上でバランスを取りながら、目の前の旗へと手を伸ばす。
 体幹が揺れるたびに心臓が跳ねるが――手は確実に旗へ近づいていく。


「取った!」
 布を掴んだ瞬間、仲間たちの歓声が爆発した。

「やっぱ新堂だな!」
「体幹バケモンすぎる!」

 肩の上から見渡す景色は、普段の校庭とはまるで違って見えた。
 歓声と熱気が渦を巻き、体の奥まで興奮が響いてくる。

(……悪くない。この熱気、クセになるかもしれないな)




 練習を終えて降り立つと、真白が駆け寄ってきた。
「蒼真くん! 怪我してない? 大丈夫?」
 両手で俺の腕を確かめるように握りしめ、心配そうに覗き込んでくる。

「大げさだな。これくらい平気だって」
「でも……さっき、バランス崩して危なかったよ」
 眉を寄せて言う真白。
 その瞳に映る心配は、嬉しくもあり、少し胸が締め付けられる。

「大丈夫だ。俺はちゃんと気をつける。だから心配すんな」
 そう笑いかけると、真白はようやく表情を緩めた。

 その光景を、少し離れた場所から見つめていたのは白石紗和だった。
 砂埃に混じる夕陽の中、彼女は小さく息を呑んでいた。

(……新堂くん、やっぱりすごい。あんなに堂々として……みんなから頼られて)

 指先が自然とスカートの裾を掴む。
 真白と並ぶ彼の姿を見れば、二人が特別な関係であることは誰の目にも明らかだ。
 それでも視線を逸らせない。

(わかってる。私なんかじゃ届かないって。でも……目が離せない)

 彼女の胸の奥に広がる切なさは、誰にも気づかれない。
 ただ夕陽だけが、その想いを照らし出していた。

 再び集合の笛が鳴る。
 俺は深く息を吸い、仲間とともに列に戻った。
 真白の心配と、紗和の視線。
 その両方を背中に感じながら、俺は次の特訓へと走り出した。

◇◇◇

【side紗和】

 砂埃が舞うグラウンドで、男子たちの声が飛び交う。
 新堂くんの名前が、何度も何度も呼ばれていた。
 肩に乗せられ、高い視線から旗を狙う姿は、まるで主役みたいで……胸がぎゅっと締め付けられる。

(……やっぱり、すごいなぁ)

 蒼真くんは、クラスのみんなに頼られている。
 声を張り上げるたび、仲間が笑顔になる。
 走るたびに、周囲が歓声で包まれる。

 私がもし同じ場所に立ったら――きっと、何もできずに笑われて終わるだけだ。
 そう考えると、羨ましさと同時に、自分への悔しさも込み上げてきた。

 練習が終わって、彼が降りてきた瞬間。
 真白ちゃんが駆け寄っていく。
 その顔は不安でいっぱいで、それでも彼の無事を確かめると、安心してふわっと笑う。
 二人の姿は、とても自然で、当たり前みたいに見えた。

(……結城さんは、やっぱり特別なんだ)

 そう思うと、胸の奥に小さな棘が刺さる。
 近くにいられるだけで満足するべきなのに、どうしても視線が蒼真くんを追ってしまう。

 気づけば、夕陽が落ちてグラウンドは橙色に染まっていた。
 その光に照らされる新堂くんの横顔は、誰よりも眩しく見えて――
 私はただ、スカートの裾をぎゅっと握りしめるしかできなかった。

(ねぇ……私、この気持ち、どうしたらいいんだろう)

 返事のない問いが、心の中で繰り返し響く。
 応援の声と砂埃の中で、誰にも聞かれずに。


◇◇◇

 練習を終えた翌日。
 教室の後ろでは、男子たちが机を寄せ合って真剣な顔をしていた。

「でな、新堂が騎手やるなら、突進のときは田中と小林が下で安定させるのが一番だ!」
「いやいや、それだと守備が手薄になるだろ。後衛を厚くした方がいいんじゃねぇか?」
「おい、誰か地図持ってこい! 戦術は図で考えるべきだ!」

 まるで軍議のような熱気。
 紙に矢印を書き込みながら「敵の突進をどう防ぐか」を議論する姿は、正直ちょっと滑稽ですらあった。

(……ただの体育祭なのに、何でこんなに必死なんだよ)

 心の中で苦笑しつつも、こうやって盛り上がれる雰囲気は嫌いじゃない。
 クラス全員が一つの目標に向かっているのが伝わってくる。

「蒼真くん」
 そっと声をかけてきたのは真白だった。
 手にはノートを持ち、ページには綺麗な字で「作戦のまとめ」が書かれている。

「みんなの意見を整理してみたんだ。これなら分かりやすいと思う」
「おお……助かる」

 内容は、男子が口々に叫んでいた戦術を要点だけ簡潔にまとめたもの。
 俺がまとめ役として声を出す前に、すでに形になっている。

(さすが真白。こういうサポート、本当に頼りになる)

 彼女の笑顔に自然と感謝の言葉が浮かんだ。

 その横で、白石紗和が恐る恐る手を挙げた。

「あ、あの……私も、ちょっと考えてきたんだけど……」
 机の上に差し出されたのは、小さなメモ用紙。
 そこには、「声援で士気を上げるタイミング」や「応援団と競技の連携」についてのメモがびっしりと書かれていた。

「おおっ、白石もすげぇな!」
「応援って軽く見てたけど、こうやって考えると結構重要だな!」

 男子たちから意外にも真剣な賛辞が飛び、紗和は顔を真っ赤にして俯いた。

「そ、そんな大したことじゃ……」
「いや、ありがとな。こういう視点は俺らに欠けてるから助かる」
 俺がそう言うと、彼女は一瞬だけ瞳を揺らし、かすかに微笑んだ。


 こうして「勝利への作戦会議」は熱気と笑いに包まれながら続いていった。
 男子の血気と、女子の冷静な支え。
 それが混ざり合って、クラス全体が少しずつ「一つのチーム」に変わっていく。

(……これだよな。学園ラブコメの“バラ色”ってやつは)

 真白の頼もしさと、紗和の健気さを同時に感じながら、俺は心の奥で小さく笑った。

 ◇◇◇

【side真白】

 男子たちが机を囲んで大声で議論している。
 紙の上に矢印が増えていくたびに、教室の熱気はどんどん高まって――まるで戦国武将の軍議みたい。
 そんな中、私は隣に座る蒼真くんの横顔をそっと盗み見た。

(……やっぱり、頼られてるんだな)

 昔の蒼真くんはこんな風じゃなかったのに……いつの間にか、こんなにも頼られる存在になってる。
 でも、少なくとも今この瞬間、クラスのみんなの視線の先には蒼真くんがいる。
 中心に立って、自然に人を引きつけていく姿が、胸の奥をじんわりと温めた。

「蒼真くん、これ……」
 私は勇気を出して、まとめたノートを差し出す。
 彼の役に立ちたい一心で、男子の意見を整理しておいた。

「おお……助かる」
 笑って受け取ってくれるその表情が嬉しくて、胸が弾む。

(よかった……少しでも力になれたなら)

 けれど、そこに紗和ちゃんの声が重なる。

「あの……私も、ちょっと考えてきたんだけど……」

 小さな声。けれど、その言葉にみんなが耳を傾ける。
 机に置かれたメモには、びっしりと文字が書き込まれていた。
 真剣に考えてきたんだって、すぐに分かる。

「おおっ、白石もすげぇな!」

「応援も作戦なんだな!」

 クラスから飛ぶ賛辞。
 そして――蒼真くんの「ありがとな」の声。

 一瞬、胸の奥がきゅっと痛んだ。
 けれど、紗和ちゃんの頬が赤くなり、俯いたまま微笑んでいるのを見て、自然と笑みが浮かんでしまった。

(……そうだよね。私だけじゃなくて、紗和ちゃんだって頑張ってるんだもん)

 ちょっとだけ複雑な気持ちはある。
 でも、それ以上に「同じクラスで一緒に頑張れる仲間」として、誇らしい気持ちの方が強かった。

 視線を蒼真くんに戻す。
 真剣にクラスを引っ張ろうとしているその背中が、眩しくて仕方ない。

(大丈夫。私は信じてる。蒼真くんと一緒なら、絶対に勝てる)

 心の中で、そっとそう呟いた。

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