前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第2章 体育祭の思い出作り

第34話「放課後、真白の勇気」

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 週明けの放課後、レンタルスペースに集まった俺たちのクラスは、体育祭の余韻そのままに大騒ぎだった。
 机を並べて軽食やジュースを広げれば、あっという間に小さなパーティー会場に変わる。

「はい、ジュース並べ終わり!」
「お菓子はこっち!」
「おい、新堂ー! 風船どうすんだよ、早く膨らませろ!」

 あちこちから声が飛び交い、笑いが弾ける。
 昨日の買い出しで持ち寄った袋を開けるたび、俺と真白の「二人で選んだ時間」がよみがえってきて、少しだけ頬が緩んだ。


「ねぇねぇ、蒼真君。風船の色、こっちがいいんじゃない?」
 真白が、俺の隣で赤と青の風船を見比べている。
 いつもより楽しそうに、目を輝かせて。

「じゃあ赤。体育祭の優勝チームの色だしな」
「うんっ!」
 ぱっと笑った真白の笑顔に、胸が温かくなる。

「おーい、新堂君。結城さんとイチャイチャしてないで、こっち手伝えよー」
 ひょいっと顔を出したのは紗和だった。
 手にはお菓子の袋をいくつも抱えて、肩で軽く笑う。

「わっ、わ、イチャイチャなんてしてないから!」
 真白が慌てて否定する横で、紗和はにやりと口角を上げた。

「はいはい、そういうことにしてあげる。……でも、なんかいい感じじゃん?」
「……っ」
 真白が真っ赤になって俯く。
 俺は苦笑しつつも、心の奥が少し熱くなった。

(……やっぱり、みんなにバレてるんだよな)

 やがて全員が揃い、打ち上げは本格的にスタートした。
 乾杯の声が響き、教室では味わえない解放感が広がる。
 大きな窓の外はすでに夜で、街の明かりがキラキラと瞬いていた。

 真白の隣に座り、みんなと笑い合う。
 その何気ない時間が、昨日のリレーに負けないくらいの「勝利」だと思えた。




 打ち上げが始まってしばらくすると、部屋の中はさらに熱気を増していた。
 ジュースを片手に大声で盛り上がる男子。
 スマホで撮影しながら自撮りに夢中な女子。
 歌を歌い出すやつまで現れて、会場はまるで小さな祭りのようだった。

(……楽しいけど、さすがにちょっと疲れてきたな)

 そう思って窓際に目をやると、そこに真白の姿があった。
 人混みから少し離れ、外を眺めている。
 街灯に照らされた横顔は、柔らかく輝いていて――自然と足が向いた。


「真白」
「……あ、蒼真君」

 声をかけると、真白が振り返り、少し照れた笑みを浮かべた。
 その表情だけで、賑やかな喧騒が遠のくように感じる。

「こっち、静かでいいね」
「うん……ちょっと落ち着きたくて」

 並んで立ち、窓の外の夜景を眺める。
 街の灯りが遠く瞬いていて、それが真白の瞳にも映り込んでいた。

「昨日のリレーも、今日の準備も……全部、蒼真君が一緒だから頑張れたんだよ」
 真白が小さく呟く。

「俺もだ。真白がいたから走れたし、今日も楽しかった」
 素直に返すと、真白は俯いて、ほんのり赤くなった頬を隠した。

「……ずるいな。そんな風に言われたら……もっと好きになっちゃう」

 心臓が跳ねる。
 俺も同じ気持ちなのに、真白の方が一歩先に踏み出している気がした。

「蒼真君」
「ん?」
「……ね、もうちょっとだけ、ここに一緒にいてもいい?」

「もちろん」
 迷わず答える。

 会場の笑い声は遠く、窓際だけがふたりの小さな世界になっていた。
 その静けさの中、俺は改めて思う。

(……俺の隣には、いつも真白がいてほしい)

 心の奥にそう刻み込んだ瞬間だった。

 レンタルスペースに響いていた賑やかな声も、時間が経つにつれて少しずつ落ち着いてきた。
 テーブルの上には食べかけのお菓子と空になった紙コップ。
 楽しかった打ち上げも、そろそろ終わりの時間だ。

「はい、そろそろ片付け始めるよー!」
 幹事役の男子が声を張り上げ、みんなが一斉に動き出す。
 ゴミ袋を広げ、机を元に戻し、風船を割って笑い声を上げる。
 体育祭の一体感が、最後の最後まで続いていた。

「蒼真君、これお願い」
 真白が紙皿を重ねて俺に手渡す。
 近くで見た彼女の笑顔は、少し名残惜しさを含んでいた。

「……なんか、終わっちゃうの寂しいね」
「でも、またやればいいさ。次は文化祭の打ち上げでも」
 冗談っぽく言うと、真白は「ふふっ」と笑って頷いた。

 その笑みを見て、胸の奥がじんわり温かくなる。
 今日の思い出は、ずっと消えない宝物になるだろう――そう思えた。


 全員で片付けを終えたあと、幹事が最後に声を張った。

「じゃあ、これで打ち上げは解散! みんなお疲れー!」

「「お疲れー!!」」
 歓声と拍手が響き渡り、イベントは幕を閉じた。

 外に出ると、夜風が頬を撫でた。
 真白が俺の隣に自然に並び、歩き出す。
 ふと後ろを振り返ると――紗和がこちらを見ていた。

 いつものように明るく笑っていたはずなのに、その目元にはほんの少し影が差している。
 すぐに気づいて、彼女はいつもの調子で手を振った。

「じゃあねー、蒼真! 結城も! また明日!」

 声は快活だ。

 でも――ほんの一瞬見えた表情は、確かに胸に残った。

(……紗和)

 その笑顔の奥にあるものを、俺はまだ見抜けていない。
 けれど――それが軽くない感情だと、直感でわかってしまった。

◇◇◇

 放課後の教室。
 打ち上げの余韻がまだ残っているのか、友達同士で感想を言い合う声があちこちから聞こえてくる。
 けれど俺と真白は、机を片付け終えたあと、そのまま二人で並んで帰ることになった。

 窓から射し込む夕陽が真白の横顔を照らす。
 長い黒髪が金色に縁取られていて、つい視線を奪われる。

「……蒼真君」
「ん?」
「昨日も今日も……すごく楽しかった」

 小さな声だった。
 けれどその言葉には、真白の気持ちがぎゅっと詰まっているのがわかる。

「俺もだよ。リレーも打ち上げも、真白と一緒だったから楽しかった」

 正直に言うと、真白は少し照れたように笑って――そのまま、俺の袖をそっとつまんだ。

 歩く足が少しだけ遅くなる。
 周りにはまだ帰り支度をしている生徒がいて、廊下はざわざわしていた。
 でも、その中で真白の仕草だけが妙に鮮明で、意識が全部そちらに引き寄せられる。

「……あのね」
 真白が小さく呟く。
「私、いつも蒼真君に支えてもらってばかりだから……これからは、私からも支えたいなって」

 真っ直ぐに見上げてくる瞳。
 その強さに、思わず息を呑んだ。

「だから……もう少しだけ、勇気を出してみようって思うの」

 その言葉を聞いた瞬間、心臓が跳ねた。

 真白がほんの少し俺の腕に寄りかかる。
 廊下のざわめきなんてもう耳に入らなかった。

(……真白。お前はもう十分勇気を出してるよ)

 そう思いながらも、声に出すことはできなかった。
 ただ静かに、そのぬくもりを受け止めることしかできなかった。

◇◇◇

 校門を抜ける頃には、夕陽はだいぶ傾いていた。
 真白と俺は並んで歩いていたが――今日は少し違う。
 彼女が俺の腕に寄り添ったまま、自然と歩幅を合わせてくれていた。

「……ね、重くない?」
 真白が小さな声で尋ねてくる。

「全然。むしろ……心地いい」
「そ、そう……? よかった」

 安心したように微笑む顔が、橙色の光に照らされていっそう眩しかった。

 道端の自販機の前で、真白が立ち止まる。
「のど乾いちゃったね……何か飲む?」
「じゃあ俺が買ってくる」
 財布を取り出すと、真白は慌てて首を振った。

「だめ。今日は私が出すの。勇気を出すって決めたから」
「え、そこに勇気使うのか?」
「つ、使うの!」

 拗ねたように頬を膨らませ、結局二人分のペットボトルを買ってくる。
 その姿が愛おしくてたまらなかった。

 並んでベンチに座り、キャップを開ける。
 ごくごくと飲み干した真白が、肩で小さく息をついた。

「……ねぇ、蒼真君」

「ん?」
「私……もっと蒼真君に“好き”って伝えたい」

 いきなりの直球に、息が詰まりそうになる。
 真白は俯いたまま、指でペットボトルをいじっていた。

「でも、どうしたら伝わるのかな……言葉だけじゃ、足りない気がして」

 恥ずかしそうに、それでも真剣に考えている。
 その姿を見て、胸がぎゅっと締め付けられた。

「十分伝わってるよ。真白が隣にいるだけで、俺は幸せだから」

 そう言うと、真白は一瞬ぽかんとして――そしてふわりと笑った。
 頬が夕焼けよりも赤く染まっている。

「……じゃあ、これからもいっぱい隣にいるね」

 その約束が、何よりも甘く響いた。

 帰り道の交差点で、真白がふと立ち止まった。
「……ね、ちょっと寄り道してもいい?」

 そう言って指差したのは、商店街の小さなクレープ屋だった。
 甘い匂いが風に乗って漂ってくる。

「ほら、体育祭も打ち上げも頑張ったから、ご褒美!」
 真白はいたずらっぽく笑い、財布を取り出す。

「また出してくれるのか?」
「うん。今日くらいは、私に奢らせて?」

 少し照れながら並ぶ真白。
 注文を待つ間、肩が自然に触れ合っている。
 わざと離れる気にはなれなくて、俺はその距離をそのまま受け入れた。

 渡されたクレープを手に、二人で歩き出す。
 クリームが口元についた真白を見て、思わず笑ってしまった。

「な、なに?」
「……ここ」
 指で口元を示すと、真白は慌ててナプキンで拭き取る。

「もうっ、言ってよ……恥ずかしい」
 ぷくっと頬を膨らませる仕草が可愛くて、また笑いそうになる。

「でも……こうやって寄り道するの、すごく楽しいね」
 真白はクレープを抱えたまま、ふわりと微笑んだ。

「うん。普通のことなのに、真白と一緒だと特別に感じる」
 口に出した瞬間、真白の頬が赤く染まった。

「……じゃあ、もっと特別なこと、いっぱいしようね」

 その言葉に、胸が温かくなっていく。
 特別は、こうして一つひとつ積み重なっていくんだと実感した。





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