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第5章 新しい春に向けて
第65話「約束」
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ホワイトデーの朝。
登校する足取りは、普段よりもずっと落ち着かない。
鞄の中には、昨夜遅くまで準備した小さな包みが入っている。
――ペンダント。
何度も迷い、店を巡り、ようやく決めた。
銀の細いチェーンに、小さな雫型の石がひとつ光る。
真白の清楚な雰囲気に似合うと確信した、俺の想いを形にした贈り物だ。
(……喜んでくれるだろうか)
心臓がやけにうるさい。
けれど、それ以上に胸を満たしているのは「必ず渡す」という決意だった。
ゲーム内では、このイベントが絶望の幕開けだった。
けれど今は違う。俺がここにいる限り、真白の笑顔は誰にも奪わせない。
教室に入ると、昨日に続いて甘い空気が残っていた。
「昨日のお返し、何買った?」
「俺? 無難にクッキー」
「へー! ラッピング見せてよ!」
男子の冗談混じりの声に、女子たちの視線もちらちらと集まる。
その中で、真白はノートを広げていた。
けれど耳まで赤くなっていて、ときどきそわそわと髪を弄っている。
(……やっぱり意識してるな)
目が合った瞬間、彼女は慌てて視線を逸らした。
その仕草が可愛すぎて、余計に胸が熱くなる。
授業なんて上の空だった。
時計の針が進むたびに、意識は「放課後」へ飛んでいく。
放課後。
ざわつく教室を抜け出し、真白と並んで歩く。
「……蒼真君?」
「ん?」
「今日は……どこか寄って帰る?」
期待を込めた瞳に、小さく頷いた。
「いい場所があるんだ」
向かったのは校舎裏の小さな桜並木。
まだ蕾は固いが、人通りは少なく、夕暮れに染まった空気は静かで柔らかい。
深呼吸して、鞄から包みを取り出す。
真白の瞳が揺れた。
「これ……」
「ああ。ホワイトデーのお返しだ」
手渡した包みを、彼女は両手で大事そうに受け取り、胸に抱いた。
震える指先でリボンを解き、現れた小箱をそっと開く。
「……ペンダント……」
銀のチェーンに、淡い青色の石がひとつ揺れる。
夕陽を受けてきらりと光り、彼女の瞳に映り込んだ。
「すごく……綺麗」
小さく洩れた声。頬は赤く、瞳は潤んでいる。
「真白。これはただのお返しじゃない」
息を整え、しっかりと見つめる。
「お前が勇気を出してくれた気持ちに、俺も全力で応えたい。だから――俺の“誓い”として受け取ってほしい」
真白は唇を震わせ、ゆっくりと頷いた。
「……うん。大切にする。蒼真君からもらったもの、全部」
その笑顔を見た瞬間、胸の奥の緊張が溶けていった。
俺はペンダントを取り出し、彼女の首にそっとかける。
細い鎖が白い肌に映え、雫型の石が胸元できらめいた。
「……似合ってる」
自然と声が出た。
真白は照れたように頬を染め、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
(ゲームでは失われた日。でも――今は違う。
俺たちの物語は、ちゃんと幸せに塗り替えられたんだ)
夕暮れの並木道に、二人の影が寄り添うように伸びていた。
◇◇◇
放課後の桜並木。
夕焼けが差し込み、頬を撫でる風が少し冷たい。
でも胸の奥は、そんな寒さなんて吹き飛ばすくらい熱くて――落ち着かなかった。
蒼真君が差し出してくれた小さな包み。
両手で受け取った瞬間、心臓が一気に高鳴る。
中から出てきたのは、銀のチェーンに淡い青色の石が揺れるペンダント。
「……綺麗……」
思わず言葉がこぼれた。
石の輝きよりも、それを「私のために」選んでくれたことが胸を打つ。
(蒼真君が、私を想って選んでくれた……)
胸がいっぱいで、目の奥がじんわり熱くなる。
「真白。これはただのお返しじゃない」
彼の低い声が、真剣に響いた。
まっすぐに向けられた瞳から、視線を逸らせない。
「お前が勇気を出してくれた気持ちに、俺も全力で応えたい。だから――俺の“誓い”として受け取ってほしい」
――誓い。
その言葉に、胸の奥が震えた。
うまく言葉にならない。
でもどうしても、伝えたい気持ちがあった。
「……うん。大切にする。蒼真君からもらったもの、全部」
そう告げたとき、自分の声が少し震えていた。
でも、彼の瞳が優しく細められたのを見て、安心に包まれる。
次の瞬間。
蒼真君の指が、私の首筋に触れた。
「……えっ」
ペンダントを、直接つけてくれている――。
ひやりとしたチェーンが肌に触れるたびに、心臓が跳ね上がる。
背筋をすうっと電気が走るようで、息が詰まりそうだった。
「……似合ってる」
耳元で囁かれて、顔が一気に熱くなる。
もう隠しきれないくらい、頬が赤く染まっていたと思う。
(どうしよう……嬉しすぎて、涙が出そう……)
胸元で小さく揺れる雫の石。
それはただの飾りじゃなくて――蒼真君の想いそのもの。
ずっと大事にして、ずっと一緒にいたい。
夕暮れの桜並木で、彼と並んで歩く影が寄り添って伸びていく。
その光景を見ただけで、胸の奥からあふれるほどの幸せが込み上げてきた。
(蒼真君。私……世界で一番幸せな女の子だよ)
夜。
自分の部屋の明かりの下で、鏡に映る姿をじっと見つめていた。
胸元で静かに揺れる、青い石のペンダント。
夕暮れの時よりも、蛍光灯の光を受けて柔らかく輝いている。
「……ほんとに、私がつけてていいのかな……」
思わず呟いてしまう。
けれどすぐに頭を振る。
蒼真君が選んでくれた。
「俺の誓い」と言ってくれた。
それを信じて、受け取ったのは私。
だったら胸を張っていいんだ。
だってこれは、ただの飾りじゃなくて――私と蒼真君を繋ぐ証だから。
ペンダントにそっと触れる。
指先に冷たい感触が伝わるたびに、夕暮れの並木道で彼に首元へかけてもらった瞬間を思い出す。
近くで聞いた低い声。
耳元に落ちた囁き。
そして、真剣に見つめてくれたあの瞳――。
(……胸が、まだドキドキしてる)
ベッドに腰を下ろし、両手で顔を覆った。
頬の熱は収まらなくて、思わず小さな笑い声がこぼれる。
「……ふふっ。私、幸せすぎる」
こんなに胸がいっぱいになるなんて、去年の自分じゃ考えられなかった。
ただ隣にいられるだけで十分だと思っていたのに――今は、それ以上を願ってしまう。
(蒼真君。これからも、ずっと一緒にいてね)
ペンダントを胸に抱きしめるようにして、ベッドに横たわった。
瞼を閉じると、自然と彼の笑顔が浮かんでくる。
眠りに落ちる寸前まで、胸の奥は甘く熱い余韻に包まれていた。
登校する足取りは、普段よりもずっと落ち着かない。
鞄の中には、昨夜遅くまで準備した小さな包みが入っている。
――ペンダント。
何度も迷い、店を巡り、ようやく決めた。
銀の細いチェーンに、小さな雫型の石がひとつ光る。
真白の清楚な雰囲気に似合うと確信した、俺の想いを形にした贈り物だ。
(……喜んでくれるだろうか)
心臓がやけにうるさい。
けれど、それ以上に胸を満たしているのは「必ず渡す」という決意だった。
ゲーム内では、このイベントが絶望の幕開けだった。
けれど今は違う。俺がここにいる限り、真白の笑顔は誰にも奪わせない。
教室に入ると、昨日に続いて甘い空気が残っていた。
「昨日のお返し、何買った?」
「俺? 無難にクッキー」
「へー! ラッピング見せてよ!」
男子の冗談混じりの声に、女子たちの視線もちらちらと集まる。
その中で、真白はノートを広げていた。
けれど耳まで赤くなっていて、ときどきそわそわと髪を弄っている。
(……やっぱり意識してるな)
目が合った瞬間、彼女は慌てて視線を逸らした。
その仕草が可愛すぎて、余計に胸が熱くなる。
授業なんて上の空だった。
時計の針が進むたびに、意識は「放課後」へ飛んでいく。
放課後。
ざわつく教室を抜け出し、真白と並んで歩く。
「……蒼真君?」
「ん?」
「今日は……どこか寄って帰る?」
期待を込めた瞳に、小さく頷いた。
「いい場所があるんだ」
向かったのは校舎裏の小さな桜並木。
まだ蕾は固いが、人通りは少なく、夕暮れに染まった空気は静かで柔らかい。
深呼吸して、鞄から包みを取り出す。
真白の瞳が揺れた。
「これ……」
「ああ。ホワイトデーのお返しだ」
手渡した包みを、彼女は両手で大事そうに受け取り、胸に抱いた。
震える指先でリボンを解き、現れた小箱をそっと開く。
「……ペンダント……」
銀のチェーンに、淡い青色の石がひとつ揺れる。
夕陽を受けてきらりと光り、彼女の瞳に映り込んだ。
「すごく……綺麗」
小さく洩れた声。頬は赤く、瞳は潤んでいる。
「真白。これはただのお返しじゃない」
息を整え、しっかりと見つめる。
「お前が勇気を出してくれた気持ちに、俺も全力で応えたい。だから――俺の“誓い”として受け取ってほしい」
真白は唇を震わせ、ゆっくりと頷いた。
「……うん。大切にする。蒼真君からもらったもの、全部」
その笑顔を見た瞬間、胸の奥の緊張が溶けていった。
俺はペンダントを取り出し、彼女の首にそっとかける。
細い鎖が白い肌に映え、雫型の石が胸元できらめいた。
「……似合ってる」
自然と声が出た。
真白は照れたように頬を染め、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
(ゲームでは失われた日。でも――今は違う。
俺たちの物語は、ちゃんと幸せに塗り替えられたんだ)
夕暮れの並木道に、二人の影が寄り添うように伸びていた。
◇◇◇
放課後の桜並木。
夕焼けが差し込み、頬を撫でる風が少し冷たい。
でも胸の奥は、そんな寒さなんて吹き飛ばすくらい熱くて――落ち着かなかった。
蒼真君が差し出してくれた小さな包み。
両手で受け取った瞬間、心臓が一気に高鳴る。
中から出てきたのは、銀のチェーンに淡い青色の石が揺れるペンダント。
「……綺麗……」
思わず言葉がこぼれた。
石の輝きよりも、それを「私のために」選んでくれたことが胸を打つ。
(蒼真君が、私を想って選んでくれた……)
胸がいっぱいで、目の奥がじんわり熱くなる。
「真白。これはただのお返しじゃない」
彼の低い声が、真剣に響いた。
まっすぐに向けられた瞳から、視線を逸らせない。
「お前が勇気を出してくれた気持ちに、俺も全力で応えたい。だから――俺の“誓い”として受け取ってほしい」
――誓い。
その言葉に、胸の奥が震えた。
うまく言葉にならない。
でもどうしても、伝えたい気持ちがあった。
「……うん。大切にする。蒼真君からもらったもの、全部」
そう告げたとき、自分の声が少し震えていた。
でも、彼の瞳が優しく細められたのを見て、安心に包まれる。
次の瞬間。
蒼真君の指が、私の首筋に触れた。
「……えっ」
ペンダントを、直接つけてくれている――。
ひやりとしたチェーンが肌に触れるたびに、心臓が跳ね上がる。
背筋をすうっと電気が走るようで、息が詰まりそうだった。
「……似合ってる」
耳元で囁かれて、顔が一気に熱くなる。
もう隠しきれないくらい、頬が赤く染まっていたと思う。
(どうしよう……嬉しすぎて、涙が出そう……)
胸元で小さく揺れる雫の石。
それはただの飾りじゃなくて――蒼真君の想いそのもの。
ずっと大事にして、ずっと一緒にいたい。
夕暮れの桜並木で、彼と並んで歩く影が寄り添って伸びていく。
その光景を見ただけで、胸の奥からあふれるほどの幸せが込み上げてきた。
(蒼真君。私……世界で一番幸せな女の子だよ)
夜。
自分の部屋の明かりの下で、鏡に映る姿をじっと見つめていた。
胸元で静かに揺れる、青い石のペンダント。
夕暮れの時よりも、蛍光灯の光を受けて柔らかく輝いている。
「……ほんとに、私がつけてていいのかな……」
思わず呟いてしまう。
けれどすぐに頭を振る。
蒼真君が選んでくれた。
「俺の誓い」と言ってくれた。
それを信じて、受け取ったのは私。
だったら胸を張っていいんだ。
だってこれは、ただの飾りじゃなくて――私と蒼真君を繋ぐ証だから。
ペンダントにそっと触れる。
指先に冷たい感触が伝わるたびに、夕暮れの並木道で彼に首元へかけてもらった瞬間を思い出す。
近くで聞いた低い声。
耳元に落ちた囁き。
そして、真剣に見つめてくれたあの瞳――。
(……胸が、まだドキドキしてる)
ベッドに腰を下ろし、両手で顔を覆った。
頬の熱は収まらなくて、思わず小さな笑い声がこぼれる。
「……ふふっ。私、幸せすぎる」
こんなに胸がいっぱいになるなんて、去年の自分じゃ考えられなかった。
ただ隣にいられるだけで十分だと思っていたのに――今は、それ以上を願ってしまう。
(蒼真君。これからも、ずっと一緒にいてね)
ペンダントを胸に抱きしめるようにして、ベッドに横たわった。
瞼を閉じると、自然と彼の笑顔が浮かんでくる。
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