前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

文字の大きさ
66 / 101
第5章 新しい春に向けて

第66話「春を前に」

しおりを挟む
 春の足音が近づく頃、教室の空気は少しずつ変わってきていた。
 冬休みも終わり、行事の余韻も落ち着き――残るは学年末テスト。

 朝から黒板の端に「あと○日」と書かれて、嫌でも意識させられる。
 普段は賑やかなクラスも、この時期ばかりはノートを開く音が増える。

「ねえねえ、新堂くんって、数学得意だよね?」
「え、そうなの? じゃあ英語は?」
「……やばい、私英語死んでる」

 前の席から、女子の会話が飛んでくる。
 俺は苦笑しながら、チラリと隣の真白を見る。

 彼女は小さく頷き、「ねえ蒼真君」と俺に話しかけてきた。
「テスト前に、また勉強会……やらない? 私だけじゃ心配で」
「俺もやりたい。正直、古文が壊滅的で」
 少し恥ずかしそうに言う真白に、思わず笑みがこぼれる。

「じゃあ、みんなでやろうか。紗和とか千佳も誘えば?」

 その場で声をかけると、千佳が勢いよく振り向いた。
「え、勉強会!? やるやる! 私も古典無理! ましろん、助けて~!」
「千佳ちゃん、私に振られても……でも一緒なら頑張れるかも」
 紗和は困ったように笑みを浮かべ、控えめに頷いた。

「よし、決定。じゃあ放課後、図書室で集合な」
「はーい!」
 千佳の元気な返事に、周囲のクラスメイトも「いいな、俺たちも混ざる?」とざわめき出す。

「おーおー、またイチャイチャ勉強会か? 新堂と結城さんは」
「羨ましいなぁ。俺も真白先生に教えてもらいたい」
「……ちょ、ちょっと! からかわないで!」
 真白が顔を真っ赤にして両手を振る。
 その様子が可愛くて、俺まで照れ笑いを浮かべてしまった。

「集中、しよ」
 紗和が小さな声で注意すると、なぜかクラスがすっと静まる。
 彼女のそういうところ、地味に頼りになるんだよな……。


(さて。テスト前で憂鬱になりがちだけど……放課後はちょっと楽しみだな)

 教室の窓から差し込む春の光は、まだ冷たい空気を纏っていた。
 けれど胸の奥には、不思議と暖かさが芽生えていた。


◇◇◇


 学年末テストまで、あと一週間。
 放課後の図書室は、同じように勉強をしに来た生徒でいっぱいだった。
 俺たち四人――真白、紗和、千佳、そして俺――も机を囲んで問題集を広げている。

「ねえねえ、ここ解けた?」
千佳がペンを回しながら俺のノートを覗き込んでくる。

「ちょっと待て、今計算してるから……」
「えー、蒼真君の答え見たいのにー」

 わざと子どもみたいに拗ねる千佳に、真白がくすっと笑う。
「千佳ちゃん、ちゃんと自分でやらないとテストで困るよ?」

「わかってるって! でもさ、蒼真君が隣にいると安心するんだもん」
「な、なんでそこで俺の名前が出てくるんだ……」

 からかわれているはずなのに、不思議と嫌じゃない。
 そのやりとりに、紗和がそっと口を開いた。

「……あの、千佳ちゃん。この問題なら、教科書の例題に似てるのがあるよ」

「ほんと? えっと……あ、これか!」
千佳が顔を輝かせると、紗和は小さく頷いて微笑んだ。

 彼女は声を張ったり、目立つような仕切りは絶対にしない。
 けれど、こうやって一歩引いた場所から支えるように、ちゃんと手を差し伸べてくれる。

「ありがと、紗和ちゃん!」
「……ううん、そんな」

 俯きながら答えるその表情は、ほんのり赤い。
 小さな勇気で場を繋ぐ――まさに、彼女らしい存在感だった。

 俺はそんな三人のやりとりを眺めながら、思わず微笑んでしまう。
(……こうしてると、本当に“仲間”って感じがするな)

 机の上に広がった問題集よりも、胸の奥がじんわりと温まっていた。

 放課後の図書室での勉強会が終わったあと、千佳と紗和は先に帰っていった。
 俺と真白だけが残り、静まり返った机を挟んで向かい合う。

「……やっぱり、難しいね」
真白が小さく唇を尖らせ、ノートを見下ろしていた。
ページの端には、解きかけの計算式が並んでいる。

「ここな、ちょっとしたコツがあるんだ」
俺は身を乗り出し、彼女のノートにペンを走らせる。
真白はじっと俺の手元を見つめ、真剣に耳を傾けていた。

「……なるほど。えっと、ここをこう繋げて……」
「そうそう、その調子」

 小さく頷く彼女の表情は、緊張と集中が入り混じっていて、なんだか新鮮だった。
 普段は優しくて落ち着いた真白が、問題と格闘して眉を寄せる姿。
 その一生懸命さが、まっすぐ胸に刺さる。

「――できた!」
数分後、真白が解き終えたノートを俺に差し出してくる。
そこにはきれいに答えが導かれていた。

「おお、正解だ」
「やった……! 蒼真君のおかげだね」

 ぱあっと花が咲いたような笑顔。
 その表情を見ただけで、疲れなんて吹き飛んでしまう。

「いや、真白が自分で理解したからだろ。俺はちょっと手伝っただけ」
「……でも、嬉しい。こうやって一緒に頑張れるのって」

 少し照れながらも、真白はノートを抱きしめるように胸の前でぎゅっと持った。
 その仕草が妙に可愛くて、思わず喉が鳴りそうになる。

「なあ、真白」
「ん?」
「テスト終わったらさ、二人でどっか行こうぜ」
「えっ……」

 突然の提案に、真白は目を丸くする。
 そしてゆっくりと頬を染め、恥ずかしそうに笑った。

「……うん。楽しみにしてる」

 図書室の静けさの中で交わされた、小さな約束。
 それだけなのに、胸の奥がじんわりと熱を帯びていく。

(――よし。テストも、その先も。全部一緒に乗り越えていこうぜ、真白)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。

Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。 女の子に間違われる地味男子――白雲凪。 俺に与えられた役目はひとつ。 彼女を、学校へ連れて行くこと。 騒動になれば退学。 体育祭までに通わせられなくても退学。 成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。 距離は近い。 でも、心は遠い。 甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。 それでも―― 俺は彼女の手を引く。 退学リミット付き登校ミッションから始まる、 国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...