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第6章 春休みと、新しい季節
第83話「陽だまりのピクニックデート」
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ゴールデンウィークもいよいよ後半。
今日は少し遠出して、郊外の大きな公園に向かうことになっていた。
朝の待ち合わせ場所に現れた真白は、両手に小さな保冷バッグを抱えていて、開口一番に照れくさそうに言った。
「……その、今日はね。お弁当作ってきちゃった」
「マジで? わざわざ……」
「だ、だって……ピクニックっぽくした方が楽しいかなって思って」
頬をほんのり赤く染めながらバッグを持ち上げる仕草。
その一生懸命な表情に、胸の奥が温かくなる。
「ありがとう。楽しみにしてる」
「っ……う、嬉しい……。じゃあ、早く行こう」
電車を乗り継ぎ、バスに揺られて、広大な芝生と木立の広がる公園に到着した。
休日らしく家族連れやカップルも多いが、敷地が広いため人の波に押されることはない。
芝生の緑と空の青がどこまでも広がり、遠くから子どもたちの笑い声や犬の鳴き声が聞こえてきた。
「わぁ……広いね。気持ちいい!」
「都会の喧騒とは別世界だな」
真白が両腕を伸ばして深呼吸をする。
春の風にスカートがふわりと揺れ、その姿を見ているだけで心が和む。
木陰を見つけて、二人でレジャーシートを広げた。
バッグからお弁当箱を取り出す真白の手は、どこか緊張しているように見える。
「……あんまり上手じゃないかもしれないけど」
「真白の手作りってだけで、もう最高だろ」
「も、もう……そういうこと言わないで」
恥ずかしそうに目を逸らしながら、真白は蓋を開ける。
そこには彩り豊かな卵焼きやサンドイッチ、唐揚げがぎっしりと並んでいた。
「……すげぇ。店で売ってるのより豪華じゃん」
「ほ、ほんとに? 良かった……」
真白の安堵の笑顔に、また心臓が高鳴る。
真白が差し出してくれた卵焼きを箸で受け取る。
ひと口食べた瞬間、ほんのり甘くて、優しい味が口いっぱいに広がった。
「……うまい!」
「ほ、ほんとに?」
「ああ。これ、毎朝食べたいくらいだ」
「っ……もう、そういうこと言うのずるい」
真白は耳まで赤くしながらも、嬉しそうに笑った。
その姿を見て、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
(ゲームじゃ、こんな何気ない“昼食の時間”なんて描かれなかった。だけど今は――なんて幸せな時間なんだろう)
「次は唐揚げ食べてみて。揚げ物ちょっと苦戦したけど……」
「いただきます」
差し出された唐揚げを頬張る。
ジューシーな肉汁が広がり、思わず笑みがこぼれた。
「……これも最高だな」
「ふふっ、良かったぁ」
照れながら見守ってくれる真白の顔が、料理よりも美味しそうに見えてしまう。
そんな穏やかな時間の最中、不意に影が走った。
バサッ、と羽音がして、鳩の群れが近づいてきた。
一羽が弁当の唐揚げに狙いを定め、シートに舞い降りてくる。
「きゃっ!」
真白が小さく悲鳴を上げて俺の背に隠れる。
慌てて弁当箱を手で覆い、鳥を追い払った。
「おい、これは俺たちの昼飯だ! 退散しろ!」
声を張ると、鳩は不満そうに羽ばたき、芝生の向こうへ飛び去っていった。
真白はまだ俺の背にぴたりとくっついたまま。
柔らかな感触が肩甲骨あたりに当たり、心臓が思わず跳ねた。
(や、やばい……これ……! 背中に伝わってる……!)
守らなきゃ、と気を張っていたはずなのに、別の意味で全身が熱くなる。
理性では「動じるな」と言い聞かせても、体は正直だった。
「……びっくりしたぁ。おかず取られるかと思った」
「俺が守るから大丈夫だ。唐揚げも、真白も」
「なっ……!」
つい勢いで口に出してしまい、真白が顔を真っ赤にして拳で肩を小突く。
「……もう、からかわないで」
「本気だって」
そう返しながら、俺は必死に顔の緩みを押さえ込んだ。
(本当は、背中越しの柔らかさに舞い上がりそうなんだけど……絶対言えない!)
◇◇◇
日が傾き始め、公園の芝生が夕陽に照らされて金色に輝いていた。
弁当を食べ終えたあとも少しのんびりしていたけれど、帰りのバスの時間が気になり、俺たちは腰を上げた。
公園の出口に向かう道は、人影もまばらで静かだった。
並んで歩くと、真白がふいに俺の袖をつまんでくる。
「……ねえ、蒼真君」
「ん?」
「今日ね……すっごく楽しかった」
彼女の声は小さいけれど、どこか弾んでいた。
頬がほんのり赤く、夕陽の光でさらに柔らかく見える。
「俺も。真白のおかげだ」
「ふふ……そう言ってもらえると、頑張った甲斐があるな」
言葉を交わすたびに、自然と距離が縮まる。
袖をつまんでいた手が、やがて俺の手にそっと触れ、指先が絡んだ。
恋人繋ぎになった手のひらは、ほんのり汗ばんでいて、それがむしろ心地よい。
バス停に向かう途中、沈みかけの太陽が視界の端で揺れていた。
その光に照らされる真白の横顔は、どんな景色よりも眩しくて――
その笑顔を見ながら、ふと――さっき背中に伝わった柔らかな感触を思い出してしまう。
唐揚げを守ろうとして慌てて抱きつかれたときの、あの温もり。
(……やばい、思い出すだけで顔が緩む……!)
必死に堪えても、頬の筋肉が勝手に動いてしまう。
「……蒼真君?」
隣から訝しげな声。
「な、なんだよ」
「なんか……さっきからニヤニヤしてない?」
「き、気のせいだろ!」
慌てて目を逸らす俺を、真白はじとっと見つめた。
けれどやがて、ふいに小さく笑って袖をさらに強く握る。
「……まあ、楽しそうだからいいけど」
その一言に、今度は本当に心が緩む。
繋いだ手に力を込め、夕暮れの街を二人で歩き続けた。
今日は少し遠出して、郊外の大きな公園に向かうことになっていた。
朝の待ち合わせ場所に現れた真白は、両手に小さな保冷バッグを抱えていて、開口一番に照れくさそうに言った。
「……その、今日はね。お弁当作ってきちゃった」
「マジで? わざわざ……」
「だ、だって……ピクニックっぽくした方が楽しいかなって思って」
頬をほんのり赤く染めながらバッグを持ち上げる仕草。
その一生懸命な表情に、胸の奥が温かくなる。
「ありがとう。楽しみにしてる」
「っ……う、嬉しい……。じゃあ、早く行こう」
電車を乗り継ぎ、バスに揺られて、広大な芝生と木立の広がる公園に到着した。
休日らしく家族連れやカップルも多いが、敷地が広いため人の波に押されることはない。
芝生の緑と空の青がどこまでも広がり、遠くから子どもたちの笑い声や犬の鳴き声が聞こえてきた。
「わぁ……広いね。気持ちいい!」
「都会の喧騒とは別世界だな」
真白が両腕を伸ばして深呼吸をする。
春の風にスカートがふわりと揺れ、その姿を見ているだけで心が和む。
木陰を見つけて、二人でレジャーシートを広げた。
バッグからお弁当箱を取り出す真白の手は、どこか緊張しているように見える。
「……あんまり上手じゃないかもしれないけど」
「真白の手作りってだけで、もう最高だろ」
「も、もう……そういうこと言わないで」
恥ずかしそうに目を逸らしながら、真白は蓋を開ける。
そこには彩り豊かな卵焼きやサンドイッチ、唐揚げがぎっしりと並んでいた。
「……すげぇ。店で売ってるのより豪華じゃん」
「ほ、ほんとに? 良かった……」
真白の安堵の笑顔に、また心臓が高鳴る。
真白が差し出してくれた卵焼きを箸で受け取る。
ひと口食べた瞬間、ほんのり甘くて、優しい味が口いっぱいに広がった。
「……うまい!」
「ほ、ほんとに?」
「ああ。これ、毎朝食べたいくらいだ」
「っ……もう、そういうこと言うのずるい」
真白は耳まで赤くしながらも、嬉しそうに笑った。
その姿を見て、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
(ゲームじゃ、こんな何気ない“昼食の時間”なんて描かれなかった。だけど今は――なんて幸せな時間なんだろう)
「次は唐揚げ食べてみて。揚げ物ちょっと苦戦したけど……」
「いただきます」
差し出された唐揚げを頬張る。
ジューシーな肉汁が広がり、思わず笑みがこぼれた。
「……これも最高だな」
「ふふっ、良かったぁ」
照れながら見守ってくれる真白の顔が、料理よりも美味しそうに見えてしまう。
そんな穏やかな時間の最中、不意に影が走った。
バサッ、と羽音がして、鳩の群れが近づいてきた。
一羽が弁当の唐揚げに狙いを定め、シートに舞い降りてくる。
「きゃっ!」
真白が小さく悲鳴を上げて俺の背に隠れる。
慌てて弁当箱を手で覆い、鳥を追い払った。
「おい、これは俺たちの昼飯だ! 退散しろ!」
声を張ると、鳩は不満そうに羽ばたき、芝生の向こうへ飛び去っていった。
真白はまだ俺の背にぴたりとくっついたまま。
柔らかな感触が肩甲骨あたりに当たり、心臓が思わず跳ねた。
(や、やばい……これ……! 背中に伝わってる……!)
守らなきゃ、と気を張っていたはずなのに、別の意味で全身が熱くなる。
理性では「動じるな」と言い聞かせても、体は正直だった。
「……びっくりしたぁ。おかず取られるかと思った」
「俺が守るから大丈夫だ。唐揚げも、真白も」
「なっ……!」
つい勢いで口に出してしまい、真白が顔を真っ赤にして拳で肩を小突く。
「……もう、からかわないで」
「本気だって」
そう返しながら、俺は必死に顔の緩みを押さえ込んだ。
(本当は、背中越しの柔らかさに舞い上がりそうなんだけど……絶対言えない!)
◇◇◇
日が傾き始め、公園の芝生が夕陽に照らされて金色に輝いていた。
弁当を食べ終えたあとも少しのんびりしていたけれど、帰りのバスの時間が気になり、俺たちは腰を上げた。
公園の出口に向かう道は、人影もまばらで静かだった。
並んで歩くと、真白がふいに俺の袖をつまんでくる。
「……ねえ、蒼真君」
「ん?」
「今日ね……すっごく楽しかった」
彼女の声は小さいけれど、どこか弾んでいた。
頬がほんのり赤く、夕陽の光でさらに柔らかく見える。
「俺も。真白のおかげだ」
「ふふ……そう言ってもらえると、頑張った甲斐があるな」
言葉を交わすたびに、自然と距離が縮まる。
袖をつまんでいた手が、やがて俺の手にそっと触れ、指先が絡んだ。
恋人繋ぎになった手のひらは、ほんのり汗ばんでいて、それがむしろ心地よい。
バス停に向かう途中、沈みかけの太陽が視界の端で揺れていた。
その光に照らされる真白の横顔は、どんな景色よりも眩しくて――
その笑顔を見ながら、ふと――さっき背中に伝わった柔らかな感触を思い出してしまう。
唐揚げを守ろうとして慌てて抱きつかれたときの、あの温もり。
(……やばい、思い出すだけで顔が緩む……!)
必死に堪えても、頬の筋肉が勝手に動いてしまう。
「……蒼真君?」
隣から訝しげな声。
「な、なんだよ」
「なんか……さっきからニヤニヤしてない?」
「き、気のせいだろ!」
慌てて目を逸らす俺を、真白はじとっと見つめた。
けれどやがて、ふいに小さく笑って袖をさらに強く握る。
「……まあ、楽しそうだからいいけど」
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