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第7章 夏の思い出作り
第86話「休み明けのある日」
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俺は、新堂蒼真。
一見どこにでもいる普通の男子高校生――いや、正確には“前世でこの世界を知っている”転生者だ。
本来なら、俺の青春はとっくに最悪の寝取られゲーとして転がり落ちていたはずだった。
幼馴染の結城真白が、告白の直後に振られ、別の男に奪われてしまう――そんな地獄のようなルートが、この世界の既定路線。
だけど、俺はあの日、選んだ。
真白の告白を即座に受け入れ、この手を二度と離さないと決めた。
それからは、文化祭も、クリスマスも、お正月も。
真白と一緒に過ごし、笑い合い、少しずつ未来を塗り替えてきた。
そして、このゴールデンウィーク。
映画館、水族館、図書館、ピクニック、遊園地――どれも眩しいくらいに甘い時間だった。
そして連休の最終日。真白の家の玄関先で――
(……っ! いや、思い出すな!)
顔が熱くなるのを、慌てて振り払う。
ゴールデンウィークが明けた朝。
通学路に立つと、なんとなく空気が違って感じられた。
休み明け特有の重さを引きずっている生徒たちの中で、俺だけは胸の奥がやけに軽い。
家の前で待っていた真白が、制服のスカートをひらりと揺らしながら駆け寄ってきた。
「蒼真君、おはよう!」
「おはよう。……連休明けって、ちょっとだるいな」
「ふふ、わかる。でもね、また一緒に通学できるのはやっぱり嬉しい」
笑顔を向けられ、胸が高鳴る。
そして、不意に昨日の別れ際の記憶が蘇った。
頬に残った柔らかな感触。あれが夢じゃなかったことを、こうして隣を歩く彼女の顔が証明している。
「……どうしたの?」
隣の真白が不思議そうに覗き込んできた。
「いや、なんでもない。ただ……ちょっと思い出してた」
「思い出す?」
「昨日の……こと」
言った瞬間、真白の顔がぱっと赤く染まった。
「な、なな……っ! あれは、その……! あんまり深く考えないで!」
「考えるなって言われても……無理だろ」
お互いに赤くなり、視線を逸らす。
休み明けの朝なのに、俺たちの胸の内はまだ休日の延長みたいに甘かった。
休み明けの朝、校舎に入った瞬間にわかった。
どのクラスからも、ため息やら「だるいー」といった声が聞こえてくる。
黒板に「5月○日」と大きく書かれた日付が、現実を突きつけてきて、どの顔も少し眠たそうだ。
俺が真白と並んで教室に入ると、すぐに数人の男子がこちらを見つけてニヤリと笑った。
「おーい、新堂~。ゴールデンウィークはどうだったよ? やっぱりラブラブデート三昧?」
「写真の一枚でも配ってくれよな~」
「結城さん、連休明けなのにますます綺麗になってない?」
からかう声に、真白が慌てて顔を赤くし、俺の後ろに隠れるように立つ。
「ちょ、ちょっと……! そういうこと言わないでください!」
彼女の反応を見て、教室中からどっと笑いが起こった。
軽口に悪意はなく、どこか温かい茶化し方。
(……ありがたいな。俺たちの関係を、自然に受け入れてくれてるんだ)
席に着くと、斜め前の千佳がこちらを振り返った。
「ましろん、ほんっとわかりやすい顔してるよねぇ。……で? どこ行ったの?」
「ち、千佳ちゃんまで!」
「えへへ。気になるもん~。蒼真君、口軽くしてくれていいからね?」
「いや、そういうのは俺からじゃなくて本人から聞け」
「蒼真君っ!」
真白の小さな抗議の声が飛んできて、俺は思わず笑ってしまう。
周囲がわいわいと盛り上がる中、窓の外では初夏の風がカーテンを揺らしていた。
休みは終わったけど、この空気も、真白と一緒なら十分に甘い。
ホームルームが終わっても、教室全体にはまだ休み明けの気怠さが漂っていた。
「眠い……」
「まだ休みボケだわ」
「課題やってねぇ……」
あちこちからそんな声が上がり、誰も本気で動き出す気配がない。
俺の耳にも、そのだるげな声が心地よく響いてきた。
連休は終わったはずなのに、まだ少しだけ続きの余韻に浸っているような空気だ。
「で? 新堂~、結城さんとはどこ行ったんだよ」
「また水族館とか映画とか? もうネタ尽きてない?」
男子連中が机を寄せて冷やかしてくる。
「ちょ、ちょっと! そういう話を大声でしないで!」
真白が真っ赤になって手を振ると、教室中がまた笑いに包まれた。
その隣で千佳がニヤリと口角を上げる。
「ましろん、ほんとわかりやすいんだもん~。まあ、仲良しで何より♪」
「千佳ちゃんまで……!」
さらに、控えめに声をかけてきたのは紗和だった。
「……でも、楽しそうでよかったね」
その柔らかな言葉に、真白は照れ笑いしながら小さく頷いた。
やがてざわつきが落ち着いたころ、俺と真白は自然と机を寄せ、小声で話し始めた。
「……ねえ蒼真君。やっぱり、連休ってあっという間だったね」
「そうだな。でも、たくさん思い出できた。正直、まだ余韻で頭がいっぱいだ」
自分で言いながら、ふと昨日の夜――玄関先での“あの瞬間”が脳裏によみがえる。
頬に触れた柔らかな感触。真白の真っ赤な顔。そして「おやすみ」の一言。
(……っ、あああ思い出すな俺! 顔が熱くなる!)
「……蒼真君?」
隣から覗き込む声。
「か、顔が赤いよ? どうしたの?」
「いや、なんでもない。ただの……暑さ、かな」
「ふふっ。今日はそこまで暑くないよ?」
疑うように笑う真白に、俺は慌てて視線を逸らした。
(言えるか! 休み明け初日から“ほっぺにチューのこと思い出してました”なんて!)
元はサラリーマンだった俺だが、この体に転生してから思春期の精神に引っ張られてるみたいだ。
元々恋愛経験なんてある方じゃないしな……。
ああ、それにしても……真白の唇、柔らかかったなぁ……。
休み明けの教室はざわついているはずなのに、俺たちの席だけが別世界のように静かだった。
日常に戻ったはずなのに、もう何も“普通”じゃない。
真白が隣にいるだけで、何気ない時間が全部、特別になっていく。
一見どこにでもいる普通の男子高校生――いや、正確には“前世でこの世界を知っている”転生者だ。
本来なら、俺の青春はとっくに最悪の寝取られゲーとして転がり落ちていたはずだった。
幼馴染の結城真白が、告白の直後に振られ、別の男に奪われてしまう――そんな地獄のようなルートが、この世界の既定路線。
だけど、俺はあの日、選んだ。
真白の告白を即座に受け入れ、この手を二度と離さないと決めた。
それからは、文化祭も、クリスマスも、お正月も。
真白と一緒に過ごし、笑い合い、少しずつ未来を塗り替えてきた。
そして、このゴールデンウィーク。
映画館、水族館、図書館、ピクニック、遊園地――どれも眩しいくらいに甘い時間だった。
そして連休の最終日。真白の家の玄関先で――
(……っ! いや、思い出すな!)
顔が熱くなるのを、慌てて振り払う。
ゴールデンウィークが明けた朝。
通学路に立つと、なんとなく空気が違って感じられた。
休み明け特有の重さを引きずっている生徒たちの中で、俺だけは胸の奥がやけに軽い。
家の前で待っていた真白が、制服のスカートをひらりと揺らしながら駆け寄ってきた。
「蒼真君、おはよう!」
「おはよう。……連休明けって、ちょっとだるいな」
「ふふ、わかる。でもね、また一緒に通学できるのはやっぱり嬉しい」
笑顔を向けられ、胸が高鳴る。
そして、不意に昨日の別れ際の記憶が蘇った。
頬に残った柔らかな感触。あれが夢じゃなかったことを、こうして隣を歩く彼女の顔が証明している。
「……どうしたの?」
隣の真白が不思議そうに覗き込んできた。
「いや、なんでもない。ただ……ちょっと思い出してた」
「思い出す?」
「昨日の……こと」
言った瞬間、真白の顔がぱっと赤く染まった。
「な、なな……っ! あれは、その……! あんまり深く考えないで!」
「考えるなって言われても……無理だろ」
お互いに赤くなり、視線を逸らす。
休み明けの朝なのに、俺たちの胸の内はまだ休日の延長みたいに甘かった。
休み明けの朝、校舎に入った瞬間にわかった。
どのクラスからも、ため息やら「だるいー」といった声が聞こえてくる。
黒板に「5月○日」と大きく書かれた日付が、現実を突きつけてきて、どの顔も少し眠たそうだ。
俺が真白と並んで教室に入ると、すぐに数人の男子がこちらを見つけてニヤリと笑った。
「おーい、新堂~。ゴールデンウィークはどうだったよ? やっぱりラブラブデート三昧?」
「写真の一枚でも配ってくれよな~」
「結城さん、連休明けなのにますます綺麗になってない?」
からかう声に、真白が慌てて顔を赤くし、俺の後ろに隠れるように立つ。
「ちょ、ちょっと……! そういうこと言わないでください!」
彼女の反応を見て、教室中からどっと笑いが起こった。
軽口に悪意はなく、どこか温かい茶化し方。
(……ありがたいな。俺たちの関係を、自然に受け入れてくれてるんだ)
席に着くと、斜め前の千佳がこちらを振り返った。
「ましろん、ほんっとわかりやすい顔してるよねぇ。……で? どこ行ったの?」
「ち、千佳ちゃんまで!」
「えへへ。気になるもん~。蒼真君、口軽くしてくれていいからね?」
「いや、そういうのは俺からじゃなくて本人から聞け」
「蒼真君っ!」
真白の小さな抗議の声が飛んできて、俺は思わず笑ってしまう。
周囲がわいわいと盛り上がる中、窓の外では初夏の風がカーテンを揺らしていた。
休みは終わったけど、この空気も、真白と一緒なら十分に甘い。
ホームルームが終わっても、教室全体にはまだ休み明けの気怠さが漂っていた。
「眠い……」
「まだ休みボケだわ」
「課題やってねぇ……」
あちこちからそんな声が上がり、誰も本気で動き出す気配がない。
俺の耳にも、そのだるげな声が心地よく響いてきた。
連休は終わったはずなのに、まだ少しだけ続きの余韻に浸っているような空気だ。
「で? 新堂~、結城さんとはどこ行ったんだよ」
「また水族館とか映画とか? もうネタ尽きてない?」
男子連中が机を寄せて冷やかしてくる。
「ちょ、ちょっと! そういう話を大声でしないで!」
真白が真っ赤になって手を振ると、教室中がまた笑いに包まれた。
その隣で千佳がニヤリと口角を上げる。
「ましろん、ほんとわかりやすいんだもん~。まあ、仲良しで何より♪」
「千佳ちゃんまで……!」
さらに、控えめに声をかけてきたのは紗和だった。
「……でも、楽しそうでよかったね」
その柔らかな言葉に、真白は照れ笑いしながら小さく頷いた。
やがてざわつきが落ち着いたころ、俺と真白は自然と机を寄せ、小声で話し始めた。
「……ねえ蒼真君。やっぱり、連休ってあっという間だったね」
「そうだな。でも、たくさん思い出できた。正直、まだ余韻で頭がいっぱいだ」
自分で言いながら、ふと昨日の夜――玄関先での“あの瞬間”が脳裏によみがえる。
頬に触れた柔らかな感触。真白の真っ赤な顔。そして「おやすみ」の一言。
(……っ、あああ思い出すな俺! 顔が熱くなる!)
「……蒼真君?」
隣から覗き込む声。
「か、顔が赤いよ? どうしたの?」
「いや、なんでもない。ただの……暑さ、かな」
「ふふっ。今日はそこまで暑くないよ?」
疑うように笑う真白に、俺は慌てて視線を逸らした。
(言えるか! 休み明け初日から“ほっぺにチューのこと思い出してました”なんて!)
元はサラリーマンだった俺だが、この体に転生してから思春期の精神に引っ張られてるみたいだ。
元々恋愛経験なんてある方じゃないしな……。
ああ、それにしても……真白の唇、柔らかかったなぁ……。
休み明けの教室はざわついているはずなのに、俺たちの席だけが別世界のように静かだった。
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