前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第7章 夏の思い出作り

第92話「濡れた空と新しい約束」

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 翌朝。
 カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
 窓の外では、昨夜の雨が嘘みたいに止んでいて、屋根の水滴がきらきらと光を反射している。
 湿った空気が部屋の中に入り込んで、少しだけ冷たい。
 カーテンを開けると、雲の合間から射し込む陽射しがまぶしく、どこか新しい朝の匂いがした。

「……晴れた、か」

 呟いた声が部屋の静けさに吸い込まれていく。
 傘に当たる雨の音が耳に残っている。
 昨日の帰り道――あの傘の中での距離感、真白の横顔、濡れた髪。
 どれも現実とは思えないくらい、心の中で鮮明だった。

 スマホの通知が鳴る。
 画面を見ると、真白からのメッセージ。

『おはよう☀ 今日、すごく晴れてるね』
『傘、ありがとう! ちゃんと乾かして返すね』

 思わず口元が緩む。
 短い文面なのに、あの時の声まで聞こえてくるようだった。

『おはよう。傘はそのままでいいよ。また一緒に帰る時使えば』
『ふふ、じゃあ預かり傘ってことにするね☂️』

 メッセージの最後に添えられた絵文字が、やけに柔らかく見えた。

 学校に向かう道。
 雨上がりの通学路は、いつもの景色が少し違って見えた。
 濡れたアスファルトに朝日が反射し、街路樹の葉にはまだ水滴が残っている。
 そのひとつひとつが光を受けて、小さな宝石みたいに輝いていた。

 歩くたびに、足元で水たまりが波紋を広げる。
 前を歩く学生たちの話し声が遠くで響く中、ふと視界の端に見慣れた髪の色が揺れた。

「おはよう、蒼真君!」

 振り返ると、真白が制服の袖を少し折って、明るい笑顔を浮かべていた。
 朝の光を背に受けて、その姿がやけに眩しく見える。

「おはよう。昨日の雨、すごかったな」
「うん。でも……蒼真君と一緒だったから、あんまり嫌じゃなかった」
「そりゃ良かった」
「それにね、今日みたいに晴れたら、昨日の雨も悪くなかったって思える」

 真白が微笑みながらそう言って、少しだけ空を見上げた。
 白い雲の向こうに広がる青が、まるで新しい季節の幕開けを告げているようだった。

 並んで歩く道すがら、真白が小さく言った。
「ねえ、梅雨の間、また一緒に帰ってもいい?」
「もちろん」
「じゃあ、今日も……一緒に帰ろ?」
「いいよ。天気がどうでも、俺は真白の傘に入るつもりだから」

「も、もう……またそういうこと言って……」
 真白が頬を赤く染め、うつむきながら笑う。

 その笑顔が、朝の光に照らされて本当に綺麗だった。
 何気ない会話なのに、胸の奥で小さな灯りがともる。

 学校の門が見えてきた。
 グラウンドの芝生が濡れていて、風に乗って土と緑の香りが混ざり合う。
 新しい一日の始まり――
 それは昨日の雨が残したしずくが、静かに輝きながら未来へ繋がっていくような朝だった。

 俺は隣を歩く真白の横顔を見ながら、小さく呟く。
「……今日も、いい日になりそうだな」
「うん、私もそう思う」

 二人の声が、澄んだ空に溶けていった。


◇◇◇

 昼休みを少し過ぎた頃。
 朝から晴れていた空が、いつのまにか薄い雲に覆われていた。
 グラウンドでは体育の授業が終わり、濡れた芝生の上にかすかな蒸気が立ちのぼっている。
 夏が近い。けれど梅雨は、まだしばらく居座る気らしい。

「ねえ、蒼真君」
「ん?」
「お昼、屋上で食べない?」
「屋上?」
「うん。風が気持ちいいと思うの」

 真白のその提案に、俺は思わず笑ってしまった。
 たしかに彼女らしい――静かで、人の少ない場所が好きなタイプだ。

 昼休みのチャイムが鳴ると同時に、俺たちは弁当を手に屋上へ向かった。
 鍵は開いていて、金属のドアを押すと柔らかな風が頬を撫でる。
 空はまだ明るく、雲の切れ間から薄日が差していた。

 屋上の片隅、フェンス越しに街を見下ろす。
 グラウンドの向こうに、商店街の屋根が遠く霞んでいる。
 昼の喧騒が小さく聞こえて、ここだけ別の時間が流れているようだった。

「やっぱり、来てよかったね」
「そうだな。風、気持ちいい」
「それに……」
 真白が小さく笑って言葉を続けた。
「こうして上から見る景色って、なんか“がんばろう”って思えるの」

「真白らしいな」
「ふふ、褒め言葉だと思っておくね」

 風が吹き、真白の髪が揺れる。
 その柔らかな香りが一瞬だけ俺の頬をくすぐった。
 弁当を食べ終え、空を見上げていた時だった。
 ぽつり、と冷たいものが頬に落ちた。

「……あれ?」
 真白が顔を上げる。
 灰色の雲が、思ったよりも早く近づいてきている。
 もう一粒、二粒――そして、雨。

「うそ、また降ってきたの!?」
「まさか屋上で雨宿りになるとはな」
「どうしよう……!」

 俺たちは慌ててフェンスの陰に身を寄せる。
 傘はもちろんない。
 でも、ここは屋上。逃げ場はなく、雨音だけが周囲を包み込んでいく。

 しばらくすると、雨脚は少しだけ落ち着いた。
 校舎の上を叩く音が、遠くから心地よく響く。
 真白はフェンスにもたれかかり、空を見上げた。

「……こうして見ると、雨も悪くないね」
「昨日もそんなこと言ってたな」
「えへへ、気づいちゃった?」

 真白がこちらを見て、少し照れたように笑う。
 雨粒が髪に落ちて、光を受けて小さくきらめいた。
 その瞬間、心の奥で何かがきゅっと鳴った。

「ねえ、蒼真君」
「ん?」
「私、今すごく楽しいよ」
「……雨の中で?」
「うん。だって、雨の日も晴れの日も、蒼真君が隣にいるから」

 その言葉は、雨音よりも小さいのに、真っすぐ届いた。
 思わず息を呑む。
 何かを返そうとして、でも言葉が見つからない。

 代わりに、そっと真白の肩にタオルを掛けた。
「風邪ひくなよ」
「……ありがと」
 彼女は小さく頷いて、タオルの端を握りしめた。

 雨は次第にやみ、灰色の雲の切れ間から光が射し込む。
 校舎の屋根や街路樹が濡れたまま輝き、世界がひとつ息を吹き返したようだった。

「ほら、晴れてきた」
「ほんとだ……雨上がりの匂いって、好き」
「俺も」

 フェンス越しに見える街が、まるで洗い流されたみたいに澄んでいた。
 真白が隣で小さく呟く。
「ねえ蒼真君、次に雨が降ったら、また屋上来ようね」
「約束する」

 その声が、晴れ始めた空に溶けていく。
 濡れた屋上に残る二つの影が、光の中でゆっくりと重なっていた。



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