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18 運命だなんてよくわかりません
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最初の頃に抱いた警戒心も不快感も、もはや今のライシスには感じない。
ディミエルはコクリと頷いた。途端に彼は満面の笑みを見せる。
「じゃ、行こうか」
さりげなく手を取られても、振り払う気になれない。ディミエルは、ドキドキと早まる鼓動を持て余していた。
公園を出て、町の出口へと連れ立って歩いていく。
「……貴方は、私のどこがそんなにいいと思ったの? 顔、それとも髪や瞳の色? まさか……胸?」
最初に出会った時の反応は、いかにも一目惚れっぽかった。
ディミエルは胸とスタイル、それから髪は派手な形をしているけれど、絶世の美女というわけではない。
友達にはかわいいと言われることもあるという程度の、探せばその辺で見つかる十人並の顔をしていると、自覚している。
だから疑問に思って聞いてみたのだが、ライシスはとんでもないと首を勢いよく振った。
「違うって、見た目で惹かれたんじゃない。いや、かわいいし今日なんてとても綺麗だと思うよ、だけどそうじゃなくて……」
ライシスは迷う様に言葉を切った。森への道を踏み出しながら、ゆっくりと振り向く。
「前にも伝えたけれど、俺は君に運命を感じたんだ。一目見た瞬間、絶対に君しかいないと思った」
その真剣な声音には、嘘がない様に感じた。
(でも、運命だなんて……)
ディミエルにはよくわからない感覚だった。ネーナと初めて会った時、仲良くなれそうだなって会った瞬間に思ったけれど、それと似ているのだろうか。
「ディミーちゃんのことを、知れば知るほどもっと近づきたいって思うんだ。なんでだろうな、自分でもよくわからない。だけど俺は、君のことが好きだ」
好き、だなんて。ライシスの口からはっきりと好意を示されて、ディミエルの心臓はドキドキと鼓動を早めた。
「だからさ、今日こうやって二人でデートできて、すごく楽しかった。またデートしてくれよな?」
「それは……まあ、うん、私も楽しかったから……」
「本当か!? だったらぜひ! 次はどこに行きたい? 町の中だけじゃなくて、森を歩くのもディミーちゃんなら好きそうだよな」
「森は好きよ。町の中も嫌いじゃないけど、人目が気になるし……今度一緒に森をお散歩するのはどう?」
「いいね。そうしよう」
ライシスの輝くような笑顔が、胸に焼きついて離れない。
(どうしちゃったんだろう、私。なんだか調子が狂うわ)
カッコよくて自然が好きで、ディミエルの仕事にも理解があって、自分を好きになってからは一途に振る舞ってくれている上に、見た目が目当てでもないなんて。
ひょっとして、こんなにもディミエルにとって理想的な相手は、他にいないのではないか。
この人なら恋をしていいのかもしれないと、自分の心にかけていた扉の鍵を開けると、途端にライシスのことがすごく魅力的に思えてきた。
そっと彼の横顔を見上げると、甘い微笑みを返してくれる。
(ひゃあ……や、やめて。心臓が保たない)
緊張して早足になるディミエルの行く手を、ライシスが止めた。
「待ってくれ、何かいる。魔物か?」
ハッと足を止めると、ガサガサと茂みの奥から魔物が飛び出してきた。
「はっ!」
ライシスが素早く前に走り出て、剣を振り抜く。ギエッと声を上げた山羊のような魔物は、一目散に逃げていった。
「あれは……なんでこんなところに、山羊型の魔物がいるんだ? この森には兎型や猪型の魔物が出るけど、山羊型なんて出ないはずなのに」
剣先を振って鞘に戻すライシスは、一連の動きに無駄がない。思わず見惚れていたディミエルは、慌てて言葉を返した。
「そういえば、変だね……ああいう魔物は、故郷の森で多く見た気がする」
「何か嫌な感じがするな……念のため、ギルドに報告しておくか」
魔物の分布に、異変が起きているのかもしれない。新しく薬を作り直す必要があるかもしれないと、頭の隅にメモをしておいた。
ディミエルはコクリと頷いた。途端に彼は満面の笑みを見せる。
「じゃ、行こうか」
さりげなく手を取られても、振り払う気になれない。ディミエルは、ドキドキと早まる鼓動を持て余していた。
公園を出て、町の出口へと連れ立って歩いていく。
「……貴方は、私のどこがそんなにいいと思ったの? 顔、それとも髪や瞳の色? まさか……胸?」
最初に出会った時の反応は、いかにも一目惚れっぽかった。
ディミエルは胸とスタイル、それから髪は派手な形をしているけれど、絶世の美女というわけではない。
友達にはかわいいと言われることもあるという程度の、探せばその辺で見つかる十人並の顔をしていると、自覚している。
だから疑問に思って聞いてみたのだが、ライシスはとんでもないと首を勢いよく振った。
「違うって、見た目で惹かれたんじゃない。いや、かわいいし今日なんてとても綺麗だと思うよ、だけどそうじゃなくて……」
ライシスは迷う様に言葉を切った。森への道を踏み出しながら、ゆっくりと振り向く。
「前にも伝えたけれど、俺は君に運命を感じたんだ。一目見た瞬間、絶対に君しかいないと思った」
その真剣な声音には、嘘がない様に感じた。
(でも、運命だなんて……)
ディミエルにはよくわからない感覚だった。ネーナと初めて会った時、仲良くなれそうだなって会った瞬間に思ったけれど、それと似ているのだろうか。
「ディミーちゃんのことを、知れば知るほどもっと近づきたいって思うんだ。なんでだろうな、自分でもよくわからない。だけど俺は、君のことが好きだ」
好き、だなんて。ライシスの口からはっきりと好意を示されて、ディミエルの心臓はドキドキと鼓動を早めた。
「だからさ、今日こうやって二人でデートできて、すごく楽しかった。またデートしてくれよな?」
「それは……まあ、うん、私も楽しかったから……」
「本当か!? だったらぜひ! 次はどこに行きたい? 町の中だけじゃなくて、森を歩くのもディミーちゃんなら好きそうだよな」
「森は好きよ。町の中も嫌いじゃないけど、人目が気になるし……今度一緒に森をお散歩するのはどう?」
「いいね。そうしよう」
ライシスの輝くような笑顔が、胸に焼きついて離れない。
(どうしちゃったんだろう、私。なんだか調子が狂うわ)
カッコよくて自然が好きで、ディミエルの仕事にも理解があって、自分を好きになってからは一途に振る舞ってくれている上に、見た目が目当てでもないなんて。
ひょっとして、こんなにもディミエルにとって理想的な相手は、他にいないのではないか。
この人なら恋をしていいのかもしれないと、自分の心にかけていた扉の鍵を開けると、途端にライシスのことがすごく魅力的に思えてきた。
そっと彼の横顔を見上げると、甘い微笑みを返してくれる。
(ひゃあ……や、やめて。心臓が保たない)
緊張して早足になるディミエルの行く手を、ライシスが止めた。
「待ってくれ、何かいる。魔物か?」
ハッと足を止めると、ガサガサと茂みの奥から魔物が飛び出してきた。
「はっ!」
ライシスが素早く前に走り出て、剣を振り抜く。ギエッと声を上げた山羊のような魔物は、一目散に逃げていった。
「あれは……なんでこんなところに、山羊型の魔物がいるんだ? この森には兎型や猪型の魔物が出るけど、山羊型なんて出ないはずなのに」
剣先を振って鞘に戻すライシスは、一連の動きに無駄がない。思わず見惚れていたディミエルは、慌てて言葉を返した。
「そういえば、変だね……ああいう魔物は、故郷の森で多く見た気がする」
「何か嫌な感じがするな……念のため、ギルドに報告しておくか」
魔物の分布に、異変が起きているのかもしれない。新しく薬を作り直す必要があるかもしれないと、頭の隅にメモをしておいた。
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