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33 うわあ、会いたかった!

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 ディミエルとライシスは一瞬見つめあった。思いきり目を見張っていたライシスは、ディミエルの腕を掴んでいるセレストに視線を移した。

 彼はカツカツと踵を鳴らして歩み寄ってきた。騎士が慌てて後ろをついてくる。

「君は確か、カーフェレン伯爵家のセレストだね。彼女に何をしていたんだ?」
「貴女様は、まさか……ライセルファランド殿下?」
「そうだよ」

 ディミエルは溢れ落ちそうなほど、目をまん丸にした。

(えっ、ライシスが殿下? そうよね、天幕から出てきてたし王子様なんだよね……ええっ!? 私、王子様に恋しちゃったの!?)

 びっくりしすぎて口を聞けないでいると、セレストは勝ち誇ったようにディミエルの体を引き寄せた。離れようとするけれど、ガッチリと胸の下に腕を回されてしまう。

「そうでしたか。先日は殿下だと気づかずに、無礼を働いてしまい申し訳ありません。本日も殿下を煩わせるつもりはありませんので、どうかお引き取りください。僕は妻を迎えに来ただけなのです」
「妻? ディミーが?」
「ええ。正式に伯爵より許可をいただきましたので、近日中に結婚証明書を提出する予定でいますよ」
「ディミー、本当か?」
「私は納得してないわ、彼と結婚するつもりだってない!」
「ディミエルは恥ずかしがっているだけです。その証拠にほら、私が触っても殿下の作らせた守護の魔石は、発動しないでしょう?」
「ディミー……」

 ライシスは苦しそうに、ディミエルの顔を見つめた。信じてほしくて、必死でセレストの腕から逃れようとする。

 動く度に胸が彼の腕に当たって、すごく嫌だけれど何度も身を捩った。

「騙されないで、ライシス! 私はセレスト様と結婚する気なんてないの!」
「ディミエル、恥ずかしいからってあまり拒否されると、僕も傷つきます。夫以外に助けを求めるのも感心しませんね。もっと素直になっていただきたいものです」
「これ以上ないほど素直だわ! 私は、貴方と結婚したくない!」
「……ディミーを離せ、セレスト」
「ライシス! 助けて!」

 本当に嫌がっているのが伝わったらしい。泣きそうな顔で助けを求めると、頷き返してくれた。

「嫌がるディミーに無理強いするようなら、俺は君に決闘を申し込むよ。今すぐ彼女を開放するんだ」
「これは家庭内の問題です。いくら殿下といえども、口を出されるのは野暮ですよ? 親しげにディミーと呼ぶのもよしてください、不愉快です」
「つまり、あくまでも彼女を離すつもりはないってことだな?」
「もちろんです。やっと手に入れたんだ、手放すわけないでしょう」

 フンと鼻で笑ったセレストに、ライシスは眉間の皺を深くする。

「彼女は物じゃない……意思のある人間だ。これが最後の通告だ、セレスト。ディミーを離せ」
「ねえ、遅いよライシス。何してるの?」

 呑気な声が、緊迫した空気をぶった斬った。更にもう一人、天幕の中から歩み出てくる。

 ほっそりとした肢体で華奢な体つきをしているが、騎士の格好をして帯剣している。

 胸もないし、パッと見た感じ性別に迷うけれど、とても綺麗で、妖精のような愛らしい顔立ちをしていた。

 煌びやかな金の髪はポニーテールにされていて、どことなく見覚えがある。

 ゆっくりとディミエル達の方にやってきたその人物は、セレストを見て目を輝かせた。

「えっ、この粘着質そうな美形、すっごい好みなんだけど?」
「は? 誰ですか貴方」
「わたくしはリリーシェルロナ・フェン・リーフェレイア。こんな格好で失礼、これでも一応城では姫って呼ばれてるの」
「リリーシェルロナ姫……!?」
「リリーって呼んで。ねえライシス、彼はどこの誰さん?」
「セレストっていうらしいよ。カーフェレン伯爵家の子息だ」
「ふうん、セレストか。名前は涼しげなのね、ギャップがあっていいわ」

 王子に続いて姫まで現れてしまった。ディミエルの頭はもはやパンク寸前だ。

 呆然としていると、リリーの登場で気が削がれたらしいセレストの腕から、ライシスがディミエルのことを取り返してくれた。
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