オメガパンダの獣人は麒麟皇帝の運命の番

兎騎かなで

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オメガの華族

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 体つきも華奢だと全身に視線を巡らせ、宇天のほっそりとした首に、高級そうな白い首輪が巻かれていることに気がついた。

「君もオメガなの?」
「そうさ。白露もでしょう? こっちに座って話そうよ」

 自分以外のオメガに初めて出会った白露は、俄然がぜんこの少年に興味が湧いた。いそいそと竹の腰掛けに座ろうとして、魅音に止められる。

「白露様、みだりに初対面の方のお隣に座るのはおやめになった方がよろしいかと」
「そうなの?」

 宇天は魅音の訴えを聞いてムッと唇を尖らせた。

「付き人風情が、上流華族であるボクのすることに口を出さないでくれる?」
「申し訳ありません、ですが……」

 魅音はためらうように口をつぐんだ。白露は宇天を観察する。帯も衿も銀糸が縫い込まれた高価そうな深衣を着ていた。背後には付き人もこっそり立っていて、わがままな主人ですみませんと言いたげな表情で頭を下げてくる。

 宇天は瞳を怒らせて腕を組んでいる。白露はこそっと魅音に耳打ちした。

「彼は本当に華族の人で、危ない人とか不審者じゃないんだよね?」
「はい、それは間違いございません」
「だったら、少しだけお話させて。僕も宇天の話を聞いてみたいんだ。どうしてもダメだったら無理にとは言わないけど」

 猫の耳が忙しなく動いて、魅音は狐護衛に目配せをした。護衛が眉をしかめながらも頷くと、魅音も渋々といった様子で許可を出してくれる。

(なんだろう、僕が他の人と関わるのはいけないことなんだろうか)

 とにかく今回は話してもいいのだろうと判断して宇天の隣に座った。テン獣人の少年は面白くなさそうに魅音と護衛に視線をやった。

「キミの付き人は随分と過保護なんだね」
「僕が物知らずだから心配してくれているんだよ」
「笹の葉っぱを城内庭園で食べるくらいだものね、相当な世間知らずだ!」

 宇天は笑いが堪えきれないといった様子でお腹を押さえた。もっと勉強しなきゃなあと白露は困ったように頬を掻く。ふわふわの黄色い尻尾を機嫌よさそうに振りながら、宇天は目を細めた。

「ねえ。ボクが皇都華族の常識を教えてあげようか」
「ほんと? 助かるよ!」

 嬉しくて満面の笑みで返答すると、宇天は満更でもなさそうにふふんとほくそ笑んだ。彼の話は白露にとって全く知らない世界の出来事のようで、とても興味深い。

 特に白露の興味を引いたのはオメガについての話だ。宇天にはもう発情期がきているらしい。宇天は足をぶらぶら遊ばせながら大袈裟に嘆く。

「発情期ってすごく辛いよねえ。オメガに生まれたからにはしょうがないことだけど、抑制剤を飲むと体が怠くて仕方がないし、飲まなかったらしたくてたまらなくなって、他のことに集中できなくなるから困ったものだよね」
「そうなんだ。僕はまだ発情期が来ていないからよくわからないけど、大変そうだなあ」

 宇天は大きな目をさらにまん丸に見開いて、驚きを示した。

「まだ来てないの⁉︎ 変なのー、キミはボクより年上に見えるけど」
「やっぱり変だよね」

 白露は苦笑しながら俯いた。身体はなんともないし、発情期になると大変そうだから成り行きに任せればいいかなと思っていたけれど、変だと言われると気になってくる。

(琉麒も僕と番になるためには発情期が来ないといけないって言っていたから、早く来るといいな)

 どうすれば発情期が来るんだろう。白露は宇天の首輪を見下ろしながら尋ねた。

「宇天が発情期になった時はどんな感じだった?」
「どんなって、他のオメガと大体一緒だと思うけど? 最近怠いな、体も暑いし病気かなって部屋で休んでいたら、だんだんエッチなことがしたくてたまらなくなってきたんだ。抑制剤を飲んだらすぐ治ったけどね」

 事もなさげに告げられて、白露は宇天のことが羨ましくなった。もしも普通のオメガだったなら、今頃琉麒とも番になれていたかもしれないのに。

 眉根を下げて考えこんでいると、宇天は軽い調子で励ましてくれた。

「まあそのうち来るんじゃない? 気にしすぎるのもよくないから、自分磨きでもしてればいいと思う。後生おそるべしって言うでしょ?」
「えっ、なんて?」

 また知らない言葉だ、華族の使うことわざだろうか。宇天は怪訝そうな顔をしながらも教えてくれた。

「忘れちゃったの? 若者には無限の可能性があるけど、それが開花するとは限らないからちゃんと頑張ろうねって意味でしょ」
「そうなんだ、勉強になるなあ」

 白露が関心していると、宇天はえっへんと胸を張って誇らし気に語った。

「オメガたるもの華族言葉に精通し、芸事に秀でていなくてはね。ボクは笙の他に琴も習っているよ」
「すごいね、僕は楽器なんて弾いたことない」
「キミの家ってどういう教育をしてるの。教師を雇うお金もなかったわけ?」

 華族は教師から楽器を習うものなんだと内心驚きながら、白露がただの庶民だと知って話をしてもらえなくなったら困るので、ぼかしながら伝えた。

「誰かに伝承とか簡単な計算を習うことはあったけど、教える専門家の人から習ったことはないよ」
「かわいそう、すごく貧乏なんだね。家が没落中なの? その割にはいい服を着ているけれど」

 宇天の視線が銀の刺繍に移る。白露も腕を伸ばして柄を見た。
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