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18 平和な日常
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和やかなお茶会を終えて、アレッタは再びマイムを伴い中庭から退出した。
「マイムも演奏を聴いていた? ロイスのリラハープの音色、とても素晴らしかったよね」
「もちろんお二人の演奏は耳を大きくして聴いておりましたよ! アレッタ様の歌声、繊細で温かくてとても癒されました……」
うっとりとした様子のマイム。そんなに私の歌を気に入ってくれたんだ。
嬉しいやら恥ずかしいやらでアレッタは赤面した。
「も、もう。私は自分の歌じゃなくてロイスのハープのことを聞いたのよ? でも、ありがとう」
「ロイス様は……私、あの方はちょっと苦手ですけど、あの方の弾かれるハープの音は素敵だと思います」
マイムから意外なことを聞いて、アレッタは軽く目を見張った。
ええ? あんなに穏やかで知的で大人な男性なのに、どこが苦手なの? 完璧すぎて気後れしちゃうとかならわかるけれど。
「マイムはロイスが苦手なの?」
マイムはキョロキョロと廊下を見渡し、誰もいないことを確認してから耳元でこっそりと教えてくれた。
「はい、だって怖いじゃないですか。元々人間さんだったっていうのもありますけど、笑っているのに内心怒っていたりすることのある方なので……」
おどおどしながらも教えてくれたマイムは、ハッとなにかに気づいたように顔を上げた。
「あ! こんなこと私が言ってたなんてロイス様には内緒ですよ? それに人間さんだからといってアレッタ様が怖くないのは本当です!」
「うん、わかってるよ」
「ア、アレッタ様~」
マイムが動揺しているので、アレッタはなだめるために水色の頭を撫でてみた。アレッタよりかなり背が低いので撫でやすい。
「うう、癒されました……ありがとうございます」
「どういたしまして、元気でたかな?」
「は、はい」
部屋にアレッタを送り届けたマイムは、おおお茶を淹れて参ります! とどもりながら去っていった。
お茶ならさっき飲んだよ、と止める間もなく行ってしまう。
……うーん、なんだか悪いことを聞いちゃったな。
普段は控えめな雰囲気ながら落ち着いていて、気配りも完璧なマイムだけど、人間関係のことで落ち着かなくなると吃音がでるほど動揺してしまうらしい。
マイム相手には、人間の話やロイスの話はあまりしない方がいいみたい。気をつけよう。
しばらくして戻ってきたマイムは、さっきお茶会でお茶を飲んだからもういらないですよね……とシュンと落ちこみながらポットを持ってきたので、アレッタはクスリと笑ってカップを要求した。
*
その後も数日間、マイムに手伝ってもらいながら図書館に通ったアレッタ。
やはり妖精が見える人間というのは、皆魔力を持っているものらしい。けれど魔力や人間に関する書籍は難しいものが多くて、文字を勉強してからでないと本格的に読むのは難しそうだった。
まずは文字を覚えるためと絵本をマイムに読んでもらいながら字を勉強したが、それだけでもたくさん妖精のことについて知ることができた。
本を読むのは妖精についての新しい発見がたくさんあって面白かったものの、読めば読むほど実際に今生きている妖精さん達の暮らしぶりについて知りたくなってしまった。
妖精のお伽噺、とてもおもしろかったな。人間界の童話は怖い話が多いけど、妖精さんの絵本のお話はほのぼのしているのね。
森の中にどんどん花畑を作って、お水が足りなくなるから池を作って、暮らしやすいように家を作って、みんなでツリーハウスに暮らす童話とかかわいかったな。
ちょっと田舎に行ったら今でもツリーハウスに住んでる人がいるってマイムは言ってたけど、本物はどんな感じなのかしら。
ちょっと町に出かけて……とか、できるのかな? 田舎に行くのは一日じゃ無理だろうけど、私もっと妖精さんのことについて実際に目で見て知りたいわ。
ためしに夕食を共にするユースに町に外出していいか聞いてみると、
「町に外出か、いつでもしてくれて構わない。念のためにルーチェを連れていくといい」
「え、いいの?」
あっさりと外出許可が出た。
「ああ、構わない。そもそも妖精界は平和だからな。人間界の王族は暗殺やら王位継承がどうのと命を狙われることもあると聞くが、妖精界ではほぼ起こり得ないことだ」
「それは、妖精の王族を害しても妖精さん達にとってなにもいいことがないから?」
「そうだ。誰だってわざわざ汚れた大気の中に住んだり、寒さに凍えたり濁った水を飲んで腹を下したりはしたくないだろう?」
確かにそうだね……と一瞬納得しかけるけれど疑問が湧く。
「それはそうだけど、例えば世を儚んだ妖精さんが、周りのみんなの不幸を願って……とかそういうことは起こらないの?」
「ないな。そのようなことがないように皆で助けあうし、もし他の者を不幸にしたいと妖精が本気で願った場合は、闇妖精の祝福を受けてけして覚めない眠りについてしまうんだ」
「闇妖精……」
闇妖精は原初の妖精の絵本で見た覚えがある。黒い髪の妖精として描かれていた。
色々な髪の妖精がいるが黒髪の妖精はそういえば基本的にいないなとアレッタは思った。
しかしなにか引っかかる。どこかで黒髪の妖精さんを見たような気もする……
「原初の闇妖精は封印されているから、その祝福を受けて眷属となった闇妖精も力を発揮できない。だからそうなった妖精は、眠り続けることしかできなくなるんだ」
「そう、なんだ」
「まあ、例外はいるにはいるが」
言葉を濁すユースに、首を傾げるアレッタ。
「アレッタも会ったことがあるぞ、エストレアは闇の妖精の祝福を受けている」
「ええっ!?」
私に飴をくれたあの可愛らしい女の子が!? そうか、そういえば半分黒髪だったね。
あんなに個性的な見た目をしているのに、ユースと両思いになって浮かれていたせいかすっかり容姿が頭から抜け落ちてしまっていた。
「エストレアは特殊なケースだからな。ソルが監視役として王宮から派遣されているが、今のところ大きな事件を起こしたことはない」
「小さな事件は?」
「あると言えばいいのか、どうなのか……まあ、大変奇妙なことになってはいるが害はない」
珍しく言いあぐねているユースに、アレッタは俄然エストレアのことが気になってきた。
「私が会いにいっても大丈夫かな?」
「ソルとルーチェがついているなら問題はないだろう」
いいらしい。ということは本当に危ない人ではないのだろう。
そうだよね、前に見た時も大人しそうだったし、初対面の私に大好物の飴をくれるいい子だったもの。
「だったら行ってみようかな」
「ああ。もし俺も手が空くようなら一緒に行ってもいいか」
「ええ、ぜひ」
ユースは凛々しい顔を綻ばアレッタに朗らかに笑いかける。
「アレッタが妖精に興味を持ってくれているようで嬉しいよ。最近は本を読んで妖精について調べていると聞いた」
「そんな、大したことはしてないよ。もともと妖精さんのことは好きだから、いろいろ新しいことを知れて面白いし。それに、大好きなユースのことでもある、から」
アレッタが言い淀みながらもなんとかそう口にすると、ユースは感激したように椅子から立ち上がりアレッタの手をとった。
「アレッタ、俺も君のことを愛している。君がこうやって朝晩一緒に食事を摂ってくれているなんて今でも信じ難くて、毎日夢の中にいるような気分なんだ」
「私もユースと毎日一緒にご飯を食べれて幸せだよ」
「ああ、君が宮殿に滞在してくれて本当に嬉しい。願わくばこのままここに住んでほしいと思っている」
「そう、だね」
ふと父やレベッカ、ケネットの顔が脳裏にチラつきアレッタが視線を落とすと、ユースは励ますようにアレッタの肩を抱いた。
「俺が勝手にそう思っているだけだから気にしなくていい。アレッタがしっかり考えて出した答えであれば、どのような結果になろうと俺は受け入れる。受け入れられるように……努力する」
悲しそうな顔でユースがそんなことを告げたので、アレッタは思わずユースの胸元に顔を寄せた。
「ごめんなさい私、ユースに甘えてばっかりだね……」
「いくらでも頼ってくれていい。アレッタに頼られるのは好きだ」
「……ありがとう」
今は優しいユースの好意に甘えさせてもらいながら、もう少しだけ待ってほしいと願いを込めて、アレッタもユースの背を抱きしめ返した。
「マイムも演奏を聴いていた? ロイスのリラハープの音色、とても素晴らしかったよね」
「もちろんお二人の演奏は耳を大きくして聴いておりましたよ! アレッタ様の歌声、繊細で温かくてとても癒されました……」
うっとりとした様子のマイム。そんなに私の歌を気に入ってくれたんだ。
嬉しいやら恥ずかしいやらでアレッタは赤面した。
「も、もう。私は自分の歌じゃなくてロイスのハープのことを聞いたのよ? でも、ありがとう」
「ロイス様は……私、あの方はちょっと苦手ですけど、あの方の弾かれるハープの音は素敵だと思います」
マイムから意外なことを聞いて、アレッタは軽く目を見張った。
ええ? あんなに穏やかで知的で大人な男性なのに、どこが苦手なの? 完璧すぎて気後れしちゃうとかならわかるけれど。
「マイムはロイスが苦手なの?」
マイムはキョロキョロと廊下を見渡し、誰もいないことを確認してから耳元でこっそりと教えてくれた。
「はい、だって怖いじゃないですか。元々人間さんだったっていうのもありますけど、笑っているのに内心怒っていたりすることのある方なので……」
おどおどしながらも教えてくれたマイムは、ハッとなにかに気づいたように顔を上げた。
「あ! こんなこと私が言ってたなんてロイス様には内緒ですよ? それに人間さんだからといってアレッタ様が怖くないのは本当です!」
「うん、わかってるよ」
「ア、アレッタ様~」
マイムが動揺しているので、アレッタはなだめるために水色の頭を撫でてみた。アレッタよりかなり背が低いので撫でやすい。
「うう、癒されました……ありがとうございます」
「どういたしまして、元気でたかな?」
「は、はい」
部屋にアレッタを送り届けたマイムは、おおお茶を淹れて参ります! とどもりながら去っていった。
お茶ならさっき飲んだよ、と止める間もなく行ってしまう。
……うーん、なんだか悪いことを聞いちゃったな。
普段は控えめな雰囲気ながら落ち着いていて、気配りも完璧なマイムだけど、人間関係のことで落ち着かなくなると吃音がでるほど動揺してしまうらしい。
マイム相手には、人間の話やロイスの話はあまりしない方がいいみたい。気をつけよう。
しばらくして戻ってきたマイムは、さっきお茶会でお茶を飲んだからもういらないですよね……とシュンと落ちこみながらポットを持ってきたので、アレッタはクスリと笑ってカップを要求した。
*
その後も数日間、マイムに手伝ってもらいながら図書館に通ったアレッタ。
やはり妖精が見える人間というのは、皆魔力を持っているものらしい。けれど魔力や人間に関する書籍は難しいものが多くて、文字を勉強してからでないと本格的に読むのは難しそうだった。
まずは文字を覚えるためと絵本をマイムに読んでもらいながら字を勉強したが、それだけでもたくさん妖精のことについて知ることができた。
本を読むのは妖精についての新しい発見がたくさんあって面白かったものの、読めば読むほど実際に今生きている妖精さん達の暮らしぶりについて知りたくなってしまった。
妖精のお伽噺、とてもおもしろかったな。人間界の童話は怖い話が多いけど、妖精さんの絵本のお話はほのぼのしているのね。
森の中にどんどん花畑を作って、お水が足りなくなるから池を作って、暮らしやすいように家を作って、みんなでツリーハウスに暮らす童話とかかわいかったな。
ちょっと田舎に行ったら今でもツリーハウスに住んでる人がいるってマイムは言ってたけど、本物はどんな感じなのかしら。
ちょっと町に出かけて……とか、できるのかな? 田舎に行くのは一日じゃ無理だろうけど、私もっと妖精さんのことについて実際に目で見て知りたいわ。
ためしに夕食を共にするユースに町に外出していいか聞いてみると、
「町に外出か、いつでもしてくれて構わない。念のためにルーチェを連れていくといい」
「え、いいの?」
あっさりと外出許可が出た。
「ああ、構わない。そもそも妖精界は平和だからな。人間界の王族は暗殺やら王位継承がどうのと命を狙われることもあると聞くが、妖精界ではほぼ起こり得ないことだ」
「それは、妖精の王族を害しても妖精さん達にとってなにもいいことがないから?」
「そうだ。誰だってわざわざ汚れた大気の中に住んだり、寒さに凍えたり濁った水を飲んで腹を下したりはしたくないだろう?」
確かにそうだね……と一瞬納得しかけるけれど疑問が湧く。
「それはそうだけど、例えば世を儚んだ妖精さんが、周りのみんなの不幸を願って……とかそういうことは起こらないの?」
「ないな。そのようなことがないように皆で助けあうし、もし他の者を不幸にしたいと妖精が本気で願った場合は、闇妖精の祝福を受けてけして覚めない眠りについてしまうんだ」
「闇妖精……」
闇妖精は原初の妖精の絵本で見た覚えがある。黒い髪の妖精として描かれていた。
色々な髪の妖精がいるが黒髪の妖精はそういえば基本的にいないなとアレッタは思った。
しかしなにか引っかかる。どこかで黒髪の妖精さんを見たような気もする……
「原初の闇妖精は封印されているから、その祝福を受けて眷属となった闇妖精も力を発揮できない。だからそうなった妖精は、眠り続けることしかできなくなるんだ」
「そう、なんだ」
「まあ、例外はいるにはいるが」
言葉を濁すユースに、首を傾げるアレッタ。
「アレッタも会ったことがあるぞ、エストレアは闇の妖精の祝福を受けている」
「ええっ!?」
私に飴をくれたあの可愛らしい女の子が!? そうか、そういえば半分黒髪だったね。
あんなに個性的な見た目をしているのに、ユースと両思いになって浮かれていたせいかすっかり容姿が頭から抜け落ちてしまっていた。
「エストレアは特殊なケースだからな。ソルが監視役として王宮から派遣されているが、今のところ大きな事件を起こしたことはない」
「小さな事件は?」
「あると言えばいいのか、どうなのか……まあ、大変奇妙なことになってはいるが害はない」
珍しく言いあぐねているユースに、アレッタは俄然エストレアのことが気になってきた。
「私が会いにいっても大丈夫かな?」
「ソルとルーチェがついているなら問題はないだろう」
いいらしい。ということは本当に危ない人ではないのだろう。
そうだよね、前に見た時も大人しそうだったし、初対面の私に大好物の飴をくれるいい子だったもの。
「だったら行ってみようかな」
「ああ。もし俺も手が空くようなら一緒に行ってもいいか」
「ええ、ぜひ」
ユースは凛々しい顔を綻ばアレッタに朗らかに笑いかける。
「アレッタが妖精に興味を持ってくれているようで嬉しいよ。最近は本を読んで妖精について調べていると聞いた」
「そんな、大したことはしてないよ。もともと妖精さんのことは好きだから、いろいろ新しいことを知れて面白いし。それに、大好きなユースのことでもある、から」
アレッタが言い淀みながらもなんとかそう口にすると、ユースは感激したように椅子から立ち上がりアレッタの手をとった。
「アレッタ、俺も君のことを愛している。君がこうやって朝晩一緒に食事を摂ってくれているなんて今でも信じ難くて、毎日夢の中にいるような気分なんだ」
「私もユースと毎日一緒にご飯を食べれて幸せだよ」
「ああ、君が宮殿に滞在してくれて本当に嬉しい。願わくばこのままここに住んでほしいと思っている」
「そう、だね」
ふと父やレベッカ、ケネットの顔が脳裏にチラつきアレッタが視線を落とすと、ユースは励ますようにアレッタの肩を抱いた。
「俺が勝手にそう思っているだけだから気にしなくていい。アレッタがしっかり考えて出した答えであれば、どのような結果になろうと俺は受け入れる。受け入れられるように……努力する」
悲しそうな顔でユースがそんなことを告げたので、アレッタは思わずユースの胸元に顔を寄せた。
「ごめんなさい私、ユースに甘えてばっかりだね……」
「いくらでも頼ってくれていい。アレッタに頼られるのは好きだ」
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