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10 ダークレイの忠告
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カリオスがいなくなった部屋で、ダークレイはしばらくの間笑いの発作と戦っていた。
「フッ、ククク……クフッ。なかなか愛されているではないか、ツカサよ」
「……そうかもなあ。なんでだろうな?」
思いつきで俺を惚れさせようとしている割には体を張ってるよな。城に住みこんだり、今みたいに俺の手作りだからって下剤クッキーを食べてみたり。
「お前の自然体でいる様は、側にいてなかなか心地よいと我も思うぞ。他にも人間にとってはお前は金の成る木のようなものだろう……どうやらそれに惹かれたわけではなかろうが」
「そうだったら追いだしてる」
いろいろ頼られたり、してくれって言われたりするのはもう慣れっこだけどさ? 流石に自分の城で毎日のようにそれをやられた日には、対応がめんどくさくなってとっくにサヨナラしているだろう。
ダークレイは足を組み直し、腕組みをするとうっそりと笑う。
「一人辛気臭い顔で死んだように生きているのかと顔を出してみれば、なかなかどうして楽しそうにしているではないか」
「楽しそうかなー?」
「少なくとも退屈ではなさそうだ」
それはそうかも。カリオスが来てからは、退屈すぎて死にそうな気持ちになることは少なくなったように思う。
「しかしあれは人族か……深入りする気がないなら早めに解放してやれ。あれは人の中では頑丈そうだが、それでも人は弱く、もろい生き物だ」
「……わかってるさ」
しんみりとした気分になっていると、カリオスが部屋に戻ってきた。
「ただいま戻りました……ツカサ? どうしました? ダークレイになにか言われましたか?」
「いんや? なにも」
ダークレイはカリオスの姿を視認するなり、おもむろに立ち上がると退出を告げる。
「さて、我はもう行くとしよう」
「帰るの早くない? もうちょっとゆっくりしてけば?」
「お前が生きているか確認しにきただけだったからな。死にそうな顔をしていたらどこかに連れ出してやろうかとも思ったが、なかなかどうして元気そうではないか。であれば我も忙しいのでな、そろそろ帰る」
そっかー、なんだかんだ面倒見のいいドラゴンだなあダークレイは。死んだかもと誤解していたからだが、勝手に死のうとしたことについて、今更ながら良心が咎める。
もし次死にたくなったら、こいつの寿命の分まで寝るようにしようと心に誓った。
「またいつでも来いよ」
「しばらくは休息を兼ねて棲家に滞在するのでな。気が向けば行くこととしよう」
ダークレイは偉そうに腕組みをしたまま、カリオスに視線を向けた。
「ではな小僧、健闘を祈る」
「次回貴方が訪れた時には、ツカサは俺なしじゃいられなくなっている予定なので。楽しみにしていてください」
カリオスも対抗するように不遜な表情をしている。
「おいおい」
「ククッ、それはいい。せいぜい頑張るがよい。ではなツカサ。また会おう」
ダークレイは転移の術を使い姿を消した。カリオスは警戒をといて体の力を抜く。
「行っちゃいましたね」
「そうだなあ。今何時だ? ああ、もう昼じゃないか。このままここで飯にしよう」
今日は気分的にステーキにしようと、皿ごとテーブルの上に出現させる。スープとサラダとパンも、
ほいほいっと。これくらいあれば十分だろう。
席についてふと顔を上げると、同じく向かい側に座ったカリオスがやけに柔らかな表情をしている。
「貴方にも友達がいたんですね」
「なにげに失礼なやつだな!? 友達くらいいるわ!」
そのほとんどは死んじゃったんだけどな、という言葉はグッと飲みこむ。
「いえ、こんな辺鄙なところに隠れるように住んでいるので、人嫌いなのかと思っていたので」
「人嫌いだったらお前と一緒に住んだりしないよ」
「それもそうですね」
出された食事に律儀に礼を言いながら、カリオスは言葉を続けた。
「それでも、少しでも貴方に寄り添って慰めてくれる存在がいてよかったです。貴方が孤独に生きてきたことは肌で感じていますから」
胸を突かれた様な気分だった。黙りこむ俺を、カリオスは慈愛に満ちた目線で見つめてくる。
俺が孤独で、そして望んでそうなっているわけじゃないってことを、カリオスは理解してくれてるんだな……
もしかしたらこいつなら、本気で俺の側で生きてくれるのかもしれないとチラリと思った瞬間だった。
まじまじとカリオスを見つめていると、彼はクスリと笑って茶化す。
「どうでしょう、ツカサ。ちょっとはキュンときましたか?」
「……その程度の語りじゃ俺は落ちねえぞ」
「駄目でしたか」
「ダメですね」
うそ。本当はちょっと心が揺れた。でもまだ包みなく本音を言えるほど、こいつに心を開ききれない。
ごめんな、臆病で。長く生きているとそれだけ
理不尽なことや裏切られることもあって、心の傷も増えていったのさ。
カリオスは残念そうに苦笑した。
「これは手厳しい。もう少し貴方好みの口説き文句を考えておきます」
「ああ、そうしてくれ」
カリオスに比べて随分少食な俺は食事を終えて立ち上がると、彼の肩をポンと叩いた。
明確に俺から接触したのはこれが初めてだ。カリオスはハッとしたように俺の方を向いた。ニヤリと下から見上げ、肩から去ろうとした俺の手を引き止める。
「……やっぱり少しはグラっときました?」
「少しだけな」
「少しですか……」
手を振ると簡単にカリオスは俺の手を離してくれた。そのままヒラヒラと手を振りながら食堂を後にする。
まあ、今まで会った人間の中では一番好感度高いけどな、カリオスは。けどなんか認めるの悔しいから言わない。
「フッ、ククク……クフッ。なかなか愛されているではないか、ツカサよ」
「……そうかもなあ。なんでだろうな?」
思いつきで俺を惚れさせようとしている割には体を張ってるよな。城に住みこんだり、今みたいに俺の手作りだからって下剤クッキーを食べてみたり。
「お前の自然体でいる様は、側にいてなかなか心地よいと我も思うぞ。他にも人間にとってはお前は金の成る木のようなものだろう……どうやらそれに惹かれたわけではなかろうが」
「そうだったら追いだしてる」
いろいろ頼られたり、してくれって言われたりするのはもう慣れっこだけどさ? 流石に自分の城で毎日のようにそれをやられた日には、対応がめんどくさくなってとっくにサヨナラしているだろう。
ダークレイは足を組み直し、腕組みをするとうっそりと笑う。
「一人辛気臭い顔で死んだように生きているのかと顔を出してみれば、なかなかどうして楽しそうにしているではないか」
「楽しそうかなー?」
「少なくとも退屈ではなさそうだ」
それはそうかも。カリオスが来てからは、退屈すぎて死にそうな気持ちになることは少なくなったように思う。
「しかしあれは人族か……深入りする気がないなら早めに解放してやれ。あれは人の中では頑丈そうだが、それでも人は弱く、もろい生き物だ」
「……わかってるさ」
しんみりとした気分になっていると、カリオスが部屋に戻ってきた。
「ただいま戻りました……ツカサ? どうしました? ダークレイになにか言われましたか?」
「いんや? なにも」
ダークレイはカリオスの姿を視認するなり、おもむろに立ち上がると退出を告げる。
「さて、我はもう行くとしよう」
「帰るの早くない? もうちょっとゆっくりしてけば?」
「お前が生きているか確認しにきただけだったからな。死にそうな顔をしていたらどこかに連れ出してやろうかとも思ったが、なかなかどうして元気そうではないか。であれば我も忙しいのでな、そろそろ帰る」
そっかー、なんだかんだ面倒見のいいドラゴンだなあダークレイは。死んだかもと誤解していたからだが、勝手に死のうとしたことについて、今更ながら良心が咎める。
もし次死にたくなったら、こいつの寿命の分まで寝るようにしようと心に誓った。
「またいつでも来いよ」
「しばらくは休息を兼ねて棲家に滞在するのでな。気が向けば行くこととしよう」
ダークレイは偉そうに腕組みをしたまま、カリオスに視線を向けた。
「ではな小僧、健闘を祈る」
「次回貴方が訪れた時には、ツカサは俺なしじゃいられなくなっている予定なので。楽しみにしていてください」
カリオスも対抗するように不遜な表情をしている。
「おいおい」
「ククッ、それはいい。せいぜい頑張るがよい。ではなツカサ。また会おう」
ダークレイは転移の術を使い姿を消した。カリオスは警戒をといて体の力を抜く。
「行っちゃいましたね」
「そうだなあ。今何時だ? ああ、もう昼じゃないか。このままここで飯にしよう」
今日は気分的にステーキにしようと、皿ごとテーブルの上に出現させる。スープとサラダとパンも、
ほいほいっと。これくらいあれば十分だろう。
席についてふと顔を上げると、同じく向かい側に座ったカリオスがやけに柔らかな表情をしている。
「貴方にも友達がいたんですね」
「なにげに失礼なやつだな!? 友達くらいいるわ!」
そのほとんどは死んじゃったんだけどな、という言葉はグッと飲みこむ。
「いえ、こんな辺鄙なところに隠れるように住んでいるので、人嫌いなのかと思っていたので」
「人嫌いだったらお前と一緒に住んだりしないよ」
「それもそうですね」
出された食事に律儀に礼を言いながら、カリオスは言葉を続けた。
「それでも、少しでも貴方に寄り添って慰めてくれる存在がいてよかったです。貴方が孤独に生きてきたことは肌で感じていますから」
胸を突かれた様な気分だった。黙りこむ俺を、カリオスは慈愛に満ちた目線で見つめてくる。
俺が孤独で、そして望んでそうなっているわけじゃないってことを、カリオスは理解してくれてるんだな……
もしかしたらこいつなら、本気で俺の側で生きてくれるのかもしれないとチラリと思った瞬間だった。
まじまじとカリオスを見つめていると、彼はクスリと笑って茶化す。
「どうでしょう、ツカサ。ちょっとはキュンときましたか?」
「……その程度の語りじゃ俺は落ちねえぞ」
「駄目でしたか」
「ダメですね」
うそ。本当はちょっと心が揺れた。でもまだ包みなく本音を言えるほど、こいつに心を開ききれない。
ごめんな、臆病で。長く生きているとそれだけ
理不尽なことや裏切られることもあって、心の傷も増えていったのさ。
カリオスは残念そうに苦笑した。
「これは手厳しい。もう少し貴方好みの口説き文句を考えておきます」
「ああ、そうしてくれ」
カリオスに比べて随分少食な俺は食事を終えて立ち上がると、彼の肩をポンと叩いた。
明確に俺から接触したのはこれが初めてだ。カリオスはハッとしたように俺の方を向いた。ニヤリと下から見上げ、肩から去ろうとした俺の手を引き止める。
「……やっぱり少しはグラっときました?」
「少しだけな」
「少しですか……」
手を振ると簡単にカリオスは俺の手を離してくれた。そのままヒラヒラと手を振りながら食堂を後にする。
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