ツイノベ倉庫〜1000文字程度の短編集

兎騎かなで

文字の大きさ
65 / 126

65.恋愛しないと出られない部屋

しおりを挟む
受験勉強の最中、崩れ落ちるように寝た真面目くん。

起きると知らない部屋のベッドにいて、目の前の壁には「恋愛しないと出られない部屋」と書いてあった。

隣で寝ているのは、よりによって全然気が合わなさそうなクラスメイトの陽キャ。

(バカバカしい、どうせ夢だろう)

寝転がると、茶髪の陽キャが目を覚ました。

「え、何ここ? 恋愛? 誰と?」

お互い顔を見合わせて無言になる。

「えー、こいつと恋愛? 無理っしょ」
「それは僕の台詞だ」

陽キャは部屋を調べ出られないことがわかると、最悪だと膝から崩れ落ちた。

「相手はふわふわで可愛い女の子がよかった」
「同感だ」
「今からでも変われない?」
「お前が変わってくれ」
「え~無理」

恋愛よりもゲームがしたいと嘆く陽キャに、おい受験生と内心突っ込む。

「ん? これつまり、お前を落とすゲームなんじゃね?」
「お前ってすごくバカなんだな」
「はあ? どこがだよ」

陽キャがずいっと顔を近づけてくる。待て待て、コイツと恋愛だなんて正気でいられない。

「やめろよ」
「アンタ意外と可愛い顔してるな、お肌ツルツル……目の下に隈があるじゃん」
「ほっとけ」
「まあまあまあ、とりあえず寝よ? 寝たらなんか変わるかも」

起きても何一つ変わっていなかった。
いや、陽キャに枕にされている。ちょっと暑いがなんとなく離れ難い……

(人肌って気持ちいいんだな)

「アンタの肌って気持ちいいなー」

同じことを言いながら陽キャが起きた。見つめあう。

なぜか唇が落ちてきて、顔を離される。
感動したように陽キャは呟いた。

「俺、アンタとなら恋愛できるかも」

今度は、バカと言い返す気にはなれなかった。

二人が部屋を出られる日は、そう遠くないかもしれない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...