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78.幽霊につきまとわれている
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最近幽霊につきまとわれている気弱くん。怖がりなのに見える体質が恨めしい。
「どっか行ってよ~」
「どうか話だけでも」
「嫌だよ……」
「実は、生身の身体がある時から私に憑いていた悪霊が、成仏心中をしようとしつこく襲ってくるんです」
「いやって言ったのに……待って、成仏心中ってなに?」
その悪霊とやらは、幽霊の状態で一緒に成仏すると来世でずっと一緒にいられると思い込んでいて、夜な夜な成仏心中を迫ってくるらしい。
「自分を殺した相手と一緒に消えるなんて嫌です。まだやりたいこともあるのに……どうかお力添えいただきたい」
「嫌だ巻き込まないでー!」
「お願いです、絶対に叶えたい夢があるんです! 成仏する前に、一度でいいから恋がしたい!」
「恋ぃ?」
「ええ!どうしても……この際、貴方でもいい」
「激しくお断りします!」
「あなた、よく見ると綺麗な顔してますね。まつ毛も長くて色も薄い、可愛いです」
「気のせいだって!」
「声も私好みです! 今きゅんとしました、ない心臓が高鳴りましたよ!」
この調子で口説かれまくり、悪霊からも恨みを買った気弱くん。
怖いから嫌なのにと逆ギレしながら、怖がりが故に完璧に覚えた除霊方法を駆使して九字を切ると、悪霊は滅殺された。
残るはうるさい生き霊だけだ。
とっくに死んだつもりでいる彼を、無理やり病院にある意識不明の体に戻し、やれやれと日常生活に戻る……つもりだった。
「私を元の体に戻してくださり、ありがとうございます。貴方は恩人です、溢れんばかりの愛をもって、一生をかけて恩返しさせてください!」
「愛が重いよう、却下ー!」
その後もつきまとわれ続け、臨死体験を経て霊感が身についた元幽霊くんは、有り余る行動力を駆使して霊的なことに詳しくなっていった。
そのうちに、怖がる気弱くんの側から幽霊を追い払ってくれるようになる。
ちょっとかっこいいかもって、ときめいてしまったのが運の尽き。
悪霊よりもよほどしつこく付きまとう元幽霊くんに根負けして、ツッコミを入れながらも恋人同士として過ごしているらしい。
「貴方は幽霊とは口をきかないでくださいね! 私のように貴方に惚れる輩がいるかもしれません」
「そんな人はいないと思うけど、代わりに追い払ってくれて助かってるよ。これからもよろしくね」
「はい! 命尽きるまで貴方に寄り添い、尽くします!」
「そんなピックミンみたいな重たい誓いはいらないから! 普通の恋人として側にいてよ。ね?」
「……こい、びと! ああ嬉しいっ、はい!!」
日常からちょっとはみ出した二人は、今日も面白おかしく、本人達は真面目に愛を紡ぎながら暮らしている。
「どっか行ってよ~」
「どうか話だけでも」
「嫌だよ……」
「実は、生身の身体がある時から私に憑いていた悪霊が、成仏心中をしようとしつこく襲ってくるんです」
「いやって言ったのに……待って、成仏心中ってなに?」
その悪霊とやらは、幽霊の状態で一緒に成仏すると来世でずっと一緒にいられると思い込んでいて、夜な夜な成仏心中を迫ってくるらしい。
「自分を殺した相手と一緒に消えるなんて嫌です。まだやりたいこともあるのに……どうかお力添えいただきたい」
「嫌だ巻き込まないでー!」
「お願いです、絶対に叶えたい夢があるんです! 成仏する前に、一度でいいから恋がしたい!」
「恋ぃ?」
「ええ!どうしても……この際、貴方でもいい」
「激しくお断りします!」
「あなた、よく見ると綺麗な顔してますね。まつ毛も長くて色も薄い、可愛いです」
「気のせいだって!」
「声も私好みです! 今きゅんとしました、ない心臓が高鳴りましたよ!」
この調子で口説かれまくり、悪霊からも恨みを買った気弱くん。
怖いから嫌なのにと逆ギレしながら、怖がりが故に完璧に覚えた除霊方法を駆使して九字を切ると、悪霊は滅殺された。
残るはうるさい生き霊だけだ。
とっくに死んだつもりでいる彼を、無理やり病院にある意識不明の体に戻し、やれやれと日常生活に戻る……つもりだった。
「私を元の体に戻してくださり、ありがとうございます。貴方は恩人です、溢れんばかりの愛をもって、一生をかけて恩返しさせてください!」
「愛が重いよう、却下ー!」
その後もつきまとわれ続け、臨死体験を経て霊感が身についた元幽霊くんは、有り余る行動力を駆使して霊的なことに詳しくなっていった。
そのうちに、怖がる気弱くんの側から幽霊を追い払ってくれるようになる。
ちょっとかっこいいかもって、ときめいてしまったのが運の尽き。
悪霊よりもよほどしつこく付きまとう元幽霊くんに根負けして、ツッコミを入れながらも恋人同士として過ごしているらしい。
「貴方は幽霊とは口をきかないでくださいね! 私のように貴方に惚れる輩がいるかもしれません」
「そんな人はいないと思うけど、代わりに追い払ってくれて助かってるよ。これからもよろしくね」
「はい! 命尽きるまで貴方に寄り添い、尽くします!」
「そんなピックミンみたいな重たい誓いはいらないから! 普通の恋人として側にいてよ。ね?」
「……こい、びと! ああ嬉しいっ、はい!!」
日常からちょっとはみ出した二人は、今日も面白おかしく、本人達は真面目に愛を紡ぎながら暮らしている。
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