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3、三男へのプレゼント
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「いただきます」
家族が揃ったことで、夕飯を食べ始める。
本日の献立は、先程に作っていた白米、肉じゃが、味噌汁、白和えである。
一度火を止めてもう一度火を通した肉じゃがはさらに味と香りを増し、食卓を満たしていた。
やっぱり料理が好きだなぁと思う瞬間のひとつだ。
「……うむ」
父が頷きながらそう発したことで、少し安心した。不味くはないらしいと分かったからだ。
同時に、おいしい、と言う言葉はまた聞けなかったと悲しくもなるのだが、しょげていては始まらないと料理の改善点を探しながら食べ進める。
白和え、もう少し豆腐のほろほろとした感じを加えてるのもありかな。
父と兄二人が武道について話すのを聞きながら、料理について思案する。いつものことであった。
「……霞」
「え…あ、なに?」
普段声をかけられることなど数えるほどしかないので、少し吃ってしまった。
戸惑いながら、父の呼びかけに数秒遅れて反応する。
「広葉君とは…」
「…?」
寡黙な父ではあるが、ここまで言葉に詰まることは珍しい。つい首を傾げてしまう。
「親父」
「父さん」
「……うむ」
見かねたように二人の兄が声をかけ、父が返事をする。普段は父が物事を決めることが多いため、この光景は珍しい。
「霞…広葉君と、普段どんな会話をするんだ?」
「広葉と?んー…大学の課題の話とか、昔の話とか、あと、あいつが一方的にだけど、ゲームの話とか、かな?」
何故そんなことをとは思うものの、思い出しながら答えた。
そんな俺にとってはなんでもない話を、ふむ、と言いながら父は聞く。そして、ゲームの話、と答えた時、先のふたつよりは大袈裟に頷いていた。
「そうか……。霞は、ゲームに興味あるのか?」
「興味…ないわけでは、ないかな?広葉も楽しそうだし」
「ふむ。そうか」
俺の答えに少し満足気味に頷いた父は、背後の袋から何かの箱を取り出し、俺に差し出してきた。
「…使うといい」
「え?……これって」
それは、広葉の部屋で幾度となく見てきた、ヘッドギアと呼ばれるものであった。VRMMOをやる上では必須なため、その分高価なものだったはずである。
「なんで…。これ、高いんじゃ」
「うちは結構儲かってるから、お金は大丈夫だよ。ね、父さん」
「でも、」
「こまけぇことは気にすんな。買っちまったんだから受け取っとけ。な、親父」
「うむ」
俺の疑問に次男の仙樹兄さんと千里兄さんが答え、父が頷く事で断れないような雰囲気になってしまった。
父を含めてこの場の全員が結構な頑固者なので、何をいっても無駄であり、断れないことを察した。
しかし、嬉しいことも事実であった。広葉と共に遊べることもそうだが、何よりも、父と兄が自分を省みてくれたことが、俺にとって、何よりも幸せなことであった。
嫌われていたと、思っていた。
もちろん、未だ好かれているとは思ってないけど、でも、嫌いではないのだと、思っても許されるだろうか。
幼い頃からの努力が、少しだけ報われた気がした。
「ありがとう。父さん。千里兄さん。仙樹兄さん」
ありがとう、と繰り返し言う。頬が緩んで行くのを感じるが、これはどうにも止められない。
亡き母譲りの青い瞳も涙ですこし潤んでいくのを感じた。
「う、うむ」
「っ…ああ」
「ええ」
そんな俺に対して、動揺したのであろう父は吃り、二人の兄に至っては寡黙な父のような反応を返していた。
流石に泣くのは不味かったか。
「こ、広葉のやつが詳しいんだろ、行ってこいよ」
「そう、ですね。広葉君もやっているようですから、直ぐにでも」
「…そうだな」
「うん!ありがとう、本当に」
今すぐにでも伝えに行きたい気持ちを抑えることも無く、また家族からの勧めもあって、貰ったばかりのヘッドギアとついでとばかりに箱に入れた自作のチョコレートケーキを持って、座ったままの父と兄たちにこれ食べてとチョコレートケーキをだして伝えて、俺は部屋へと走った。
家族が揃ったことで、夕飯を食べ始める。
本日の献立は、先程に作っていた白米、肉じゃが、味噌汁、白和えである。
一度火を止めてもう一度火を通した肉じゃがはさらに味と香りを増し、食卓を満たしていた。
やっぱり料理が好きだなぁと思う瞬間のひとつだ。
「……うむ」
父が頷きながらそう発したことで、少し安心した。不味くはないらしいと分かったからだ。
同時に、おいしい、と言う言葉はまた聞けなかったと悲しくもなるのだが、しょげていては始まらないと料理の改善点を探しながら食べ進める。
白和え、もう少し豆腐のほろほろとした感じを加えてるのもありかな。
父と兄二人が武道について話すのを聞きながら、料理について思案する。いつものことであった。
「……霞」
「え…あ、なに?」
普段声をかけられることなど数えるほどしかないので、少し吃ってしまった。
戸惑いながら、父の呼びかけに数秒遅れて反応する。
「広葉君とは…」
「…?」
寡黙な父ではあるが、ここまで言葉に詰まることは珍しい。つい首を傾げてしまう。
「親父」
「父さん」
「……うむ」
見かねたように二人の兄が声をかけ、父が返事をする。普段は父が物事を決めることが多いため、この光景は珍しい。
「霞…広葉君と、普段どんな会話をするんだ?」
「広葉と?んー…大学の課題の話とか、昔の話とか、あと、あいつが一方的にだけど、ゲームの話とか、かな?」
何故そんなことをとは思うものの、思い出しながら答えた。
そんな俺にとってはなんでもない話を、ふむ、と言いながら父は聞く。そして、ゲームの話、と答えた時、先のふたつよりは大袈裟に頷いていた。
「そうか……。霞は、ゲームに興味あるのか?」
「興味…ないわけでは、ないかな?広葉も楽しそうだし」
「ふむ。そうか」
俺の答えに少し満足気味に頷いた父は、背後の袋から何かの箱を取り出し、俺に差し出してきた。
「…使うといい」
「え?……これって」
それは、広葉の部屋で幾度となく見てきた、ヘッドギアと呼ばれるものであった。VRMMOをやる上では必須なため、その分高価なものだったはずである。
「なんで…。これ、高いんじゃ」
「うちは結構儲かってるから、お金は大丈夫だよ。ね、父さん」
「でも、」
「こまけぇことは気にすんな。買っちまったんだから受け取っとけ。な、親父」
「うむ」
俺の疑問に次男の仙樹兄さんと千里兄さんが答え、父が頷く事で断れないような雰囲気になってしまった。
父を含めてこの場の全員が結構な頑固者なので、何をいっても無駄であり、断れないことを察した。
しかし、嬉しいことも事実であった。広葉と共に遊べることもそうだが、何よりも、父と兄が自分を省みてくれたことが、俺にとって、何よりも幸せなことであった。
嫌われていたと、思っていた。
もちろん、未だ好かれているとは思ってないけど、でも、嫌いではないのだと、思っても許されるだろうか。
幼い頃からの努力が、少しだけ報われた気がした。
「ありがとう。父さん。千里兄さん。仙樹兄さん」
ありがとう、と繰り返し言う。頬が緩んで行くのを感じるが、これはどうにも止められない。
亡き母譲りの青い瞳も涙ですこし潤んでいくのを感じた。
「う、うむ」
「っ…ああ」
「ええ」
そんな俺に対して、動揺したのであろう父は吃り、二人の兄に至っては寡黙な父のような反応を返していた。
流石に泣くのは不味かったか。
「こ、広葉のやつが詳しいんだろ、行ってこいよ」
「そう、ですね。広葉君もやっているようですから、直ぐにでも」
「…そうだな」
「うん!ありがとう、本当に」
今すぐにでも伝えに行きたい気持ちを抑えることも無く、また家族からの勧めもあって、貰ったばかりのヘッドギアとついでとばかりに箱に入れた自作のチョコレートケーキを持って、座ったままの父と兄たちにこれ食べてとチョコレートケーキをだして伝えて、俺は部屋へと走った。
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