三男のVRMMO記

七草

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19、三男とマリの共同生産

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遅くなってすみません。
なにを作ろうかと迷ったんですけど、この時点で作れるものが少なすぎたのでこれにしました。
個人的に好きなのもあります(∀`*ゞ)


ーーーーーーーー


スキル屋を出た俺とマリは、特に寄り道をすることなくギルドに戻ってきていた。
理由は生産をするためだ。
満腹度も減ってきてるし、そろそろちゃんと食べないといけないし。
ギルドの中に入って、とりあえず生産所に向かう階段の前に立つ。
そこには書見台のようなものとプレートがあり、現在の生産所の使用状況が載っていた。
空いている部屋や空間は濃い文字で、使われている部屋や空間は薄い文字で記されているみたいだ。
このプレートをみるに、生産所は2階から始まって5階まであるみたいだ。
2階は共同スペース、3、4、5階は個室らしい。
横に値段も書いてあったが、部屋は一律1000リンだけど、共同スペースは少しだけ安くなるんだな。
とはいっても、ちゃんと生産場所はわかれてるから、誰かと一緒に同じ場所を使う、なんてことはない。
あくまで、他の誰かが同じ空間の別の場所にいるってだけだ。
とりあえず今回は初めてだし、お金も節約したいから共同スペースを使うことにしよう。
俺はプレートの案内に従い、表示されてる共同スペースの1番隅の場所を選択し、利用時間を1時間として決定を押して、四角い表示にギルドカードをかざす。
多分これで俺がその場所を1時間使えるようになったはずだ。
ちゃんと出来たのか少し不安はあるが、とりあえず俺はマリを連れて生産所に向かう階段を登って2階へと向かった。
1階のギルド本部より人は少ないが、ある程度はいるみたいだ。
2階から聞こえるざわめきにそう判断して、共同スペースに足を踏み入れる。
俺が取ったのは1番奥のスペースだから、と位置を確認してそこに向かう。
その途中で他の生産職の人達が、また失敗したーとか上手くいかない!とか言っているのを聞いた。
流石ずっとこの世界にいる人達だ。
随分と難易度の高い生産をしているみたいだな。
いきなりそんなことは出来ないから、俺は俺のペースで頑張ることにしよう。
そう決意を新たにして、自分が使うスペースに着いた。
そこには広めな台だけがあり、そして【初めての方へ】というプレートが目の前に現れ、使い方の説明をしてくれた。
生産スペースを使うためには、台の上にある四角い表示にギルドカードをかざすことで利用開始となるらしい。
個室の場合は部屋の前にこの四角い表示があるから、そこにかざすことで部屋に入れるようになるそうだ。
職に応じてその場に現れる道具が変わるので、台を2回指でタップして該当する生産職を選択するらしい。
そして時間の10分前になったら本人だけに聞こえる音を鳴らすので、退出の準備をするようにという文で説明は締めくくられていた。
とりあえず、すごく便利な空間ってことは分かったな。
俺は説明の通りに台の上にあった四角い表示にギルドカードを乗せ、ピッと音が鳴ったことで利用開始になったことを確認した。
そして台を2回タップして、職を選択する。
マリの期待に応えたいし、とりあえず今回は料理にしよう。
錬金はハニービーの依頼が終わったらやることにしよう。
そう決めて料理をする職の調理師を選んで決定を押したら、台の上には調理道具一式、オーブン、水場、コンロのようなものが現れていた。
コンロといったが、どちらかといえばIHの方に近いかな。そんな見た目だし。

「さて、美味しいものを作るからな。マリ、とりあえず台の上にいてもらっていいか?落ちたら危ないし」
「きゅ!ぴ~きゅ!ぴ~きゅ!」

肩の上のままだと少し危ないと思ったので、一声かけてからマリを台の少し離れたところにのせた。
台に乗ったマリは楽しそうに体を揺らして期待を表現している。
これは頑張らないとな。

「まずは何を作ろう」

頭の中で材料を整理しながら考える。
ケーキとかパンとかも作れれば良かったんだけど、小麦粉系が見つからなかったんだよな。
どこかにあるのかな?
そう考えながらふとレシピを見る。
そういえば、スライムゼリーって結局何になるんだ?
何かに使えたら嬉しいなと思いながらレシピを取り出して読んでみると、スライムゼリーがすごく有能なものだったことが分かった。
スライムゼリーは、そのまま乾燥させると片栗粉に、抽出してから乾燥させると小麦粉に、そのまま溶かして使えば、ゼラチンの用途として使えるらしい。
なんて万能なんだ、スライムゼリー。
これはマリにお願いして沢山取ってもらわないとな。
しかしこんな所で念願の小麦粉に出会えると思ってなかった。
片栗粉も手に入ったし、これは料理の幅が広がったと言っても過言ではない。
俺はうきうきして笑っている自分に気づきなが二つのスライムゼリーをそれぞれ包装紙の上に置いた。
今度袋とか買ってこよう。これは量産した方が使い勝手がいいだろう。
そう算段を付けながら、まずはそのままスキルの乾燥をかけて片栗粉を作る。
二つ目のスライムゼリーは、スキルの抽出をかけてから同じく乾燥をかけて、小麦粉を作った。
とりあえず、今日は時間もあまりないしサクッと作れるやつにしよう。
そう決めて、小麦粉はストレージにしまい、片栗粉をパッドに移して、ストレージからラビィの肉と数種のハーブ、オレの実を一つ取り出した。
片栗粉はさらに二つのパッドにわけて、ハーブとオレの実は水で洗う。
準備として、鍋に油をいれて温めておく。
数種類のハーブはまとめて包丁で刻み、片栗粉の入ったパッドに移す。
ハーブの爽やかな香りが広がるのを感じながら、オレの実を手に取る。
柑橘系の美味しそうな香りを楽しみながらオレの実の皮を削いで、同じく包丁で刻んでもう片方のパッドの中へと入れる。
そして、ラビィの肉は拳の半分くらいの大きさに切って、別のパッドに移しておく。
片栗粉の入ったパッドにはさらに塩を入れて、それぞれハーブとオレの実の皮が満遍なくあるように混ぜる。
これで準備は完了だ。
あとは、油が温まったのを確認して、ラビィの肉に用意した2種類の片栗粉を揉みこんで揚げるだけ。

「よしっと、あとは…」
「~~~っ、きゅー!!」
「え、マリ?」
「きゅ!ぴ!」
「…手伝いたいのか?」
「きゅぴ!」

あとは揉み込むだけだ、とパッドを取り寄せたとき、我慢できなかったらしいマリが近づいてきた。
切るのとかは出来ないけど、この作業なら手伝えると思ったのだろうか。
優しくて本当に最高のパートナーだなと改めて感じながら、マリに片栗粉とラビィの肉を入れたパッドを差し出した。

「それじゃ、一緒にやろうか」
「ぴきゅう!」
「こうやって、この粉をすくって、お肉にのせて、ぎゅっぎゅってするんだよ。やってごらん」
「ぴう……きゅ、きゅ」
「うん。上手だよ」

小さな手と小さな身体で一生懸命手伝ってくれてるマリに愛しさが溢れてくるのを感じながら、俺も作業を進める。
同時に揚げるとどっちの味かわからなくなるから、とりあえず俺の方を先に終わらせてしまおう。
幸いマリは鍋から離れたところにいるし、油が当たることはないだろう。
俺はリアリティ無しだけど、マリはどうか分からないからな。
これは今度調べておかないとだな。
そう考えながらラビィの肉に片栗粉を揉みこみ、温めた油の温度を少しだけ片栗粉を入れて確認する。
片栗粉がジュっと音を立てたのを見て、ラビィの肉を次々に揚げていく。
ジュワッと音をたてながらきつね色になっていくのを確認して、程よく揚げられたらひっくり返して反対側も揚げていく。
ぱちぱちと油の跳ねる音と、ジュワジュワとラビィの肉が美味しくなっていくのを耳と目で楽しみながら次々揚げていく。
両面ともきつね色になり、油の跳ねる音が少なくなってきたのを見て、揚げたラビィの肉をペーパーを敷いた別のパッドに移していく。
揚げたてのいい匂いが辺りに広がるに笑みが零れた気がするが、この瞬間が好きなんだからしょうがない。
全てをパッドに移し終えた時、マリがきゅっと鳴いて近づいてきた。
どうやらマリの分も終わったらしい。
それ以外近づくのは流石に危ないので、マリには離れたところにいてもらってパッドを受け取る。
丁寧にやったことが分かるくらいきちんと片栗粉が揉みこまれていて、マリの頑張りを感じる。
時々ある小さな指のあとはご愛嬌ってことで。

「マリ、ありがとう。すごく上手に出来たね」
「きゅ~」

俺の褒め言葉にマリが照れたように丸くなったのがとても可愛い。
その姿に癒された俺は手を綺麗にしたらマリを撫でることを決めて、マリの作ってくれたラビィの肉もさっきと同じように揚げていく。
きつね色になったラビィの肉を同じようにパッドに移して、料理は終了だ。
流石にパッドの中だと見た目的にあれなので、ストレージからバスケットを取り出して包装紙をしき、余分な油を落としたラビィの唐揚げを入れていく。
半分はハーブ、半分はオレンジ風味の唐揚げの完成だ。
匂いをかいで今か今かとそわそわしているマリには申し訳ないが、まずはこの場を片付けたい。
余った片栗粉はそれぞれ包装紙にくるみ、ストレージへしまう。
揚げた油はどうしようかと悩んでいると、油鍋の前にプレートが現れ、油を除去しますか、という問が現れた。
思考を読まれてるこの感じは前にもあった気がするのだが、まぁ便利だから良しとしよう。
迷わずYESを選択すると、油鍋から油が消えたので掃除スキルを使って綺麗にする。
跳ねてしまった油汚れも、このスキルを使って布で拭いたら最初のように綺麗になった。
このスキルは現実でも欲しいな。すごく便利だ。
鍋も水に晒して布で拭いたら綺麗になったし、なんて楽ちんなんだろうか。
使った道具と場所をすべて元通りにして、俺はマリにお待たせと声をかけた。

「さっそく食べようか、マリ」
「きゅ!!ぴ!!」

幸せそうに花を二つ咲かせながらマリが飛び跳ねる。
可愛いけど、慌てすぎて火傷しそうだな。

「はい、こっちはハーブかな?火傷しないよう
にゆっくり食べるんだよ?」
「きゅい~」

包装紙に包むと持ち難いと思ったので、そのまま手渡した。
すると、マリはすとんとお座りの状態になり、小さな二つの前足で唐揚げを掴んでもしゃもしゃと食べ始めた。
よくあるぬいぐるみが座っているような姿勢である。とても可愛い。
そんなマリを見ながら、俺もハーブ風味の唐揚げとオレンジ風味の唐揚げを一つずつ食べた。
ハーブは強過ぎない香りが口に広がってさっぱりと食べられるし、オレの実は柑橘系の酸味とお肉のジューシーさがとてもあっていて、初めてにしては上出来だと思う。
マリもご満悦なようで、二つだった花が四つに増えていた。
俺はマリにもう片方の唐揚げも渡しながら、声をかけた。

「美味しいな、マリ」
「ぴゅ~」
「マリが手伝ってくれたおかげだな。ありがとう」
「ぴ!!ぴ、きゅぴ~」

多分、俺だけで作ったらこんなに幸せな気持ちにはならなかったと思う。
マリと出会ってからまだ時間は全然経ってないけど、俺の中ではマリがとても大切な存在になっていたようだ。
俺は照れたようもじもじとして花を五つ咲かせたマリを見ながら、もう一度マリにありがとうと伝えた。

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