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第14話 ドワーフの弱点
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『半人前』のコウと『太っちょイワン』の腕相撲対決の結果は、マルタの街のドワーフ達の間ですぐに噂になった。
「『半人前』がイワンに勝った? 何だよ、そのデマ。俺だってイワンに勝てないのに、『半人前』が勝てるわけないだろう!」
「誰だよ、そんな噂を広めた奴は。さすがに温和なイワンでもそれを知ったら暴れるぞ!」
「え? 噂の出元はイワン本人!? そんな馬鹿な……!」
と、当初は誰もがその噂を信じなかったが、『太っちょイワン』本人が周囲に『半人前』のコウに負けたと吹聴しているのだと聞いて誰もが驚いた。
なにしろ『太っちょイワン』は、この街のドワーフの中で一番力持ちだが、その事を鼻にかけた事はなく、誰もがそんなイワンを寡黙なドワーフの典型として評価していたからだ。
それなのに負けた事を周囲に吹聴して回っているというのだから、耳を疑わずにはいられない。
だが厳密には、イワンは聞かれたから答えていただけであった。
誰もが『半人前』のコウを相手に、イワンが負けるとは思っていないから、悪い噂と考え本人からその嘘を否定してもらおうと聞きに来るのだが、
「イッテツの鍛冶屋で『半人前』のコウに腕相撲勝負を挑んで負けた。あいつは正真正銘一人前のドワーフだ」
と、本人が正直に答えるものだから、周囲は負けたイワンが言うのなら事実らしいという事で驚き、それを友人や家族、親戚に話してそれが一気に広まったのであった。
ドワーフ達行きつけの酒場──
「コウ、よくイワンに勝ったな! わははっ!」
髭の生えないコウの為に、自分の髭を剃る男気を見せたドワーフ、黒髪、茶色の目に右頬に十字傷が特徴的なダンカンがコウの背中を叩いて大笑いをしていた。
その周囲には同じく一人前の証明の一つである髭を剃って顔がつるつるのドワーフが八人、コウを囲んでエールを片手に同じように笑っている。
「こんな騒ぎになるとは思いませんでしたよ……」
コウはイッテツと自身で製作した最高品質の戦斧を守る為にやむなく勝負をしたのだが、その反響には正直驚きであった。
なにしろこの目の前のドワーフ仲間を助けた時でさえ疑われたし、その時は他のドワーフ達の目撃者がいたのにも拘らず『半人前』呼びは変わらなかったのだ。
だが、イワンが自らコウに腕相撲で負けたと証言すると、それまでコウの活躍に半信半疑であった他のドワーフ達も手のひらを返した。
「もしかするとイワンの奴、わざとコウに勝負を挑んだんじゃないか?」
と、ダンカンは頬の十字傷を擦りながら、推察してみせた。
「わざと?」
コウはその理由がわからないから、首を傾げた。
『太っちょイワン』とは、あまり面識がない。
自分はドワーフ一の力持ちであるイワンを有名人としてよく知っていたが、あちらがこっちを知っていたのかはわからない。
まあ、コウはドワーフなのに成人しても筋肉もない華奢な体に髭も生えていない珍しいハーフドワーフだったから、姿形くらいは認識されていたかもしれないが、だからと言って絡まれる程、関わった記憶は全くないのだ。
「ああ。もしかしたら、こいつらの命をコウが救う活躍をした事で、イワンもコウの存在を気にしていたのかもしれないぞ。なにしろ、現場にいたドワーフ達十人以上でも動かなかった大岩を瀕死のコウが加勢したら簡単に動いたんだからな。怪我していなかったらどのくらいの力があるのかと気になったんじゃないか?」
ダンカンが憶測だが、コウに勝負を挑んだ理由を口にした。
すると他のドワーフも頷き、色々な憶測を始めた。
「ドワーフ仲間の中でイワンの力が一番強いのは、誰もが知っている周知の事実だからなぁ。もしかしたら、周囲の誰かが、『コウがイワンより強いかもしれない』とか言ったんじゃないか?」
「あり得るな。──あ、俺達はそんな事一言も言っていないぞ?」
「だけど、イワンが自分の負けを吹聴する理由は何だ?」
「そうだよな? コウに負けた事をわざわざ周囲に言って回る理由がわからん」
「コウ、イワンに何かしたのか?」
と髭無しドワーフ達は、疑問を口にするとコウに聞く。
「僕はイワンさんと面識ないですよ! 僕が聞きたいくらいです」
コウはそう答えると、一人前と認められてようやくお酒も飲めるようになっていたので、手にしたエールを口にした。
退院祝いの時の一杯以来のエールは、前世のものと比べるべくもなく、やはりぬるかった。
だが、喉を刺激するシュワシュワ感は懐かしく、体が喜んでいる。
やはり酒が大好きなドワーフの血なのか、アルコールが入ると気持ちもすぐに上がった。
「イワンはリーダー・ヨーゼフの片腕とも言われているからな。そのイワンが負けを認めたドワーフともなれば、コウを甘く見る奴はいなくなるだろうな」
ダンカンは嬉しそうにそう言うと、
「コウがイワンに勝利した記念と、ちゃんとしたお酒デビューを祝して乾杯!」
と号令をかける。
すると髭無しドワーフ達もコウと肩を組んで一緒に、
「「「乾杯!」」」
と喜んで祝杯を挙げるのであった。
翌日。
「……飲み過ぎた……」
コウはみんなの奢りという事で、乾杯後、たらふく勝利の美酒を味わったのだが、さすがに調子に乗り過ぎた。
前世でもこれほどお酒を美味しく感じた事がなかっただけに、これはドワーフの血がそう感じさせたのかもしれないが、とにかく飲み過ぎた。
「ドワーフの酒好きは有名だけど……、これは弱点でもあるなぁ……。うっ!」
コウは顔を青ざめさせてそうつぶやくと、家の裏で朝から何度も小さい虹を作り出すのであった。
「『半人前』がイワンに勝った? 何だよ、そのデマ。俺だってイワンに勝てないのに、『半人前』が勝てるわけないだろう!」
「誰だよ、そんな噂を広めた奴は。さすがに温和なイワンでもそれを知ったら暴れるぞ!」
「え? 噂の出元はイワン本人!? そんな馬鹿な……!」
と、当初は誰もがその噂を信じなかったが、『太っちょイワン』本人が周囲に『半人前』のコウに負けたと吹聴しているのだと聞いて誰もが驚いた。
なにしろ『太っちょイワン』は、この街のドワーフの中で一番力持ちだが、その事を鼻にかけた事はなく、誰もがそんなイワンを寡黙なドワーフの典型として評価していたからだ。
それなのに負けた事を周囲に吹聴して回っているというのだから、耳を疑わずにはいられない。
だが厳密には、イワンは聞かれたから答えていただけであった。
誰もが『半人前』のコウを相手に、イワンが負けるとは思っていないから、悪い噂と考え本人からその嘘を否定してもらおうと聞きに来るのだが、
「イッテツの鍛冶屋で『半人前』のコウに腕相撲勝負を挑んで負けた。あいつは正真正銘一人前のドワーフだ」
と、本人が正直に答えるものだから、周囲は負けたイワンが言うのなら事実らしいという事で驚き、それを友人や家族、親戚に話してそれが一気に広まったのであった。
ドワーフ達行きつけの酒場──
「コウ、よくイワンに勝ったな! わははっ!」
髭の生えないコウの為に、自分の髭を剃る男気を見せたドワーフ、黒髪、茶色の目に右頬に十字傷が特徴的なダンカンがコウの背中を叩いて大笑いをしていた。
その周囲には同じく一人前の証明の一つである髭を剃って顔がつるつるのドワーフが八人、コウを囲んでエールを片手に同じように笑っている。
「こんな騒ぎになるとは思いませんでしたよ……」
コウはイッテツと自身で製作した最高品質の戦斧を守る為にやむなく勝負をしたのだが、その反響には正直驚きであった。
なにしろこの目の前のドワーフ仲間を助けた時でさえ疑われたし、その時は他のドワーフ達の目撃者がいたのにも拘らず『半人前』呼びは変わらなかったのだ。
だが、イワンが自らコウに腕相撲で負けたと証言すると、それまでコウの活躍に半信半疑であった他のドワーフ達も手のひらを返した。
「もしかするとイワンの奴、わざとコウに勝負を挑んだんじゃないか?」
と、ダンカンは頬の十字傷を擦りながら、推察してみせた。
「わざと?」
コウはその理由がわからないから、首を傾げた。
『太っちょイワン』とは、あまり面識がない。
自分はドワーフ一の力持ちであるイワンを有名人としてよく知っていたが、あちらがこっちを知っていたのかはわからない。
まあ、コウはドワーフなのに成人しても筋肉もない華奢な体に髭も生えていない珍しいハーフドワーフだったから、姿形くらいは認識されていたかもしれないが、だからと言って絡まれる程、関わった記憶は全くないのだ。
「ああ。もしかしたら、こいつらの命をコウが救う活躍をした事で、イワンもコウの存在を気にしていたのかもしれないぞ。なにしろ、現場にいたドワーフ達十人以上でも動かなかった大岩を瀕死のコウが加勢したら簡単に動いたんだからな。怪我していなかったらどのくらいの力があるのかと気になったんじゃないか?」
ダンカンが憶測だが、コウに勝負を挑んだ理由を口にした。
すると他のドワーフも頷き、色々な憶測を始めた。
「ドワーフ仲間の中でイワンの力が一番強いのは、誰もが知っている周知の事実だからなぁ。もしかしたら、周囲の誰かが、『コウがイワンより強いかもしれない』とか言ったんじゃないか?」
「あり得るな。──あ、俺達はそんな事一言も言っていないぞ?」
「だけど、イワンが自分の負けを吹聴する理由は何だ?」
「そうだよな? コウに負けた事をわざわざ周囲に言って回る理由がわからん」
「コウ、イワンに何かしたのか?」
と髭無しドワーフ達は、疑問を口にするとコウに聞く。
「僕はイワンさんと面識ないですよ! 僕が聞きたいくらいです」
コウはそう答えると、一人前と認められてようやくお酒も飲めるようになっていたので、手にしたエールを口にした。
退院祝いの時の一杯以来のエールは、前世のものと比べるべくもなく、やはりぬるかった。
だが、喉を刺激するシュワシュワ感は懐かしく、体が喜んでいる。
やはり酒が大好きなドワーフの血なのか、アルコールが入ると気持ちもすぐに上がった。
「イワンはリーダー・ヨーゼフの片腕とも言われているからな。そのイワンが負けを認めたドワーフともなれば、コウを甘く見る奴はいなくなるだろうな」
ダンカンは嬉しそうにそう言うと、
「コウがイワンに勝利した記念と、ちゃんとしたお酒デビューを祝して乾杯!」
と号令をかける。
すると髭無しドワーフ達もコウと肩を組んで一緒に、
「「「乾杯!」」」
と喜んで祝杯を挙げるのであった。
翌日。
「……飲み過ぎた……」
コウはみんなの奢りという事で、乾杯後、たらふく勝利の美酒を味わったのだが、さすがに調子に乗り過ぎた。
前世でもこれほどお酒を美味しく感じた事がなかっただけに、これはドワーフの血がそう感じさせたのかもしれないが、とにかく飲み過ぎた。
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本当に、ありがとうございます。
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