転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
17 / 190

第17話 三番勝負

しおりを挟む
 コウと人族の腕比べは、翌日の昼に行われる事となった。

 鉱山責任者の人族は、自慢の部下を連れてくると、

「今なら、土下座すれば契約の採掘量を増やす事だけで許してやるぞ?」

 と自信満々に告げた。

 責任者が連れてきた男は、ドワーフの頭いくつ分あるのかわからない程大きく、その腕周りは確かにドワーフ並みだ。

 それを見てコウもさすがに相手が悪いのではないかと心配になった。

 だが、ヨーゼフはコウの背中を軽く叩くと、

「自信を持て、コウ。イワンに腕相撲で勝った時点で、この街でお前に腕力で勝てる奴はいないからな」

 と言って不敵に笑うのであった。

「なんだ、本当に良いのか? ……なら仕方ない。今回の勝負は街長様からも正式に許可を頂いている。勝負方法も、街長様からの提案内容で決着を付ける。その内容は、樽投げ、腕相撲、そして、体術勝負の三つだ。樽投げと腕相撲は一ポイントずつ、体術勝負が二ポイントの合計三ポイント取得者の勝利となる。引き分けの場合は、再度、腕相撲で決定する、いいな?」

 この提案には集会所に集まっていたドワーフ達からざわめきの声が上がった。

 というのも、樽投げ、腕相撲、これは腕力と技術の勝負だからわかるが、体術はそうとばかりはいかない。

 明らかにコウがドワーフとして腕力に優れていた場合、逆転する為の保険に体術を入れたと誰しもが思ったのだ。

 しかし、この勝負を考えたのは街長である。

 いちゃもんを付けるわけにはいかない。

「……体術で負けても、最後が腕相撲勝負なら、大丈夫だろう……。コウ、いけるか?」

 ヨーゼフは余裕の笑みから苦虫を噛み潰したような表情に変わり、コウに確認する。

「……体術経験ないんですが……、わかりました……。やります!」

 コウは急に結果が見えなくなって困惑するのであったが、ドワーフの未来の為にも負けるわけにはいかない。

 気合を入れると、提案に賛同して勝負する事にしたのであった。


 一戦目の樽投げ。

 これは、石の詰まった小さい樽を後ろ向きに投げて飛距離を競うもので、鉱山の街マルタでは祭りなどで行われるものらしい。

 らしい、というのは、その祭りは人族参加の祭りであり、ドワーフの参加は認められていないからだ。

 他にも獣人族なども、参加が認められていないから、異種族は参加した事がないので、経験がないコウは今回初体験である。

「そちらが先攻でいいぞ」

 責任者は円を描いた枠から出ないように投げろとだけコウに注意すると、投げるように促した。

 これは先攻を譲ったのではなく、投げ方を教えたくないだけだろう。

 後ろ向きに投げるという特性上、コツがあるのは当然で、万が一にも負けたくないから先に投げさせてしまう方が断然有利と考えたようだ。

 当然ながら初めてのコウはどういう感じで行うのかも知らないから、早く投げるように言われた事で、勝つ為の嫌がらせなのだとすぐに理解出来た。

「……」

 コウは相手が人間だから文句も言わず、ただ、所定の位置である円の中に、石の入った樽を担いで入る。

 コウは樽を持った瞬間、体に電流が走るような感覚を感じていた。

 あれ? なんだか力が入らない気がする……。

 コウは不思議な違和感に困惑しながらも、集中した。

 そして、一発勝負の樽投げを行う。

 コウは、樽を両手で持つと、股の下でぶらぶらと上下に揺らしながら、勢いを付けると、

「おりゃー!」

 と気合の入った声で樽を振り上げて後方に投げた。

 樽は大きな弧を描いて、コウの後方十五メートル以上先に飛んで落下する。

 これには、鉱山責任者、力自慢の部下の二人も、

「そんな馬鹿な!?」

 と思わず声が出た。

 それくらいの飛距離だったという事だろう。

 部下は上司に困惑気味に何か小声で話しているが、内容までは聞こえない。

 だが、ドワーフ・リーダーのヨーゼフが、早く投げるように促すと、部下も気持ちを切り替えて円を描いた中に入ると樽を担ぎ、コウと同じ投げ方で後方に投じた。

 樽はコウの時と同様、弧を描いて後方に飛んでいくが、コウの時よりは低い軌道で、落下するのも早かった。

 明らかに勝負はコウの勝利だ。

 責任者は渋い表情を浮かべていたが、

「初戦はうちの負けだ」

 とだけ答えると部下を手招きして次の腕相撲対決に備えて何やらアドバイスを始めるのであった。


「……おかしいなぁ……」

 コウはしっくりきていなかった。

 重さ的にはもっと遠くに投げられると思っていたからだ。

 だが、樽を手にすると謎の痺れと共に力が入らなくなっていた。

「でも、勝ったから良いか……」

 コウはそう自分に言い聞かせると、気持ちを切り替える。

 そして、休憩を挟んで樽が用意され、そこに腕を置いて二回戦である腕相撲対決に入った。

 今度はドワーフ代表として、納得のいく勝ち方をするぞ!

 コウはそう自分に言い聞かせて、相手の手を握る。

 すると、また、さっきのように、体が痺れるのがわかった。

 どうやらさっきのは気のせいではなかったようだ。

 対戦相手の手から何か伝わってくる感触がある。

 だが、それが何なのかまではわからないから、言葉に出来ない。

「どうした、コウ。大丈夫か?」

 審判役のヨーゼフが、何か複雑な表情を浮かべるコウに聞く。

「あ、いえ、大丈夫です……!」

 コウはヨーゼフの声に、集中する事に切り替え、相手を見る。

 すると、対戦相手はコウの様子を見てニヤリと笑みを浮かべていた。

 それを見てコウはようやく理解した。

 どうやら、あちらは勝つ為に何か仕込んでいるのだと。

 この体が痺れて力が入らない感覚は気のせいではなかったのだ。

 それに気づいたコウの心に火が付いた。

 まだ、体は痺れて力は入らないが、こんな卑怯者に負けるわけにはいかない。

 コウは、ヨーゼフの「勝負!」という掛け声と共に、目一杯の力を振り絞るのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...