転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第46話 報告の報酬

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 ララノアは、ドワーフ達が作った村、『エルダーロック』で入手した情報を雇い主であるダーマス伯爵のその部下に報告した。

 ドワーフの村に誘ってくれたコウの事もあるが、調べた情報を報告する事が雇い主との契約だからだ。

「何? 井戸水の問題を自分達で解消している、だと!?」

 ダーマス伯爵の部下は、ララノアから情報を聞いて信じられないという驚きを見せた。

「……はい」

 ララノアは報告をする自分に、罪悪感を感じながら返事をする。

「それに廃坑を改めて掘り始めているのか? ──……まだ、掘り残しが? ……いや、あそこは代々の領主様の指示のもと、徹底的に掘り尽くしてもう鉱石はほとんどないはず……。こっちは心配する必要はないはずだ……」

 部下はぶつぶつとつぶやき、上司であるダーマス伯爵にどう報告したものかと頭を悩ませる。

「あの……。報酬を頂けますか……?」

 ララノアは人族としての証明書を発行してもらえるという約束のもとに雇われたのだ。

 と言っても自分の立場では命令されたら断る理由もない立場ではあったが。

「あん? ──……ほらよ」

 ダーマス伯爵の部下は思案中だったから、ララノアに声をかけられても、まだいたのかという感じで懐から革袋を取り出しその中から、銀貨を一枚投げて渡す。

「え? これだけ……ですか?」

「なんだ、文句があるのか! 半端者のお前を拾ってやったのは俺だぞ?」

 ダーマス伯爵の部下は、高圧的にララノアを睨む。

「それは感謝しています。……でも約束では、私の人族の証明書の発行と小金貨一枚のはずでは……?」

 ララノアはショックを押し隠して冷静に言葉を返す。

「それはただの口約束だ。それにこの情報なら銀貨一枚がせいぜいだろう。それに、ダークエルフの血が流れているお前に人族の証明書なんて純血を好むダーマス伯爵が発行してくれるわけがないだろうが!」

「そんな……! 待ってください! 約束を守ってください! 私困ります!」

 不安を押し殺していたララノアは、ダーマス伯爵の部下の非情な言葉に冷静さを失い、すがった。

「ええい、触るな! 汚れるわ! 黙って銀貨一枚で満足しろ! そうでないと無礼を働いたと伯爵に報告するぞ!」

 ララノアは足蹴にされて転倒する。

「うううっ……」

 ララノアは自分の未来の為に必要であった証明書が手に入らないとわかって、ショックが隠せず、涙を見せた。

 証明書の為にこれまで、つらい思いを我慢してここまでやってきたのだ。

 ダークエルフ族からは一族の半端者と追い出され、人族からは異種族との混血児と蔑まれ、その立場が曖昧なままだった。

 証明書さえあれば、人族の中で胸を張れる人生が送れると思っていたから、約束を反故にされた事はかなりショックであった。

 それにコウからの誘いも、ララノアは結果的に報告する事で裏切ったようなものであったから自分には何も残っていない気がする。

 ララノアは絶望感に苛まれたまま、屋敷を追い出されるのであった。


 ララノアはとぼとぼと領都の街中を歩いていた。

 どこをどう歩いていたのかは覚えていない。

 気づいたら、街外れのスラム地域にあるみすぼらしい小さな自分の家へと到着していた。

「……私の人生は銀貨一枚だったのね……」

 ララノアは銀貨を握りしめると、我慢に我慢を重ね、いろんな伝を頼ってようやくダーマス伯爵の部下に雇われるところまで辿り着いたのに、こんな結果だった事にうなだれた。

 そしてその目からは涙が零れ落ちる。

 これまで、前を向いて心折れそうな場面でも自分を奮い立たせてきたが、コウの優しい誘いを断ってまで選んだ道がこれであったから、その絶望感は計り知れないものがあった。

「ララ、荷物をまとめて。とっととこの街からおさらばするよ」

 背後から声がした。

 最近、一番嬉しかった言葉をかけてくれた声だ。

 ララノアは泣きながらゆっくり振り返る。

 そこには、コウが立っていた。

「……コウ……」

 ララノアはその綺麗な顔をくしゃくしゃにして、少年のような姿のドワーフの名を口にする。

「ほら、早く荷物をまとめなって」

 コウはララに再度声をかける。

「……大した荷物、ヒック……、ない……」

 ララノアは泣きながら、それだけ答えた。

「ほら、泣いてないで。今日はララの新たな門出なんだ。笑顔で新居に帰るよ」

 コウはそう言うとララの手を取る。

「ヒック……。……いいの?」

 ララノアはしゃくりを上げながら、コウに聞き返す。

 ドワーフの村の情報を報告してしまったのだ。

 それは親切なコウを裏切ったようなものであったから、聞き返さずにはいられなかった。

「はははっ、もちろんだよ! それに、大事な情報はララにも伝えてなかったから、気に病む必要はないよ?」

 コウは笑ってララノアの背中を摩る。

「それはそれで、酷い……、よー……!」

 ララノアは泣きながらコウを責める。

 もちろん、コウの優しさに冗談でツッコミを入れたのだが、泣きながらだから、はたから見ると責めているようにしか聞こえない。

「はははっ。ごめん、ごめん。じゃあ、行こうか!」

 コウはそう言うと、まだ、大泣きしているララノアの手を引いて、新居となるエルダーロックのわが家に向けて二人で帰路につくのであった。
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