転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
45 / 190

第45話 立場の違い

しおりを挟む
「え? コウって年上なの!? いくつ?」

 ハーフダークエルフのララノアは、目の前の人族の少年にしか見えない小さいコウが、自分が年上であると告げたので驚いて聞き返した。

「僕は、十八歳だよ……」

 コウは自分より大人びて身長も高く、色気漂うこの女性に何か負けた気がして小さい声で答えた。

「二歳も年上だったの? ──ごめんなさい。……苦労してきたのね」

 ララノアはあまりに若く見えるコウが『半人前』と呼ばれている事が想像以上に根深いものだと勝手に想像し、その苦労を察して謝る。

「ち、違うから! いや、違わないけど、なんか悔しい想像されている気がする……!」

 コウは自分の姿にコンプレックスを持ったドワーフ人生だったから、今でこそ、それも気にしなくなったつもりでいたが、やはり、少しはまだ、心の端に残っているものがある。

 お互い苦労してきただろう相手だけに、同情される意味も深い。

 それだけに、ララノアの言葉は、コウの心の深い部分に突き刺さるのだ。

「いいのよ。お互い人族の血が流れていると外見や血で差別は当然だもの。──……コウ。よかったら、私に協力しない?」

 ララノアはコウに親近感をかなり感じたのか、真剣な表情でコウに何やら申し出をする。

「協力? ──そう言えばララってこの村に何の用だったの? 色々と案内したけど、目的を聞いていなかったよ」

 コウは肝心な事を聞き忘れていたとばかりに、疑問を口にした。

「……ちょっと、こっちに来て」

 ララノアはコウを手を引っ張ると人気のない茂みまでコウを引っ張っていく。

「……コウ。あなた、今の生活から脱したいでしょ? 私も今の生活から脱したいの。それで私、今、ある雇い主の下で働いているんだけど、今回の仕事で結果を出せば、正式に人族としての身分証と仕事を貰える約束をしているから、私に協力して一緒に身分を得ない?」

「……ララは何の仕事をしているの?」

 コウはララノアの話から不穏なものを少し感じた。

 人族としての身分証という事は、雇い主は人だろう。

 そして、今、その仕事中にドワーフの新天地『エルダーロックの村』にやってきている。

 それは、この村の情報を収集する事が仕事という事ではないだろうか?

 つまり、ララノアは人族の誰かがこのドワーフの村に差し向けた間者の可能性を意味した。

「……今は言えないわ。でも、私に協力すると約束してくれたら、上に私が話して、あなたが協力的で役に立つと伝えるわ。どう?」

「言えないんじゃ答えようがないよ。それに雇い主は誰? それも言えない?」

「……どう言えばいいだろう……? ──コウの心配はわかるわ。ちゃんと地位のある人の約束じゃないと信用できないものね? そこは安心して、ちゃんとした貴族様だから。今の、差別された生活から脱する好機よ! 一緒に幸せになりましょう!」

 ララノアは勘違いとはいえ、自分と立場が似ているコウを見捨てる事が出来ずに、勧誘した。

「……とりあえず、村をまだ、案内するから付いてきて。この話はその後にしよう」

 以前の前世の記憶を取り戻す前の自分なら、この誘いに乗っていただろう。

 現状を自分の力では脱する事が出来ず、苦しんでいたからだ。

 そこにララノアのような自分と立場を同じくする者が、仲間として手を差し伸べてくれたら掴まずにはいられない。

 しかし、今は違う。

 ダンカン達髭無しグループのみんなや、村長のヨーゼフ、その娘のカイナ、医者のドクに鍛冶屋のイッテツ、それにドワーフ内の立場を強固にしてくれた、太っちょイワンなど友人や仲間、頼れる上司にも恵まれ、今や同じドワーフとして、頼もしい仲間として、信頼を得ているのだ。

 ララノアは過去の自分だ。

 いや、過去の自分よりまだ、強い人だろう。

 自分の力で現状から抜け出そうと必死にあがき、同じ立場だと思っている僕にも助け船を出してくれているほどの人だからだ。

 だが、それも今のコウから見るととても危うい立場である。

 ララノアは僕と共に現状を打破しようとしてくれているが、想像では多分、すぐに切り捨てられる駒の一つとして扱われている立場だと睨んでいた。

「……わかったわ。私もコウの案内がないと自由にこの村の情報を入手できないし」

 ララノアはコウの真剣な物言いに、こちらの誘いを真剣に検討してくれるようだ、と解釈し、今は自分の任務に集中する事にしたのであった。



「──というわけで、現在、水の確保もできて、外に頼る事なく自立できているんだ」

 コウはドワーフの村の貯水池の建造や、そのろ過装置なども簡単に説明して人族から騙されたこの現状から脱した事を伝えた。

 これにはララノアも少し心動かされた様子であった。

 この村のドワーフ達は逆境に立たされる苦難の立場どころか、それを跳ね返し以前より良い環境を作っているのだ。

 ララノアは以前のここにあった人族の村は廃村、廃坑にしてこの地を去るような、「ゼロ」もしくは「マイナス」の土地を、良いものにしようとするドワーフ達の強い意志を感じた。

 それに対し、人族側の立場として(本人はそう思っている)、ドワーフから大金を騙し取るような行為に眉をひそめたし、鉱山も廃坑を巧妙に偽装して売却したとあっては、怒りすら覚える。

 その行為を行ったのが、雇い主なのだから、この対比に心が動かないわけがない。

 しかし、目の前のコウはそのドワーフから自分と同じように差別を受けている。

 そんなコウを助けたい気持ちもあり、葛藤していた。

「……コウ。あなたはどうしたい? これだけ協力してくれたなら、私が必ず口利きしてあげるわよ?」

 ララノアは痛快と思えるほどのドワーフ達の頑張りを聞いてなお、コウの立場を考え、人族の方に勧誘した。

「ララ、僕からも言わせて。──僕達ドワーフを騙したダーマス伯爵に正義があると思う? そんな奴の手下として生きる事に君は胸を張れるの? 確かに今の状況から脱したい気持ちは痛いほどよくわかる。僕もずっとそうだったから。だからこそ、言うのだけど……。──ララノア。そんな雇い主の下から離れてここで暮らさない?  もうすぐ僕の家がこの村の外れにできるんだ。そこなら部屋も多いから歓迎だよ?」

 コウは、他人を思いやれる気持ちの持ち主であるララノアに対して、逆にこちら側へと誘った。

「……え? 雇い主の名をなぜ……。──でも、コウは村の連中から『半人前』って差別を受けているじゃない。そんなところで生きるなんてつらくない?」

 ララノアは思わぬ誘いに混乱しつつ、コウの立場を気遣って問い質す。

「はははっ。『半人前』はね? それこそ以前は差別的な表現で使われていたよ。でも今では、僕に対する親しさを込めた言葉なんだ。だから、うちに来ない? ララなら大歓迎だよ。村のみんなもララに対して差別意識がないのは一緒に歩いていてわかったでしょ?」

 コウは笑顔で答える。

 その笑顔にララノアはようやくコウの境遇は自分の勘違いである事を知った。

 彼はすでに現状を打破して、自分の居場所を見つけているのだと。

「……」

 ララノアはどう言ったらいいのか言葉が出ない。

 自分は雇われの身だから、仕事は最後までやり遂げないといけないという責任感もあるのだ。

 そして、やっと一言。

「……考えさせて」

 と答えて村をあとにするのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

処理中です...