転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
74 / 190

第74話 峠越えの街道

しおりを挟む
 コウ達一行は、近道である峠越えの街道を進んでいた。

 この道なら、予定よりも二日程早く到着する予定だから、王都見物なども出来そうである。

 ちなみにこの峠越えの街道は坂道が続くので、コウは馬車から降りて剣歯虎《サーベルタイガー》のベルと一緒に並走するつもりでいた。

 だが、ベルがかわいい声で「にゃむ」と背中に跨るように勧めてくる。

「え、いいの? それじゃあ、遠慮なく──」

 コウはそう言うとモフモフのベルの背中に飛び乗った。

「おお! ベルの背中、毛が柔らかくて乗り心地がいいし、陽の香りがしていいね!」

 コウはベルの毛を握って振り落とされないようにして、クンクンと匂いを嗅ぐのであった。

「ちょっとうらやましいな……」

 馬車組であるダークエルフのララノアが楽しそうなコウを見てそう言う。

「ふふふっ。帰り道、ベルにお願いしてみたら? あれだけ大きいのだからララでも乗れそうよ?」

 カイナは見た目は魅惑的なスタイルの持ち主で成熟した大人にしか見えないこの友人の子供っぽいところに微笑みながら応じた。

 コウと同じくドワーフなので体の小さいカイナは十分乗れるだろうが、ララノアは高身長なのでギリギリと言ったところだろうか?

「そうかな? ──ベル、帰りは私が乗ってもいい?」

 ララノアはカイナの言葉で、勇気を得たのか、ベルに確認する。

「にゃう!」

 ベルはララノアの言葉に承諾したとばかりに鳴き返した。

「はははっ! じゃあ、この特等席は帰り、ララのものだね」

 コウはそう告げると、ベルに跨ったまま、馬車を追い越して先に駆けていくのであった。


 コウはベルに跨ったまま峠越えの街道をみんなより先にすすんだ。

 傾斜のきつい道であったが、ベルには何の問題もなく駆け上がっていく。

 しばらく進むと峠を越える為の大きな石橋が架かっており、そこを結構豪華な造りの馬車がこちらにやってくる。

 コウは念の為、橋の手前でその馬車が通過するのを待つ。

 街道の大きさに比べたら、橋の幅は馬車一台が余裕をもって通れるくらいだったからだ。

「うわっ! ──魔獣がいると思ったら、坊やがテイムした魔獣かい? 立派なもんだなぁ。あ、君、この先に行くのならここから引き返した方がいい。この先は落石で道が通れなくなっているからね」

 御者は馬車を止め、コウとベルを見て驚いていたが、コウを少年の魔物使いだと勘違いしたようだ。

 そして、親切に大事な事も教えてくれた。

「そうなんですか? 教えてくれてありがとうございます!」

 コウは感謝すると、ベルに跨ったまま、橋を渡ろうとする。

「おいおい、落石で通れないんだぞ?」

 御者はコウが自分の話を理解していないと思ったのか、再度声をかけた。

「僕、鉱夫なので大きさ次第では自分で撤去するので大丈夫です!」

 コウはそう応じながら、厚意を見せてくれた御者に手を振って答えて駆けていくのであった。

「鉱夫? ──ボス、どうします? 本当に撤去してもらえるなら遠回りして王都への到着が遅れるよりはマシだと思いますが」

 御者は馬車に搭乗している雇い主に声をかける。

「……鉱夫……か。その少年の言葉を信じて引き返してみよう。どうせ、このままだと、王都に到着するのは時間的にギリギリだし」

 馬車内から若い男性の声がして、御者に命令した。

「へい。それじゃあ、引き返します」

 御者は馬車を操ってUターンすると馬車を元来た落石現場に向かわせる事にするのであった。


 コウとベルは落石現場にもう到着していた。

 ベルが想像以上に早く駆けてくれたおかげだ。

 そこには行商や冒険者など徒歩で峠越えをしようとしていた人々が落石を上って越えている最中であった。

「大きな岩がひとつにあとは土砂かぁ。これならいけそうだ」

 コウは現場を確認すると、徒歩で越えていく人を見送った後、魔法収納付き鞄に土砂をあっという間に入れていく。

 まるで掃除機で吸引していくように、大きな岩以外は綺麗にしていった。

 あっという間に大岩以外を全て片付けると、反対側から徒歩でこちらに向かっていた人々が、大岩の隙間からこちらに通過してくる。

「君が、土砂を掃除してくれたのか!? 助かったよ、ありがとう!」

「ひゃー! 君、何かの能力持ちかい? 大したもんだ」

「テイマーにお掃除能力か。凄い少年だな! ありがとう」

 通行人達は一様にベルに驚きつつも、コウのお陰で通過できるので感謝して通っていく。

 そんなコウは少年扱いだったが否定はせず、通行人が落ち着くまで待つことにした。

 そして、通行人がいなくなると、魔法収納鞄からコウ自慢の鉱夫道具を取り出す。

 全てが超魔鉱鉄製の逸品である。

 コウはその自慢の杭を手にして大岩の層を確認すると、その境目を見つけて杭をあてがい、同じくこれも超魔鉱鉄製の金槌でその杭を打ち込む。

 すると、どうだろう。

 杭は大した力も感じなかったように容易に大岩に食い込んだ。

 そして、次の瞬間、大岩に大きな亀裂が入ると、見事に砕けて小さな石になるのであった。


 丁度そこに、先程の引き返してきた馬車が追いついてきたところであり、御者と搭乗者の雇い主の目の前で、大きな岩が砕け散る様を目撃する事になる。

「「「ひゃ!?」」」

 御者と雇い主、それに護衛として乗っていた冒険者の計五名はその光景に、驚いて変な声を漏らす。

 そんな中、大岩が崩れて周辺が土煙りに覆われたので、御者は思わず馬車を止めた。

 視界が、失われているその間に、コウは魔法収納鞄で砕けた石を回収する。

 そして、土煙が晴れると、そこには体に付着した埃をはたくコウと、クシャミをするベルの姿だけがあるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...