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第75話 続・峠越えの街道
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コウを信じて引き返してきた馬車の搭乗者は、御者にあの少年の名前を聞いておいてくれと告げた。
「承知しました。ボスが知りたがるのもわかります。あんな大岩を一撃で砕く鉱夫なんてただ者ではないですよ」
御者はそう答えてコウの傍まで馬車を寄せる。
コウと剣歯虎《サーベルタイガー》のベルは、ヨース達馬車が来るのを街道の端で待っている状況だ。
「少年、ありがとうな! お陰で遠回りしなくて済んだよ。ところで、名前はなんて言うんだい?」
御者はコウに感謝の意を示すと、雇い主に言われた通り名前を聞く。
「いえ、僕も連れの馬車が後から来るから通れるようにしたいのは一緒だったので……。──僕の名前ですか?」
コウは当然の事をしただけだと思っていたので謙虚な姿勢で応じたが、名前を聞かれる事になるとは思っていなかったので、少し警戒した。
「すまない。そちらの名を聞く前にこちらが名乗るべきだったな。私はこの馬車の持ち主でゴセイという。御者に質問させたのは私だ、すまない」
馬車の中からシルクハットを被った金髪に紫の目をした優男がひょっこりと顔を出して警戒しているコウに答えた。
「いえ、僕はコウと言います」
コウは相手が名乗ったので、こちらも名乗らずにはいられないので、名乗る。
だが、相手は人間のようだし、やはり警戒せずにはいられないところだ。
「私は鉱夫やその手のブランドにはあまり詳しくないのだが、君が大岩を砕く時に使用した道具は一瞬しか見えなかったが、一流ブランドのものと見た。君は有名な鉱夫なのかい?」
ゴセイにしたら当然の疑問だろう。
大岩を一撃で砕く能力、使用する道具の高級感、見た目は少年だがどこかの有名鉱山夫、もしくは大手鉱山商会の関係者だと思われて仕方がないところだ。
「いえ、僕はただの鉱夫で、有名でもありません。道具もアルバイト先で鍛冶屋の職人さんと一緒に自作したものですし……」
コウもあまり答え過ぎてもまずいと思ったのか、嘘はついていないが、詳しくも答えない。
「はははっ。警戒されてるな。──こちらも助けてもらったのに質問ばかりですまなかった。つい興味を持つと突っ走るところがあるんだ。ここを通るという事は、王都まで急いでいるのだろう? 私達も同じでね。本当に助かったよ。それでお礼に王都の美味しいお店を案内するがどうだい?」
ゴセイはコウにお礼という口実で親しくなるきっかけを申し出た。
「僕には連れがいるので……。あ、すみません。連れが来ましたので、結構です!」
コウはそう言うと、背後から大鼠族のヨースが御者を務める馬車がやってきているのに気づいたので、誘いを断り、剣歯虎のベルと一緒にその場を離れる。
「はははっ! ボス、フラれましたね」
御者の男が、雇い主を茶化した。
「ちょっと傷つくなぁ。これでも男女問わず、誘いを断る相手は少ないくらい私の笑顔はウケがいいのに」
「それは仕方ないかもしれません。ぱっと見、少年テイマーのようでしたが、鉱夫としてあれだけの技量を踏まえるとドワーフの類。そして髭が生えていない事から、その子供なのかもしれませんから」
馬車に同乗していたゴセイの護衛役を務める冒険者がそう指摘する。
「ドワーフ? ……なるほどね。あんなに小さいのに、あれだけの技量はドワーフだからか……。それでもただのドワーフではないと思うんだが……」
ゴセイが首を傾げていると、ヨースが御者を務める馬車がゴセイの馬車を追い抜いていく。
その時、コウもベルの背中に跨った状態でぺこりとゴセイに頭を下げていくのであった。
「あれ、誰だったんだ? 結構いい馬車に見えたが……」
御者台上のヨースが横を並走するとコウに聞き返した。
「さぁ? さっきのところ、落石で道が塞がれていたから、通れないぞ、って教えてくれた人達だから。確かに中に乗っていた人は金持ちそうには見えたかな」
コウはゴセイの印象を金持ちそうな人の一言で片づけるのであったが、後日、偶然会う事になる。
「おいおい。あまり目立つような事をするなよ、コウ。ただでさえ、お前達は俺の護衛役という形で同行しているんだからな? 軍事選定展覧会に展示する作品の製作者だなんてバレたら大騒ぎになるぞ」
ヨースはそう言うとコウに釘を刺す。
「でも、落石をどけないと私達、王都に間に合わなかったかもしれないんだから、それは仕方がないんじゃない?」
ララノアがコウを庇って、そう告げる。
「二人とも落ち着いて。 コウが相手に何も話さなければうまく誤魔化せるわよ。そうでしょ? コウ」
カイナがヨースとララノアが言い合いになりそうだったので仲裁に入った。
「うっ……。──鉱夫と名乗って、鍛冶屋でバイトしていると話しちゃった……」
コウは苦笑すると自白する。
「おいおいおい……! コウ、相手はそもそも誰だよ? そんな見知らぬ相手に情報与えてどうするんだ。コウは商人にはなれないな」
ヨースはそう言うと、御者台の上で大袈裟に呆れる素振りをみせた。
「一応、相手の名前は聞いておいたから! ……ゴセイだったかな?」
コウはムキになってヨースに反論する。
「あの馬車のしっかりした造りと豪華さから見ると、金持ちなのは間違いないが、職業は聞いたのか? 名前だけって事はないだろう?」
ヨースはそう言うとコウが聞きだした情報を確認する。
「うっ……。あ、でも、王都まで急いでるって言ってたかな? あとお礼に王都で美味しいものを奢るって。まぁ、断ったけど……。──あっ……、ほとんど何も聞き出せていないや……」
コウは、自分が大した情報も聞き出せず、話していた事をそこで自覚した。
「コウ、お前は自分で思うより、重要人物なんだからな? 本当に少し気を付けてくれ。まぁ、素直ないいドワーフである事がコウの取り柄でもあるからな。次から慎重に対応してくれよ? ──まさか、あの馬車。軍事選定展覧会の関係者じゃないよな? そんな偶然、さすがにないか! はははっ!」
ヨースはこれ以上言っても仕方ないし、コウを責めるつもりもないので注意だけすると、確率の低い可能性を口にして笑う。
「そう言えば、あのゴセイって人、僕の使用していた道具類を専門外と言いながら、一瞬見ただけで一流ブランドじゃないかって指摘してたなぁ。……そういう意味では一流の商人の類ではあるのかもしれない……」
コウは今さらながらそう分析すると、一人そうつぶやくのであった。
「承知しました。ボスが知りたがるのもわかります。あんな大岩を一撃で砕く鉱夫なんてただ者ではないですよ」
御者はそう答えてコウの傍まで馬車を寄せる。
コウと剣歯虎《サーベルタイガー》のベルは、ヨース達馬車が来るのを街道の端で待っている状況だ。
「少年、ありがとうな! お陰で遠回りしなくて済んだよ。ところで、名前はなんて言うんだい?」
御者はコウに感謝の意を示すと、雇い主に言われた通り名前を聞く。
「いえ、僕も連れの馬車が後から来るから通れるようにしたいのは一緒だったので……。──僕の名前ですか?」
コウは当然の事をしただけだと思っていたので謙虚な姿勢で応じたが、名前を聞かれる事になるとは思っていなかったので、少し警戒した。
「すまない。そちらの名を聞く前にこちらが名乗るべきだったな。私はこの馬車の持ち主でゴセイという。御者に質問させたのは私だ、すまない」
馬車の中からシルクハットを被った金髪に紫の目をした優男がひょっこりと顔を出して警戒しているコウに答えた。
「いえ、僕はコウと言います」
コウは相手が名乗ったので、こちらも名乗らずにはいられないので、名乗る。
だが、相手は人間のようだし、やはり警戒せずにはいられないところだ。
「私は鉱夫やその手のブランドにはあまり詳しくないのだが、君が大岩を砕く時に使用した道具は一瞬しか見えなかったが、一流ブランドのものと見た。君は有名な鉱夫なのかい?」
ゴセイにしたら当然の疑問だろう。
大岩を一撃で砕く能力、使用する道具の高級感、見た目は少年だがどこかの有名鉱山夫、もしくは大手鉱山商会の関係者だと思われて仕方がないところだ。
「いえ、僕はただの鉱夫で、有名でもありません。道具もアルバイト先で鍛冶屋の職人さんと一緒に自作したものですし……」
コウもあまり答え過ぎてもまずいと思ったのか、嘘はついていないが、詳しくも答えない。
「はははっ。警戒されてるな。──こちらも助けてもらったのに質問ばかりですまなかった。つい興味を持つと突っ走るところがあるんだ。ここを通るという事は、王都まで急いでいるのだろう? 私達も同じでね。本当に助かったよ。それでお礼に王都の美味しいお店を案内するがどうだい?」
ゴセイはコウにお礼という口実で親しくなるきっかけを申し出た。
「僕には連れがいるので……。あ、すみません。連れが来ましたので、結構です!」
コウはそう言うと、背後から大鼠族のヨースが御者を務める馬車がやってきているのに気づいたので、誘いを断り、剣歯虎のベルと一緒にその場を離れる。
「はははっ! ボス、フラれましたね」
御者の男が、雇い主を茶化した。
「ちょっと傷つくなぁ。これでも男女問わず、誘いを断る相手は少ないくらい私の笑顔はウケがいいのに」
「それは仕方ないかもしれません。ぱっと見、少年テイマーのようでしたが、鉱夫としてあれだけの技量を踏まえるとドワーフの類。そして髭が生えていない事から、その子供なのかもしれませんから」
馬車に同乗していたゴセイの護衛役を務める冒険者がそう指摘する。
「ドワーフ? ……なるほどね。あんなに小さいのに、あれだけの技量はドワーフだからか……。それでもただのドワーフではないと思うんだが……」
ゴセイが首を傾げていると、ヨースが御者を務める馬車がゴセイの馬車を追い抜いていく。
その時、コウもベルの背中に跨った状態でぺこりとゴセイに頭を下げていくのであった。
「あれ、誰だったんだ? 結構いい馬車に見えたが……」
御者台上のヨースが横を並走するとコウに聞き返した。
「さぁ? さっきのところ、落石で道が塞がれていたから、通れないぞ、って教えてくれた人達だから。確かに中に乗っていた人は金持ちそうには見えたかな」
コウはゴセイの印象を金持ちそうな人の一言で片づけるのであったが、後日、偶然会う事になる。
「おいおい。あまり目立つような事をするなよ、コウ。ただでさえ、お前達は俺の護衛役という形で同行しているんだからな? 軍事選定展覧会に展示する作品の製作者だなんてバレたら大騒ぎになるぞ」
ヨースはそう言うとコウに釘を刺す。
「でも、落石をどけないと私達、王都に間に合わなかったかもしれないんだから、それは仕方がないんじゃない?」
ララノアがコウを庇って、そう告げる。
「二人とも落ち着いて。 コウが相手に何も話さなければうまく誤魔化せるわよ。そうでしょ? コウ」
カイナがヨースとララノアが言い合いになりそうだったので仲裁に入った。
「うっ……。──鉱夫と名乗って、鍛冶屋でバイトしていると話しちゃった……」
コウは苦笑すると自白する。
「おいおいおい……! コウ、相手はそもそも誰だよ? そんな見知らぬ相手に情報与えてどうするんだ。コウは商人にはなれないな」
ヨースはそう言うと、御者台の上で大袈裟に呆れる素振りをみせた。
「一応、相手の名前は聞いておいたから! ……ゴセイだったかな?」
コウはムキになってヨースに反論する。
「あの馬車のしっかりした造りと豪華さから見ると、金持ちなのは間違いないが、職業は聞いたのか? 名前だけって事はないだろう?」
ヨースはそう言うとコウが聞きだした情報を確認する。
「うっ……。あ、でも、王都まで急いでるって言ってたかな? あとお礼に王都で美味しいものを奢るって。まぁ、断ったけど……。──あっ……、ほとんど何も聞き出せていないや……」
コウは、自分が大した情報も聞き出せず、話していた事をそこで自覚した。
「コウ、お前は自分で思うより、重要人物なんだからな? 本当に少し気を付けてくれ。まぁ、素直ないいドワーフである事がコウの取り柄でもあるからな。次から慎重に対応してくれよ? ──まさか、あの馬車。軍事選定展覧会の関係者じゃないよな? そんな偶然、さすがにないか! はははっ!」
ヨースはこれ以上言っても仕方ないし、コウを責めるつもりもないので注意だけすると、確率の低い可能性を口にして笑う。
「そう言えば、あのゴセイって人、僕の使用していた道具類を専門外と言いながら、一瞬見ただけで一流ブランドじゃないかって指摘してたなぁ。……そういう意味では一流の商人の類ではあるのかもしれない……」
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
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