聖女は2人もいらない!と聖女の地位を剥奪されました。それならば、好きにさせてもらいます。

たつき

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昼下がりの穏やかな広場には、平和な風景が広がる。
人々は様々な活動に興じ広場には笑顔があふれていた。

ここアルカディア王国は、大陸でも1、2と言われるほど平和な国だ。

「おっちゃん、これ何の肉だ?」

「兄ちゃん旅人かい?これはアルカディア名物、暴れ魔牛の串焼きさ」

「驚いた。この国はあの暴れ牛が流通しているのか」

別の国から来た旅人が商人の言葉に驚いた反応を見せる。

それもそのはず。
暴れ牛はそう簡単に狩れる対象ではなく、ほとんどの国では貴族階級のみが口にできる高級品なのだ。

「それもこの国の聖女様のおかげだよ」

「聖女様が2人もいる国はやっぱ別格だな。羨ましい限りだよ」

旅人と商人が会話をしていると、平穏な雰囲気が突如として崩れ去った。

「何だてめえ!」
「うるせえぞ」

酔っ払いたちが口論から争いを始め、その荒々しい声が広場に響き渡る。

「平和な国でもこういう輩はいるもんだな。いや平和だからこそか」

旅人は暴れる男達を見て思った。

広場にいた人々は驚きと恐れを交えながら、一目散にその場から離れていく。
何人か憲兵を呼びに行く者もいた。

「死ねや!」

1人の酔っ払いが短剣を抜きを思い切り投げつけた。

対峙していた男はそれを辛うじて避ける。

「きゃあああ」

男が避けたことで、逃げ遅れていた母子に向かって飛んでいく。母親は子供を抱き抱えて叫び声をあげた。

「あぶねえ!」「いやぁ!」

周りにいた人々は叫んだり、目を背けたりした。

『キィン』

人々がもうダメだと思った最中、聖女テレサが母子の前に立ちはだかり、母子を守り抜いた。

「大丈夫?ここは危ないから離れて」

テレサは母子をその場から離れさせ、酔っ払いたちに呼びかけた。

「あなたたち、今すぐやめなさい!」

冷静で力強い声で酔っ払いたちに呼びかける。その言葉に酔っ払いたちも一瞬驚き静まり返る。

「暴れて何が悪いってんだよ。ここは自由な広場だろうが!」
「そうだ!そうだ!」
「すっこんでろよ」

男の声が上がり、仲間たちの興奮も増していく。

「言っても分からないのなら、仕方がないわね」

テレサは深いため息を吐きながら、男達に近づいていった。

「悪かった」
「もう暴れねえよ」
「許してくれ」

数分後、暴れていた酔っ払い達はテレサの前で地面に横たわっていた。

「聖女さま!ありがとうございます!」

その光景を見ていた群衆から歓喜の声が上がった。

「みなさん大丈夫ですか!…?」

少し遅れてやってきた憲兵達が、広場の様子に驚いた様子を見せる。

「後は任せました」

テレサは憲兵にそう告げて広場から立ち去る。
テレサの姿を目にした憲兵達は何が起きたのか理解したようだった。

「テレサ様のお手を煩わせてしまい申し訳ございません。後はお任せください」

憲兵達は暴れていた酔っ払い達を拘束すると、広場から連行した。

「ふーん。あれが噂の聖女様か」

広場の上から、旅人はその光景を見下ろしていた。

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