聖女は2人もいらない!と聖女の地位を剥奪されました。それならば、好きにさせてもらいます。

たつき

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広場の騒ぎを鎮め、立ち去るテレサの横を華やかな馬車が通り過ぎる。

馬車はテレサを少し追い越して止まった。

「これは、テレサ様じゃないですか」

馬車が停まり、窓から顔を覗かせたのはは、エターニア家のフィオナだった。

フィオナはこの国のもう1人の聖女。
守護の女神の恩恵を得ており、テレサと双璧をなす存在だ。

「さすがはテレサ様ですね。あのような野蛮な者を真っ向から抑えつけれるのですから。ただ、暴れる人を抑えるのは憲兵や騎士団のお仕事ではないですか?神聖な聖女の力は強力な魔物に備えておくべきではなくて?」

フィオナは扇で口元を隠しながら微笑む。

「私は人々の笑顔が守れるならそれで十分なの。魔物だろうが酔っ払いだろうが関係ないわ。でもご心配なく、いざというときは全力で聖女の力を使うから」

テレサはフィオナからの皮肉混じりの発言に負けじと答えた。

「その『いざというときが』起こるわけありませんけど。いまも結界を維持するために祈りを捧げてきたところですもの」

フィオナはこの国を守る結界を張っている。

その効力により強力な魔物はこの国に近寄ることもない。

たまに低レベルの魔物が結界内に侵入する事はあるが、騎士団で対応可能な範囲内だ。

そしてそれは、王都だけではなく、定期的に近隣を廻って祈りを捧げていた。

フィオナが聖女としての務めを果たしているのはテレサも理解している。

そして、自分が聖女としての役目を果たせれてない事も。

「フィオナ様の力でこの国が守られていることは重々承知しています」

それもあってフィオナに対して、引け目を感じているのも事実であった。

「いえいえ、テレサ様のお力も必要だと思っていますよ。わたしには街で暴れる者たちと向き合うのはちょっと難しいもの。2人の聖女として適材適所、自分のできることをしてこの国を護っていきましょうね。それでは、王宮に用事がありますので、またの機会に」

馬車は王宮に向かって再び走り出した。

フィオナは2人でと言っていたけれど、テレサが聖女として何もできていないと言いたいことはしっかりとテレサに伝わっていた。

テレサは悔しさから静かに拳を握りしめ視界から遠ざかっていく馬車の姿を見送っていた。

「2人の聖女様を同時に拝めるなんて今日は幸運な日だな」

「お姿が珍しいのはフィオナ様だけどな。テレサ様はよくこのあたり歩いてるし」

「フィオナ様に比べたら、テレサ様は有り難みが少ないよな。まあ、どちらも国を守るために尽力してくれてるんだろうけどな」

「でもさ、俺はテレサ様の聖女のお力は見たことないぞ。強いことは知ってるけど」

2人の姿を見かけた住民達が話している。それに気がついたテレサが住民達の方に視線を向ける。

「おっ、おい、さっさと行くぞ」

住民は会話を聞かれたと焦った様子で足早に立ち去っていった。

「お飾りの聖女か」

テレサはポツリとつぶやいた。
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