8 / 9
8
しおりを挟む
テレサは窓からの差し込む日の光を浴びて目を覚ます。
昨日と同じ気持ちの良い天気のはずなのに、テレサの気持ちは沈んだままだった。
さらに、昨日どうやって王宮から帰ってきたのか、帰ってきてから何をしていたのか全く覚えがない。
それほどまでに昨日の出来事がテレサにとって大きな事だった。
「お前の聖女としての地位を剥奪する!」
脳裏には昨日ルーカスの言葉がこびりつく。テレサはその言葉を思い出す以外に頭が働かない。
テレサは頭から布団をかぶり目を閉じた。
このままだと、これまで築き上げられてきた聖女としてのブレイズ家の名が汚れてしまう。
私の代でご先祖様たちの全てが無いものとされてしまう。
お父様もお母様もいない。誰にも相談もできない。どうしたらいいのか分からない。
テレサは重圧に押しつぶされそうになっていく。
【ジリリリ】
呼び出し音が屋敷に鳴り響く。
その音に気がついたテレサだが、動こうとしない。
【ジリリリ】
再び呼び出し音が鳴る。
【ジリリリ】
「あーもう!」
ぐちゃぐちゃになっている思考を整理する事を邪魔するように呼び出し音が何度も鳴り響く。
テレサは玄関に向かうと無言で扉を開けて外を確認した。
「テレサ様!おはようございます!」
門の前には、昨日と同じようにルーカスからの使者が立っていた。
「何ですか」
まだ何か言い足りないのかと、王宮に呼び出されるのかと、使者に当たるように言葉を発した。
使者は昨日と違うテレサの様子に驚いた様子を見せたが、ルーカスからの使者としての責務を果たすように姿勢を正し話し始める。
「テレサ様。ルーカス様より勅令になります」
使者は押印の付いた封筒を差し出した。
「ありがとう」
テレサは使者からその手紙を受け取る。
「どのような内容かは分かりませんが、聖女として頑張ってください。応援しています」
使者は封筒をテレサに渡すと、真っ直ぐな目で敬礼をした。
「・・・もう聖女ではないから」
テレサは小さな声でそう言って屋敷の中に戻った。
使者にはテレサが、何を言ったのか聞こえていなかったようで、不思議そうな顔をしていたが馬車に乗り屋敷を後にした。
自室に戻り封を開けて中身を確認する。
『明日の12時に民衆に向けた発表の場を設ける事にした。聖女として最後の勤めだ。必ず来るように』
ブレイズ家の聖女剥奪について、広く民衆に発表するらしい。
テレサは勅令書を丸めて放り投げると、ベッドに戻り布団を被った。
昨日と同じ気持ちの良い天気のはずなのに、テレサの気持ちは沈んだままだった。
さらに、昨日どうやって王宮から帰ってきたのか、帰ってきてから何をしていたのか全く覚えがない。
それほどまでに昨日の出来事がテレサにとって大きな事だった。
「お前の聖女としての地位を剥奪する!」
脳裏には昨日ルーカスの言葉がこびりつく。テレサはその言葉を思い出す以外に頭が働かない。
テレサは頭から布団をかぶり目を閉じた。
このままだと、これまで築き上げられてきた聖女としてのブレイズ家の名が汚れてしまう。
私の代でご先祖様たちの全てが無いものとされてしまう。
お父様もお母様もいない。誰にも相談もできない。どうしたらいいのか分からない。
テレサは重圧に押しつぶされそうになっていく。
【ジリリリ】
呼び出し音が屋敷に鳴り響く。
その音に気がついたテレサだが、動こうとしない。
【ジリリリ】
再び呼び出し音が鳴る。
【ジリリリ】
「あーもう!」
ぐちゃぐちゃになっている思考を整理する事を邪魔するように呼び出し音が何度も鳴り響く。
テレサは玄関に向かうと無言で扉を開けて外を確認した。
「テレサ様!おはようございます!」
門の前には、昨日と同じようにルーカスからの使者が立っていた。
「何ですか」
まだ何か言い足りないのかと、王宮に呼び出されるのかと、使者に当たるように言葉を発した。
使者は昨日と違うテレサの様子に驚いた様子を見せたが、ルーカスからの使者としての責務を果たすように姿勢を正し話し始める。
「テレサ様。ルーカス様より勅令になります」
使者は押印の付いた封筒を差し出した。
「ありがとう」
テレサは使者からその手紙を受け取る。
「どのような内容かは分かりませんが、聖女として頑張ってください。応援しています」
使者は封筒をテレサに渡すと、真っ直ぐな目で敬礼をした。
「・・・もう聖女ではないから」
テレサは小さな声でそう言って屋敷の中に戻った。
使者にはテレサが、何を言ったのか聞こえていなかったようで、不思議そうな顔をしていたが馬車に乗り屋敷を後にした。
自室に戻り封を開けて中身を確認する。
『明日の12時に民衆に向けた発表の場を設ける事にした。聖女として最後の勤めだ。必ず来るように』
ブレイズ家の聖女剥奪について、広く民衆に発表するらしい。
テレサは勅令書を丸めて放り投げると、ベッドに戻り布団を被った。
0
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?
柊
ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。
※複数のサイトに投稿しています。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
【完結】 ご存知なかったのですね。聖女は愛されて力を発揮するのです
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
本当の聖女だと知っているのにも関わらずリンリーとの婚約を破棄し、リンリーの妹のリンナールと婚約すると言い出した王太子のヘルーラド。陛下が承諾したのなら仕方がないと身を引いたリンリー。
リンナールとヘルーラドの婚約発表の時、リンリーにとって追放ととれる発表までされて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる