魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき

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新たな門出

王都への旅路

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「ふぅ。いい天気だね、シリウス」

見渡す限りの青空の下、カイルは深く息を吐いた。

背負っているのは、自分のわずかな着替えと、シリウスのための手入れ道具、そしてバルカス様から贈られた地図だけだ。

「ワンッ!」

シリウスが弾むような足取りで隣を駆ける。白銀の毛並みが陽光を反射して、眩しいほどに輝いていた。

地図によるとこの辺りも魔物と遭遇する危険のある道のはずなんだけれど、カイルが進む先々で、森のざわめきが「スン」と消えていく。


やっぱり、僕は魔物に嫌われているんだな

カイルは自嘲気味につぶやいた。

「魔物使い」でありながら、カイルは歩くだけで魔物を追い払ってしまう。そのせいで、アルド達にもさんざん馬鹿にされた。


「あ、シリウス。ちょっと止まって」

カイルは足を止め、シリウスの首筋を優しく撫でた。指先が毛並みに触れた、その瞬間だった。

本人すら自覚していないカイルの膨大な魔力が、無意識のうちにシリウスへと流れ込む。

カイルが気づかないうちに、辺り一帯の静寂はさらに深まっていく。

森の奥に潜んでいた魔物たちは、姿の見えない「何か」に背中を撫でられたような得体の知れない圧迫感に震え、蜘蛛の子を散らすように、さらに遠くへと逃げ去っていった。

カイルの周囲は、まさに生きとし生けるものが一匹も近寄れない、「聖域」へと塗り替えられていた。

「なんだか、ますます静かになっちゃった。」

カイルは少し落ち込んだように肩を落とした。

その隣で、カイルから受け渡された魔力を「あくび」で逃がすシリウスだけが、主人の異常性に呆れたような視線を送っていた。

夕暮れ時、一行は街道沿いの小さな村に辿り着いた。

「おい、坊主! まさかこれからその森を行くのか?」

村の入り口で、老冒険者がカイルを呼び止めた。

「やめておけ! あの森には最近、ワーウルフの巨大な群れが居座ってやがる。俺たちのようなベテランでも、命からがら逃げ出したところだ」

ワーウルフ。

カイルは足元のシリウスを見つめた。シリウスは森の方をじっと見据え、何かを確かめるように耳を立てていた。

「おい坊主、その犬っころはワーウルフじゃねえのか!?」

老冒険者はシリウスに気がついて剣を抜いた。

「待ってください!僕こう見えて魔物使いなんです!シリウスは僕の契約魔物なんです」

「その歳でワーウルフをテイマーするのは、なかなかやるじゃねえか」

老冒険者は剣をしまいながら感心していた。

シリウスはカイル達のやりとりに反応を見せず、森の方を見ていた。

たしかに、シリウスはワーウルフと近い種族なのかな。もしかして、お友達に会いたいのかも。

シリウスはカイルの裾を銜えて引き寄せる。

「わかった。シリウスが行きたいなら、行ってみよう。シリウスが気になっている何かがあるのかもしれないしね」

「おい!もうすぐ日も落ちる。そんな状態で森に入ると死ぬぞ!」という叫びを背に、カイルはのんびりと森へ入っていく。
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