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第2章
ギルド:漆黒の鴉
王都グラン・ゼニスの巨大な白門まで戻ってくると、先ほどの門番さんが目を丸くして駆け寄ってきました。
「おい、坊主! 無事でよかった。心配して損したぜ」
「あ、門番さん。はい、なんとか戻ってこれました!」
僕が笑顔で答えると、門番さんは隣に立つライオットさんと、その腕に抱えられた大量の獲物を見て絶句しました。
「ライオット、お前、そのガキと一緒だったのか。……というか、なんだそのシルキー・ラビットの山は。お前一人でやったのか」
「へへ、詳しい話は後だ。行くぞ、カイル」
ライオットさんに促されて、僕は活気あふれる夜の王都を歩き始めました。大通りを進むと、宝石を散りばめたような豪華な建物が見えてきます。
「わあ、すごい。ライオットさんのギルドって、あんなに立派なんですか」
「ん? ああ、あれは違うぞ」
ライオットさんは豪華な建物の前を素通りして、どんどん細い路地へと入っていきます。やがてたどり着いたのは、外壁がボロボロに剥がれ落ちた、今にも崩れそうな古い建物でした。
「ここが俺のギルド、**漆黒の鴉(ブラック・レイヴン)**だ」
「あ、ここ、なんですね」
あまりの落差に僕が固まっていると、ライオットさんが扉を開けようとしました。
「待ってください、ライオットさん! 心の準備が!」
「あんま気にしなくていいぜ。ここにいるのは変な奴ばっかだからな」
そう言って笑いかけたライオットさんでしたが、急に足を止めると、真剣な眼差しで僕を見つめました。
「カイル、一つだけ気を付けろ。受付係のエミリアちゃんにだけは近づくなよ」
「え、どうしてですか」
「理由は考えるな。どうしてもだ」
ライオットさんの必死な様子に、僕は「分かりました」と深く頷きました。
緊張で身を強張らせながら扉をくぐると、中は意外にも閑散としていました。奥の方に一つだけ明かりの灯るカウンターがあり、そこに誰か座っています。
「よお、エミリアちゃん! 任務達成の報告に来たぜ」
ライオットさんが意気揚々とカウンターへ向かいました。そこにいたのは、透き通るような肌をした美人なお姉さんでした。ライオットさんは虹色の結晶を差し出します。
「依頼達成だよ。これで俺と御飯に行ってくれるよね」
受付嬢のエミリアさんは、結晶を見て心底いやそうな顔をしました。
「……まさか、本当に手に入れて来るなんて。あんた、そういう地味な探しものは苦手なタイプのはずでしょ」
「へへ、俺の底力を見くびってもらっちゃ困るぜ」
ライオットさんが鼻を高くしたその時です。隣にいたシリウスが、不満げに「ワン!」と吠えました。
「あ、それ、シリウスが見つけたんです」
僕が正直に言うと、ライオットさんが「ちょ、おまっ」と制止しようとしましたが、もう遅すぎました。エミリアさんの瞳が鋭く光ります。
「ねえ、どういうこと。説明してくれる、ライオット」
「いや、これはその、だな」
「それに何よ、この子たち」
エミリアさんの視線が僕に向けられました。その美しすぎるがゆえの威圧感に、僕は思わず怯んでしまいます。
「ラ、ライオットさんに、ギルドに入らないかと誘われたんですけど」
僕が震えながら答えると、エミリアさんの表情が劇的に変わりました。
「すっごくかわいいじゃない!」
エミリアさんはカウンターから身を乗り出すと、シリウスの白銀の毛並みを思いっきりモフモフし始めました。
「キミがこの子の契約者? 名前は?」
「カイルです。魔物使いです。シリウスと契約してます」
「素敵! こんな常識のある子と、可愛いワンちゃんが入ってくれるなんて嬉しいわ。大歓迎よ、カイル君」
エミリアさんの満面の笑みに、僕は呆気にとられてしまいました。
一方、すっかり袖にされたライオットさんは、受付のテーブルにがっくりと突っ伏しながら、恨めしそうに僕たちを見つめていました。
「おい、坊主! 無事でよかった。心配して損したぜ」
「あ、門番さん。はい、なんとか戻ってこれました!」
僕が笑顔で答えると、門番さんは隣に立つライオットさんと、その腕に抱えられた大量の獲物を見て絶句しました。
「ライオット、お前、そのガキと一緒だったのか。……というか、なんだそのシルキー・ラビットの山は。お前一人でやったのか」
「へへ、詳しい話は後だ。行くぞ、カイル」
ライオットさんに促されて、僕は活気あふれる夜の王都を歩き始めました。大通りを進むと、宝石を散りばめたような豪華な建物が見えてきます。
「わあ、すごい。ライオットさんのギルドって、あんなに立派なんですか」
「ん? ああ、あれは違うぞ」
ライオットさんは豪華な建物の前を素通りして、どんどん細い路地へと入っていきます。やがてたどり着いたのは、外壁がボロボロに剥がれ落ちた、今にも崩れそうな古い建物でした。
「ここが俺のギルド、**漆黒の鴉(ブラック・レイヴン)**だ」
「あ、ここ、なんですね」
あまりの落差に僕が固まっていると、ライオットさんが扉を開けようとしました。
「待ってください、ライオットさん! 心の準備が!」
「あんま気にしなくていいぜ。ここにいるのは変な奴ばっかだからな」
そう言って笑いかけたライオットさんでしたが、急に足を止めると、真剣な眼差しで僕を見つめました。
「カイル、一つだけ気を付けろ。受付係のエミリアちゃんにだけは近づくなよ」
「え、どうしてですか」
「理由は考えるな。どうしてもだ」
ライオットさんの必死な様子に、僕は「分かりました」と深く頷きました。
緊張で身を強張らせながら扉をくぐると、中は意外にも閑散としていました。奥の方に一つだけ明かりの灯るカウンターがあり、そこに誰か座っています。
「よお、エミリアちゃん! 任務達成の報告に来たぜ」
ライオットさんが意気揚々とカウンターへ向かいました。そこにいたのは、透き通るような肌をした美人なお姉さんでした。ライオットさんは虹色の結晶を差し出します。
「依頼達成だよ。これで俺と御飯に行ってくれるよね」
受付嬢のエミリアさんは、結晶を見て心底いやそうな顔をしました。
「……まさか、本当に手に入れて来るなんて。あんた、そういう地味な探しものは苦手なタイプのはずでしょ」
「へへ、俺の底力を見くびってもらっちゃ困るぜ」
ライオットさんが鼻を高くしたその時です。隣にいたシリウスが、不満げに「ワン!」と吠えました。
「あ、それ、シリウスが見つけたんです」
僕が正直に言うと、ライオットさんが「ちょ、おまっ」と制止しようとしましたが、もう遅すぎました。エミリアさんの瞳が鋭く光ります。
「ねえ、どういうこと。説明してくれる、ライオット」
「いや、これはその、だな」
「それに何よ、この子たち」
エミリアさんの視線が僕に向けられました。その美しすぎるがゆえの威圧感に、僕は思わず怯んでしまいます。
「ラ、ライオットさんに、ギルドに入らないかと誘われたんですけど」
僕が震えながら答えると、エミリアさんの表情が劇的に変わりました。
「すっごくかわいいじゃない!」
エミリアさんはカウンターから身を乗り出すと、シリウスの白銀の毛並みを思いっきりモフモフし始めました。
「キミがこの子の契約者? 名前は?」
「カイルです。魔物使いです。シリウスと契約してます」
「素敵! こんな常識のある子と、可愛いワンちゃんが入ってくれるなんて嬉しいわ。大歓迎よ、カイル君」
エミリアさんの満面の笑みに、僕は呆気にとられてしまいました。
一方、すっかり袖にされたライオットさんは、受付のテーブルにがっくりと突っ伏しながら、恨めしそうに僕たちを見つめていました。
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