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第3章
金獅子
王都の誇る最大派閥『金色の獅子』の拠点。
その一室で、ヴァレンシュタイン姉妹は険しい表情で報告書を突き合わせていた。
「森の闇ギルド拠点は、完全に沈黙。生存者はなし。あの凄まじい空間の歪みの痕跡は王都の方角へ続いていたけれど、特に市内に変わった様子はないわね」
妹のリリィが淡々と端末を操作する。姉のクラリスは愛剣を壁に立てかけ、不満げに鼻を鳴らした。
「気に入らんな。あれほどの事態を引き起こした何かが入り込んでいるというのに、尻尾一つ掴めんとは。拠点に残っていた痕跡も、まるで巨人に踏み荒らされたかのようだった」
「一つだけ、気になる報告があるわ」
リリィがモニターに画像を映し出す。
「牢屋として使われていたと思われる場所に、ワーウルフの体毛が散見されたわ。おそらくワーウルフの密猟をして闇取引に流していたと思う。」
「それがどうかしたのか?許されることじゃないが、予想していたことだろう」
「最近になって、この王都に白いワーウルフの目撃情報があるのよ。あの闇ギルドが珍しいワーウルフを手に入れて流したのだとすると関係が無いとは言えないでしょう」
「確かにな。それの持ち主が依頼主かもしれん。そのワーウルフについては調べるように言っておく。何かが見つかればいいが」
クラリスがそう締めくくろうとした時、部屋の扉が騒がしく開いた。
そこへ入ってきたのは、顔を腫らし、ボロボロになった数人の新人冒険者たちだった。先ほどまで酒場でライオットに叩き伏せられていた男たちだ。
「何だ、その無様な姿は」
クラリスの鋭い声に、男たちは震え上がりながら報告する。
「や、やられました! 『漆黒の鴉(ブラック・レイヴン)』の槍使いに、いきなり因縁をつけられて……!」
その名を聞いた瞬間、周囲のギルドメンバーたちが「またあの吹き溜まりか」「あの槍使い、相変わらず手が早いな」と口々に忌々しそうに呟いた。
「ライオットの奴か。あの拠点で戦う相手がいなくて鬱憤が溜まっていたところだ。ちょうどいい、我がギルドの者に手を出した落とし前をつけさせてやる!」
クラリスは壁の愛剣をひっつかむと、嵐のような勢いで部屋を飛び出していった。
彼女は一度頭に血が上ると、疑うことを知らない愚直なタイプだ。何より、幼馴染であるライオットが相手なら、喧嘩の口実としてこれ以上ないものだった。
「姉さん、待って! まだ詳しい状況が……!」
リリィの制止も聞かず、赤い髪をなびかせて廊下を駆けていく姉。
「ああ、もう。またあんな大ごとになるのは勘弁してほしいんだけど」
リリィは深く溜息をつき、端末をポケットに放り込むと、猛進する姉の背中を追って走り出した。
その一室で、ヴァレンシュタイン姉妹は険しい表情で報告書を突き合わせていた。
「森の闇ギルド拠点は、完全に沈黙。生存者はなし。あの凄まじい空間の歪みの痕跡は王都の方角へ続いていたけれど、特に市内に変わった様子はないわね」
妹のリリィが淡々と端末を操作する。姉のクラリスは愛剣を壁に立てかけ、不満げに鼻を鳴らした。
「気に入らんな。あれほどの事態を引き起こした何かが入り込んでいるというのに、尻尾一つ掴めんとは。拠点に残っていた痕跡も、まるで巨人に踏み荒らされたかのようだった」
「一つだけ、気になる報告があるわ」
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「牢屋として使われていたと思われる場所に、ワーウルフの体毛が散見されたわ。おそらくワーウルフの密猟をして闇取引に流していたと思う。」
「それがどうかしたのか?許されることじゃないが、予想していたことだろう」
「最近になって、この王都に白いワーウルフの目撃情報があるのよ。あの闇ギルドが珍しいワーウルフを手に入れて流したのだとすると関係が無いとは言えないでしょう」
「確かにな。それの持ち主が依頼主かもしれん。そのワーウルフについては調べるように言っておく。何かが見つかればいいが」
クラリスがそう締めくくろうとした時、部屋の扉が騒がしく開いた。
そこへ入ってきたのは、顔を腫らし、ボロボロになった数人の新人冒険者たちだった。先ほどまで酒場でライオットに叩き伏せられていた男たちだ。
「何だ、その無様な姿は」
クラリスの鋭い声に、男たちは震え上がりながら報告する。
「や、やられました! 『漆黒の鴉(ブラック・レイヴン)』の槍使いに、いきなり因縁をつけられて……!」
その名を聞いた瞬間、周囲のギルドメンバーたちが「またあの吹き溜まりか」「あの槍使い、相変わらず手が早いな」と口々に忌々しそうに呟いた。
「ライオットの奴か。あの拠点で戦う相手がいなくて鬱憤が溜まっていたところだ。ちょうどいい、我がギルドの者に手を出した落とし前をつけさせてやる!」
クラリスは壁の愛剣をひっつかむと、嵐のような勢いで部屋を飛び出していった。
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「姉さん、待って! まだ詳しい状況が……!」
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