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眠り姫の追放

宿屋にて

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レムは今後の生活の為に、最低限の荷物と幾らかの金貨を持ち城から立った。

静かですね

日付も変わる時間ということもあり、城下には人の姿など見られない。

レムはとりあえず今日を過ごす場所を求めて彷徨っていた。

できるだけ城から離れたかったが、これ以上外れに行くと身の危険もあるだろうと、大通りをひとつ外れた宿屋に入る事にした。

『カラン』

こんな時間のためかカウンターに店のものは立っていない。

『チリンチリン』

カウンター脇にあった呼び鈴を鳴らすと、奥から女性がやってきた。

「こんな時間にお客さんなんて珍しいね」

「あの、お部屋は空いておりますでしょうか」

城から出たことのないレムであったが、こんな時間に急にきて部屋を貸してもらうのは常識的に難しいと思っていた。

「ありますよ。こちらでいいですか?」

そんなレムの心配をよそに、店主はいくつか部屋の候補を示してきた。

「ではここで」

レムは1番普通の部屋を選択する。

名前、どうしましょう。

とりあえずグロリアの性は書かずに、レムとだけ記した。

「お嬢ちゃんは、眠り姫様と同じ名前なんだね」

ー眠り姫

本当にそんな風に呼ばれていたのかとレムは実感した。

「眠り姫様にも困ったもんだよ」

「どうされたのですか?」

店主の言葉に、少し恐れつつレムは問いかけた。

「今日はセレモニーだっただろ?殆どのお客さんがそれ目当てに来てたってのに中止になったせいで皆帰っちまったさ。おかげで商売上がったりなんだよ。そのおかげでお嬢ちゃんに部屋をかけるのだけどもね。」

「そうなのですね」

「病で今日は中止にすると言ってたけど、また眠りこけてたんじゃないだろうかね」

ーそんな!・・・

レムは店主の言葉に思わず反論しそうになったが、すぐに言葉を飲み込んだ。

どうかしたのかと、不思議に思った店主だったが、特に気に止めてないようで、部屋の鍵を渡された。

部屋についたレムはベッドの上に横たわった。

ー眠り姫か

店主の言っていたことを思い出す。
城下で噂が広まってるのは本当だったんだ。

私のしていることの本当の意味は誰も分かってくれないのに。

今まで護ってきた人たちに誤解だけされて、私は死んだ事にされちゃうんだ。

悲しみに押しつぶされそうになりながら布団にくるまった。

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