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後編

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「ん……ふぅ……」
何かを僕に訴えるように、口の中をかき回す。
「ふぁ……あ……」
くちゅ、くちゅ、という音に脳みそが支配されて、何も考えられなくなる。
名残惜しそうに離れていく大助が、ぽつり、ポツリ、と独白を始める。
「風呂場から民人くんの声が聞こえてきて、しかも、俺の名前言ってて、そんなのが聞こえてきて、めっちゃ我慢した。全身に力入れてないと、民人君にひどいことしそうで」
だから、あんなふうにうずくまって。
「僕に触るのも?」
「見ちゃったら、我慢できなくなると思って。民人くんいなくなってから一人でなんとかしようと思ったけど、駄目だった、民人くんがまたほかの男に抱かれるの考えたら」
また、ということは。
「お前、もしかして」
こいつは僕が自覚するよりもずーーーっと、僕のことを。
僕が、ほかの男性と付き合ってたときも?
彼は首を横に振って、破顔する。
「……もう、我慢しなくていいんだよね」
「……お前には敵わないなあ」
正直、受け止めきれるかどうか全く自信がなかったけれど、これが僕なりの責任のとり方だな、と思った。
夢の中よりも冷静さを欠いた大助が、僕の寝間着のボタンをはずし、肩から引き下ろす。
「夢みたい……」
そうのたまう大助の指先が異様に冷たくて、それがおかしくて仕方なかった。
「さっき着たばかりなのに」
僕は僕で、大助の寝間着のボタンを外す。
前開きのそれをすべて開くと、引き締まった身体と……それから、下着の上からも主張するそこが顕になった。
彼は、おそるおそる、というふうに僕を抱き寄せて、首筋に吸い付く。
「ん……」
彼は僕の腰を抱き、少しずつ寝間着を下げていく。
僕は僕で、手持ち無沙汰の両手を彼の体に回す。
久々の人肌に、胸が高鳴る。
「民人くん、下、何も履いてないの」
それは、僕の腰あたりをさすった大助が行った言葉。
「脱がせたかった?」
なんてふざけて言ってみたけど。
「寝てるときも、そうだったの? もしかして」
「……たしかに、そうだけど」
彼は顔を真っ赤にして、そして、ため息をつく。
「こんな据え膳……」と、ポツリと漏らした。
「ご、誤解、もし最初からその気だったら逆に勝負下着でも……」
って何言ってるんだ。
「もういい、それ以上、民人くん。……頭おかしくなりそう」
そう言ってから、僕の胸の突起にしゃぶりつく。
「……っ!」
生暖かい舌が、湿らせていく。
唇で食まれる感覚も久々で、思わず声を漏らす。
「はぁ……」
もう片方は指で弄ばれ、ひんやりとした刺激に背中をそらす。
つまんだり、引っ掻いたり、執拗に男の胸をもて遊ぶ。
「だいすけぇ……そんなに、たのし…?」
彼は僕の胸を舌でなぞりながら、上目遣いで、微笑みで返す。
その仕草に、ゾクリ、とした。
それで思わず、持て余した手を、彼の張り詰めたそこへと伸ばす。
熱く、質量のあり、パンパンに固くなったそこ。
ああ、たまらない。
「……民人くん、それ、ずるい」
大助は僕の腕を掴み、僕を押し倒す。
「早くちょうだいよ、大助」
「もったいないじゃん、もっと楽しませてよ」
そう言ってから、僕の唇を奪う。
「ん……う……」
そして、頬に、首元に、胸元に、いたるところに口付けを降らせる。
そして、下着の下で苦しそうに押し付けられたそこを露出して、僕のそれと一緒くたにして握りしめた。
大助の固いそれと、僕のそれが擦り合わさる。
「……ハァ、でも、俺ももう、限界だから」
絵面だけでイッてしまいそうな光景に、思わず目を覆った。
「あっ、あ、はっ……それ、あっ」
しかし、視覚がなくなったことで余計に局部に神経が集中してしまって、ゴリゴリと合わさる感覚が強く伝わる。
上下に揺さぶられ、声があふれる。
「はぁ、はっ、民人、くん……」
「や、だいすけ、耳元で、やめて、あっ……」
快楽から逃げたくて、大助の腰に手を回して引き寄せると、耳元で大助の、ため息混じりの声が聞こえて、余計に快感が増してしまった。
「民人くん、はぁ、あっ、好き、……好き、わかって、俺、こんなに、民人くんが、すき」
改めて言われると恥ずかしくて、恥ずかしくて、声にならない声で返す。
「やぁ、あっ、だいすけ、今は、だめ、あ、は、なんか、クる、……~~っ」
脳みそが蕩けて、何も考えられない。
快感を声で逃したいのに、だらしなく空いた口には、容赦なく舌がねじ込まれる。
熱い、気持ちいい、ひとつになってる。
とうとう限界が来て、ぎゅ、と大助を抱き寄せる。
「や、あ、だいすけぇ、止めて、出る……」
「はあ、俺も、もうすぐ、だから、待って……」
「やだ、無理、あ、も、イってる……イってるから……!」
僕と大助の腹が、勢いよく溢れた白濁にまみれる。
大助はそれでも手を止めてくれないから、何度も何度も、だらしない声を上げながら、吐精するしかなかった。
程なくして、大助も呻き、ドク、ドク、と温かい白濁を吐き出す。
そうしてようやく、その強すぎる快感から開放された。
「はあ、……っ、いきなり、こんな、ひどい……」
「ごめん、でも、我慢できなくて」
そういって、ぺとり、ぺとり、と、僕の腹の上で混ざりあった精を手に絡める。
「ほら、ここ、ひとつになってる、俺と民人くん」
「……なんか、気色悪いよ、それ」
なんていうと、少し残念そうに笑う。
「はは。でも、なりたいでしょ。……指、いい?」
「さっきシてたから、いらないと思うけど」
「寂しいこと言うね」
大助の、僕より少し太くてゴツゴツした指が、僕の秘部を撫でる。
そのもどかしい刺激に、期待が募り、自分の意識に反して少しずつ足が開く。
「ここ、すごい期待してるんじゃない?」
「ふっ……くすぐった……」
その指が突如、ぷつり、と侵入ってくる。
「あっ、…、ああ」
「いっつもこうして、シてるの?」
じわりじわり、と内壁をかき分けて、僕のすでにほぐれたナカを進む。
「ひとりでなんて、めったに……あああっ…そこ、だめ、へんになるっ」
弱いところを掠められ、声が溢れる。
自分の指よりも太くて、刺激があって、たまらない。
「さっきシてたより、気持ちいい?」
「あっ……ん、きもち、……い」
快感から逃れたくて、のけぞる身体を、ベッドに押し付けられる。
さっき吐精したばかりの大助のそれは、もう熱を帯びて、僕の足の付け根に押しやられている。
僕のナカをほぐす指は、気づけば2本に増えていて。
「はぁ……ああ、や、ゆび、ゴツゴツして、きもちいっ……僕の、指より、いい……」
「……っ、嬉しいこと言うじゃん」
押しやられたアツい、ヌルヌルとしたそれが、早く欲しくて、恥じらいとか、我慢とかもう考えられないから、思ったことがすぐ口に出た。
大助は気を良くして、更に僕の弱いところを刺激する。
「や、あ、そこばっか…ヤだ、ア、へんに、なる」
「……民人くん、胸、自分で弄って……ちょっとさすがにエロすぎ」
大助に指摘されて初めて、興奮のあまり、自ら胸を撫で回しているのに気づく。
「だって、アッ、気持ちい、ンッ……」
その言い訳は、唇で塞がれる。
そして、唇は首筋を通り、また、胸の突起へ。
舌の先で押しつぶされて、たまらない生暖かさに、身体が震える。
「あっ……ああ、いい、だいすけぇ……っ」
「胸、好きなんだね、俺も好き」
「好き、きもち、……あ、ああ、だいすけ、はやく、欲し……」
「……いい? 俺、ゴム、持ってくるからちょっと……」
「いい、そのまま、それより、はやく、ちょーだい」
もう、待てない。
早く本物が欲しかった。
大助の、思ったよりも固くて、質量のあるそれが。
「はぁ……最初くらい、準備万端でシたかったのに……」
「気持ちだけもらっとくから」
「こっちの気も知らないで……はあ、痛かったら、無理しないでね」
指を抜かれて物足りなさ気なそこに、大助の自身があてがわれる。
その熱さだけで、胸が高鳴る。
「……く、うっ……」
「アッ……あああっ、は、キてる、大助の……」
指とは比べ物にならない圧迫感……久々のそれに、脳が蕩けそうになる。
全部入ったら、きっと、奥まで。
「は、あっ……民人くんのナカ、マジで、入ってる……」
僕の腰を両手で抱き、少しずつ奥へ進み続ける。
「あ、大助の、アツい……、すごい、奥まで……」
「いい? もっと、あと少し」
「ぜんぶ、入れて……」
大助のが、少し膨れるのを感じた。
「マジで、民人くんにこんなこと、言われるなんて、夢みたい」
赤面し、照れ隠しか……僕の額に唇を落とす。
大助のそれがずっぽりと入りきったときに、「満たされた」と感じた。
裸で抱き合いながら、ただ、つながりを意識する。
「はぁ、……ずっと、このまま、いたい」
「……せっかくの旅行なのに?」
「そうだけど……せっかくこんな、いいベッドなんだから……」
「はは、民人くんってほんとに、こんなエロいなんて……」
「そ、そりゃ人並みには……」
目をそらしたときに、時計が目に入る。
午前8時30分。
「あ……朝食」
朝食のビュッフェは、たしか9時半まで。
こんなに盛って、完全に忘れるところだった。
「……あ~」
大助も額に手をやり、ため息をつく。
「だ、大助、一回……」
「わかった。一回だけ。朝ごはん食べてからまた続きしよ」
ええ。
絶倫?
これが大学生か。
「そんな、ご飯食べたら出かけようよ……」
「うーん、多分無理。一回じゃ足りないと思う」
……僕は、とんでもないのに好かれてしまったのだと思った。
でも、期待しているところもあった。
「……まあ、あとのことは、後で考えるから、今、欲しいでしょ?」
そう言って、彼で満たされた僕の腹をなぞる。
「うん……ホントはもっとこのままいたかったけど……でも、早く、ナカに欲し……」
最後まで言わせてくれないまま、大助が奥を突き上げる。
「だから……いちいち、言うことが、エロい」
「あ、はっ、……や、だって、ナカ、好き……っ」
少しずつスピードが上がり、ぐちゅ、ぐちゅと、擦れる音が部屋に響く。
腰を両手で支えられ、否が応でも奥の奥まで味わうことになり、ずっと欲しかった……一人では届かなかったところまで、快楽を植え付けられる。

「は、はぁっ……あ、いい、そこ、奥、いい」
「あ、はあ、みんと、くん……、ナカ、あったかい」
ああ、大助と、セックスしちゃってるんだ。
そう思ったら、大助だと意識したら、脳みそがグチャグチャになった。
昨日までただの親友だと思ってたけど、大助は僕のことがこんなに好きで、僕も彼とのセックスで、こんなになるなんて。
「はあ、だいすけ、え、奥、もっと、ほし、……」
「は、あ、みんと、くん、だから、エロい」
「だって、だいすけの、こんな、気持ちいの……しら、ない」
セックスは初めてじゃない。
でも、久々だからって、こんなにアガるなんて思っていなかった。
これは、多分、大助だから。
「ハア、嬉し…、もう、俺、以外、いらなく、なって」
「ああ、……いちばん、いい、止まんな、……はぁっ」
僕の奥に打ち付ける速さは上がり、大助の表情からも、余裕が消える。
僕の快楽も、そろそろ果てそうで、目の焦点が合わなくなる。
「みんと、くん、俺、そろそろ、……だから、一回、外」
「ヤだ、大助、……あ、止めないで、ナカ、欲しいから、奥に、出して……」
「……そんな、いきなり、いいの?」
「はぁっ……ん、奥、欲し、あ、はぁっ……らめ、なんか、クる、あっ……」
大助と、こんな見晴らしのいいホテルで、朝から裸で抱き合うなんて。
「は、みんと、くん、あ、はあっ、……ごめん、ナカ、受け、止めて……」
「や、あ、はあっ、あ、あっ……ん、はぁっ……あ、も、イ、僕も、あ、はっ……あああっ!」
大助のアツいそれが、僕のナカの弱いところをグリ、とえぐったとき、張り詰めていた快感が爆ぜた。
その絶頂でヒクつくナカでうごめいていた大助のそれからも、ドクリ、と熱いものが吹き出すのを感じた。
ゆっくりと、ピストンを止めて、僕ののぞみ通りに奥へと注ぎ込む。
「はぁん……大助の、ナカでドクドクしてる……」
「民人くん、はあ、まだ、締め付けて……」
ヒクつく僕のはしたないそこは、大助のを搾り取るように締め付けているらしかった。
「……だめだ、これ以上入れてると……続き、シたくなっちゃうから」
名残惜しそうに抜かれた先からは、とろり、と情事の名残が溢れ出た。
「はあ……僕ももっと、シたいかも……」
「ふう……でも、先に、朝食。ほら、身体、洗おうよ」
別々でね、と笑いながら言い、僕を抱きかかえて浴室へ連れる。
「立てる?」
「ありがとう。大丈夫、あとはやるから……お先に」
時間がないからこそ、別々に、というのは、まさにその通りで。
まだまだ足りない僕たちが一緒に風呂できれいにしても……という気がしたから、おとなしく別々で身体をきれいにした。



そして、なんとかギリギリ朝食にも間に合い、なんだか新しい朝を堪能したのだった。
それで、朝食後はというと……
外は奇跡的な土砂降り、外出は、難しいねと言うことになって……。
大助が扉に「清掃不要」の札を貼ってから先の話は、お察しください。


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