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第2章 現実と仮想現実

第123話 お断りします

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 まずは相手の場所だけでも特定しないと……。
 その上で、逃げる方向を決めて、戦わずに逃げる……。
 これが、最良だけど……ッ!

 思考を中断して、咄嗟に真横に飛ぶ。
 その直後、何かが僕のいた場所を通過していった。

「あ、あぶな……」

 避けた直後、一瞬だけチラッと見えたのは、長い棒状の形……。
 多分あれは……、矢だ。

「なら……」

 僕を狙っているのは……、人だろう。
 住民かプレイヤーかは分からないけれど。

(シルフ。僕の周りにいつでも風を起こせるようにしておいて)
(分かりました)

 予見スキルのおかげで、ギリギリで回避が出来ているけど……、今まで運良く発動しているだけ……!
 次の攻撃が防げない可能性はあるからこそ、シルフには防御に徹してもらいたい。
 時間を稼いで逃げることさえ出来れば、僕の勝ちだから!

「はー、なんであたんねぇかなー? 下手くそかよ、お前」
「いやいや、こっちは死角を狙って撃ってますよ」
「良ければ、トドメは拙者に……クフフ」
「殺すなよ? 殺したら失敗だからな?」

 万事休す、とはこのことかもしれない……!
 僕が、活路を見出した矢先、木々の間から4人の男性が歩いてきた。
 しかも、話してる内容的に……これが僕らを狙った犯人だろう……!

「んで、あんたがアキで合ってるよなー?」
「そう、ですが……?」

 僕よりも背の高い男性が、少し曲がった剣を肩に担ぎながら、僕の方へゆっくり歩いてくる。
 なんだろう、すごく……目が怖い。
 それに、彼の後ろでニヤついた顔を見せる他の3人も、すごく気持ち悪い……!

「あんたを連れてこいって人がいるんだよ。 殺さない程度に痛めつけても構わないって言われてるんだが……なぁ?」
「だれですか……?」
「そいつは言えねぇなぁ」
「それだったら、行きません。お断りします」
「そうかい。んじゃ、無理矢理連れて行くとします……かッ!」

 言い切ると同時に、少しずつに狭まっていた距離を一気に縮め、肩に担いでいた剣を振り下ろす。
 僕はその攻撃を横に飛ぶように躱し、立ち上が――

「くっ!」

 起き上がらず転がった僕の頭上ギリギリを刀が通過し、後ろにあった樹を傷つける。
 続けざまに飛んできた矢を、シルフに逸らしてもらい、上から迫ってきた拳を木槌で弾く。
 そうだ、相手は1人じゃ無い……!

「っかー、やるねぇー!」

 拳で殴りかかってきた男性が、笑いながら僕へと連続で拳を振るう。
 それを、後ろに下がりながらなんとか避けた直後、背中に寒気を感じ、またも飛ぶように横に。
 すかさず飛んできた矢をシルフに逸らしてもらって避け、そのまま横の樹に刺さった先ほどの矢を抜いて投げる。

「ほぅ、中々良い動きでござるなぁ……」

 真後ろから狙ってきていた男性は、刀でそれを弾き、楽しそうに口を歪めた。
 殴ってきた人と、この人は、まるで僕で遊んでるみたいだ……。

「何で当たらないんですかね? ギリギリで逸らされてるみたいに見えるんですけど」
「お前の狙いが悪いんじゃないのか?」
「いやいや、俺はちゃんと狙ってますって」
「まぁ、確かに……矢が多少不自然な動きをしてるように見えるな」
「あ、やっぱりそうですよね? 俺が何度も外すなんてあり得ないって」

 残りの2人は、状況を冷静に見てるみたいだ……。
 正直全員勢いで来てくれたほうが、予想しやすいんだけど……。
 そんな風に4人を観察しながら、僕はじりじりと後ろに下がっていく。
 きっと、2人はそろそろ森の外に着いたはずだ。
 後は僕が逃げることが出来れば……!

「あぁ、そうそう。逃がす気はないんで」
「……ッ!」
「正直本気でやれば、あんたを倒すのに時間なんかかからないし。ただ、殺しちゃダメらしくてなぁ」
「……そう言うけど、出来ないんでしょ」
「はは。……調子に乗んな。殺すぞ、クソガキ」

 剣を肩にかけたまま、貼り付けたような笑顔で、そう呟いた。
 悔しいけれど、この人の言ってることは事実だろう……。
 強がらないと、今にも体が震えだしそうなんだから。

「といっても、これ以上は遊んでるわけにもいかねぇから。お前ら、さっさと捕まえろ」
「はいはい。それじゃ一発っと」

 軽い声と共に射ち出された矢を、風で逸らしつつ身を屈めながら前へ跳ぶ。
 着地点に合わせるように振り下ろされた刃を、地面に手を付けてむりやり捻りながら避けた。

 しかし、それすら読んでいたのだろうか。
 直後、腹部に衝撃が走り、吹っ飛ばされるように地面を転がる。

「――!」

 息が詰まって声が……!

「は、ここまでだな。ごくろうさん」

 なんとか呼吸を整えて顔を上げれば、僕の周りを囲むように立つ4人の男性と……あれ、は……?
 彼らの後ろになにかが見えた気がして……目を凝らそうとした直後、振り落とされた手刀に意識が刈り取られていく。
 けれど、さっき見えたのはなんだか見覚えのある姿だった、よう……な……。
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