採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

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第2章 現実と仮想現実

第167話 身体は大事に

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 だらり、と力なく下げた腕は、二振りの斧を持ったまま……。
 しかし爛々と光る灼眼は、僕ら……いや、隣に座るジンさんへと注がれたまま、外れない。

「美少女からのお誘いは嬉しいけどなぁ……。スマン、戦う理由もないからな」
「ほう……。それなら、作ってやるとするか……のォ!」

 下げられていた腕を使い、回転するかのように、腕を振り回す。
 まるで独楽コマみたい……なんて思った瞬間、なにやら黒いモノが僕の方をめがけて飛んで来た。

「ってえぇぇ!?」
「アキちゃん! 伏せろ!」
「は、はいぃぃ!!」

 伏せると言うよりも、地面を蹴って、一歩前の空間へと頭から飛び込む。
 直後、頭の上を黒い暴力が過ぎ去り……後ろの樹へと、轟音を響かせ激突した。

「ふむ、避けたか。良い判断じゃ」
「りゅ、リュンさん!?」
「ほれ、次行くぞ」
「え、えぇぇ!?」

 まるで舞うように、軽やかにステップを踏んで……リュンさんは、凶器を投げつけてくる。
 それも、なぜか僕をめがけて。

「ひぃっ!」

 飛び退くように左へと転がれば、さっきまで僕がいたところを、回転する黒い塊が通り抜けていく。
 後ろから聞こえる音は、相変わらずの轟音。
 こんなの、一発でも貰ったら即死じゃないの!?

「カカッ! ほれ、はよう止めんと……死ぬぞ」
「……クソがっ!」

 鉄と鉄がぶつかり合う音がして、僕の前に影が落ちる。
 ……ジンさん、ごめんなさい。

「ようやくやる気か。決断が遅い男は、好まれんぞ」
「へーへー。ご忠告、ありがとよ。強引な女も好きだが、もう少し肉感が欲しかったな」
「……ほぅ」

 地の底から響いてきたような、そんな声が聞こえた。
 じ、ジンさん……女の子に、その話題はダメ、ダメだよ!
 気付かれないように、ラミナさんの方へ視線を動かせば……。

「……アキ?」
「な、なななんでもないよ!」
「あはっははははは! アキちゃん、ラミナにその話題はダメだってー!」

 僕らのやり取りを見てたのか、ハスタさんが大笑いしながら、僕へ注意を放つ。
 で、ですよねー……いや知ってたけど。
 知ってても、気になってしまったものは、仕方ないよ!

「姉さん」
「ん? なーにー?」
「黙って」
「……はい」

 ラミナさんは感情の感じられない声で、ハスタさんへと釘を刺す。
 あれ、おかしいな……?
 前も後ろも逃げ場が無いぞ……?

「相変わらず、元気ねぇ……」
「僕は元気どころか、逃げ場が無くて胃に穴が開きそうですけど」
「あらあら。身体は大事にしないとだめよぉ?」
「……そうですね」

 元凶としては、フェンさんの友達の……いや、ビジネスパートナーだったかな?
 そのリュンさんが、ジンさんに戦いを求めたのが原因だったと思うんだけど……。

「がっ!」
「ほれ、はよう立たんか」
「くっそ、やりづれぇ……!」

 ふと、ジンさん達の方へ視線を戻せば、ジンさんが一方的に攻められていた。
 というか、リュンさんの武器がさっきのと違う……。
 両手に斧なのは変わらないけど、片刃の軽そうな斧になってる。

「あらあら、リュンったら……大人げないわねぇ」
「なにがです?」
「あの武器、リュンの最も得意とする武器よぉ。アキちゃんは、クレセントアックスって知ってるかしら?」
「あ、はい。聞いた事あります」

 確か、柄の先に三日月っぽい形の刃が付いてる斧だっけ?

「リュンのアレはね、そのクレセントアックスの刃形状をモチーフに、片手斧にして取り回しを手軽にしたものなの。もちろん攻撃力としては落ちてるけれど」
「でも、あんな風に、両手で持って、身体を大きく回して戦えば、攻撃力はそんなに変わらなさそう?」
「そういうこと」

 しかも、右へ左へ回転しながら、跳ねたり伏せたりと縦横無尽に動いてる……。
 あの、斧の投合から考えても……腕力は鍛えてあるんだろな……。
 ジンさんが防御に徹さざるを得ないのも、なんとなくわかる。

「さてと、そろそろね」
「ん?」

 隣に立っていたフェンさんが、虚空へと視線を飛ばし、小さく呟く。
 多分、フィンさんにしか見えないウインドウで、何かを確認したんだろう。
 ……時計かな?

「ほれ、ほれ、ほれ、ほれ!」
「くっ! この!」
「当たらんなぁ!」
「フラフラしやがって!」

 両手に重そうな斧を持ちながらも、リュンさんは軽やかな足取りで、ジンさんの攻撃を避ける。
 時には足を引き、時には腕を回し、そして時には、斧で流し……。

「す、すごい……」

 まるで、踊っているかのように、赤の着物をはためかせ、下駄を踏みならし音頭を取る。
 武器同士がぶつかる重い金属音の中に、軽い下駄の音が混ざって、ちょうど良いアクセントみたいにも感じられる。
 なんだか……少し、不思議な感じ。

「リュン、そろそろ時間よぉ」
「む……ならば仕方あるまい。……ほど良い運動になったぞ、斧使い」
「なっ!?」

 小さな笑みと共に、弾かれてがら空きとなったジンさんのお腹へと、下駄の底が押し込まれる。
 その細い足からは想像の出来ないほどの音が響き渡り……ジンさんの身体は、僕のそばまで吹き飛ばされた。

「あらあら、リュンったら……」
「フェン、行くぞ」
「はいはい。それじゃアキちゃん、またねぇ」

 吹き飛ばしたジンさんのことなんて、眼中に無いと言わんばかりに、僕らに背を向け、森の中へと消えていく。
 僕はなんだかその姿が、ひどく恐ろしいモノに見えた気がした。
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